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みなさまのたなごころ撰集

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これは私だけの、と云いながら、その宝箱とやらをどうしても人の目前でぱっと開けて見せたくなるというのは、どうやら生来人間に根を張っている欲求らしい。たなごころ撰集だなんて、それっぽ…
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#オリジナル小説

【掌編小説】ヒーロー

【掌編小説】ヒーロー

公園のしげみの裏に座りこんで、だんごむしをころして遊んでいた。
それを父親に見つかったとき、彼は、
「かみさまのところへ返してあげたんだ。えらいね。」
とぼくの頭をなでて微笑んでくれた。
「ぼく、えらいの?」
「そうだ、きみはヒーローだ。」
彼は、ぼくが小学生になるころには、もう家からいなくなっていた。

      ***

ある日、おなじ行為を目にした母親は、こわい顔をしてぼくに怒った。
「そ

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短篇小説【窓のない夜】

短篇小説【窓のない夜】

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ちびた鉛筆を最後まで使う為のキャップを、私はその時初めて見た。
シルバーの金具に小指の先位になった鉛筆が差し込まれている。
斜めに傾げたちゃぶ台の上、インスタントコーヒーの空き瓶の中に
それが無造作に3本突っ込まれていた。
初めて寺岡泡人(ほうじん)のアパートに行った時、
暖房器具の一切無い冷え切った部屋で私は、
その寂しげに光るシルバーのキャップをずっと見詰めていた。

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