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本当に素晴らしい接客スキルは「マニュアル」だけでは教えられません

先日たまたま近所の新しくオープンした焼肉屋さんで食事をしたのですが、そこでこんなことがありました。

お肉なので奮発して赤ワインをボトルで注文したのですが、最後の1杯を注ぎ終えたところで不覚にもグラスを倒してしまい、赤ワインを半分ほどテーブルにこぼしてしまいました。

「あ~、もったいない~」と思っていたところで女性のスタッフさんがすかさずペーパータオルを持ってきてくれたので拭いていたところ、今後は店長らしき男性のスタッフさんが「せっかくなので良かったらこちらの赤ワインを」と何と赤ワインをグラスで持ってきてくれました。

というのも、我々のテーブルの上には最後の楽しみに取ってお肉がまだ残っており、肉と合わせて飲むつもりの赤ワインをこぼしてしまったので、店長さん?は不憫に思ったのかわざわざサービスで持ってきてくれたのです。

もちろん注文したボトルの赤ワインとは別の銘柄のグラスワインでしたが、店長さんは「同じものではないのですが、こちらもお肉によく合うワインですよ」と勧めてくれたのでお肉と一緒に美味しくいただけました。

ここで重要なことはこの店長さんの行動は「マニュアルで教育できるレベル」を遥かに超えているということです。

というのも、マニュアルで「飲み物をこぼしたお客様にはサービスで新しいのを出せ」と教えることは可能です。

ただそれではスタッフは「マニュアルにそう書いてあるので仕方なく出す」という姿勢でお客様と接することになり、機械的に行動するようになります。(スタッフの心の中は「チッ、こぼしやがって・・・」と思っているかもしれません)

こぼした客の心理とすれば「テーブルを汚して申し訳ない」と思っているところに機械的に新しいものを出されるとむしろ恐縮してしまうことがありますが、このお店のスタッフは嫌味なくごく自然に出してきたのでおそらくマニュアルで教えられたものではなく、自分で考えた末での行動だと思われます。

サービス業を営む側としては「どうすれば自分のところのスタッフにこのレベルの接客スキルを身につけられるか」は興味あるところですが、一つ言えるのは「マニュアルから先の教育」を考えているかどうかがポイントだと思います。

この焼肉屋さんがどのような教育を行っているかは分かりませんが、もし「マニュアルから先の教育」を行うならおそらく次のようなものではないかと考えています。

まず大前提として、スタッフが仕事を「好きでやっている」状態をつくることから始める必要があります。「仕方なくやっている」状態ではマニュアル以上の行動は生まれません。

その上で、自分で考えて行動できるようになるためにはある程度の裁量を与えることが重要です。
具体的には「自分がお客様のために良かれと思ったことはやってよい。経費も〇〇円までなら使ってよい」というようにします。

更に「やってみて失敗してもそこを咎めない」ことも大切です。
例えばサービスで出したつもりが却ってお客様を不快にしたということもあります。ただその時は「自分が悪い」ではなく、「なぜお客様が不快になったのか」を振り返ることで、その時は失敗でも教訓が次に活かされます。

こうして経験を積み重ねることでお客様が喜ぶ「勘所」を掴むことができるようになり、素晴らしい接客スキルを自然に実践できるようになります。

基本行動を身につけるうえで「正解」が決まっている「マニュアル」はもちろん大事ですが、そこで教育が止まってしまうとそれ以上の行動は生まれません。

お客様が感動する素晴らしい行動には「正解」はないため、「マニュアルから先の教育」とは本人に考えさせ、行動させ、経験を積ませ、経験から学ばせることに他なりません。

教育する側にとってはそのような「経験から学べる環境」を整えてあげることが重要だと思います。

最後に、この焼肉屋さんはお肉ももちろん美味しかったのですが、それ以上にスタッフの接客スキルが大変素晴らしく「ぜひまた行きたい」と思えるお店でした。

「マニュアルから先の教育」はすぐには目に見せる成果にはならないかもしれませんが、最終的には間違いなく利益として企業に返ってきます。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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