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「有能で気が利く若手」を育てると、却って上司が育たなくなるという説

以前大学院でお世話になった中国人の先生に聞いた話ですが、日中戦争のとき末端の兵士レベルでは圧倒的に日本軍のほうが強かったが、下士官、将校、と上に行けば行くほど逆になるということでした。

もちろんこれは例え話であり、当時の日本軍にも有能な下士官、将校はたくさんいらっしゃったと思いますが、言いたかったことは日本の組織は最前線にいる現場の人たちがとにかく優秀ということです。

翻って中国の組織は末端の人はやる気がなく、隙あらばサボる、逃げるといったことも嘆いていました。

この話は大戦中に限ったことではなく、実は今日の日本にも通じているのではないかと思っています。というのも日本の大企業の若手社員を見ていると多くの人は以下の能力は身についています。

  • 上司が「あれ、なる早でよろしく」と言えば自分から上司の期待を探り、期日までに求められた成果物を出す

  • 指示されなくても自分からできることを探し、率先して自分から行動する

  • 引き受けた仕事は残業してでも締め切りまでに仕上げる

  • 常に時間厳守で約束は必ず守る

  • 上司や先輩が仕事をしやすいよう、自発的にオフィスの整理整頓を行う

  • 顧客から理不尽なことを言われても会社のためにじっと耐える…など

私どものような会社も企業さまから上記のような人材を育てるよう依頼されて研修を実施しますが、有名企業に入るような新人は言われなくても上記のような行動が出来たりします。

好意的な表現で形容すると「優秀で気が利く人材」、ちょっと悪意を持った表現になると「忖度ができる人材」ではないかと思います。

このような若手社員は現場では大きな戦力になりますが、黙っていても動いてくれる部下に囲まれるとマネジメントする側の上司にとっては楽です。

そうなると、上司のマネジメントが適当でいい加減なものでも業務が回ってしまうという現象が起きます。

もし部下が次のような人ばかりだとどうでしょうか?

  • 見張っていないとすぐ手を抜く

  • やることがなければサボる

  • 言われたことしかしない、言われたことすらしない

  • 約束の時間を守らない、平気で遅刻する

  • 「手伝って」と頼んでも「私の仕事じゃない」と拒否する

日本ではこのような人は少ないかと思いますが、海外では現場で働く人は案外このレベルが普通です。

そうなると、マネジメントする側の上司は指示の内容を正しく伝え、ちゃんと守るよう動機づけを行い、実行できているかどうか見張っていないと業務は絶対に回りません。「あれ、なる早でよろしく」なんてやっていると確実に崩壊します。

ただそのような手がかかる部下に囲まれていると嫌でもマネジメント力は身につきます。身につかなかったら上司失格でお払い箱になるだけです。

その結果、実は現場の人が気が利かないほうが上司のマネジメント力は鍛えられ、現場の人が有能で気が利くほど上司のマネジメント力は育たなくなるという皮肉な結果になってしまいます。

組織全体で見たとき業務が安定的に回るのは案外強い現場、弱い上司かもしれませんが、やはり有事のときは現場が弱くても強いリーダーが居た方が組織としては生き残りやすくなります。

余談ですが、冒頭の話に戻ると中国の組織は数千年前から企業も軍隊も国家も典型的な「リーダー依存組織」だと思います。

歴史を紐解くとリーダーが有能なうちは国全体が栄えますが、無能なリーダーになってしまうと目も当てられないレベルの大惨事が起きます。そのため個人的にはリーダーに依存しない日本型の組織も有りだと思います。

これも簡単にどっちが良い悪いと決められる話ではないかもしれません。

今回もお読みいただきありがとうございました。

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