【教育論】9割の生徒が間違えた「筆者の主張」

――この説明文の筆者の主張って何?と発問したところ、多くの生徒が間違えて答えたのです。もちろん、ちゃんと捉えている人もいました。ただ、本当に数える程度の人数で、1人か2人か……って感じです。


人生は物語。
どうも横山黎です。


今回は「『主張』と『事実』の違い」というテーマで話していこうと思います。


◆9割の人が間違えた「筆者の主張」


普段は創作に関する記事を投稿しているのですが、実は僕は教育学部の大学生で、今は教育実習ということもあり、教育に関する記事を投稿しています。


今回は「主張」と「事実」って何が違うの?という話です。


これを捉えきることって意外と難しくて、今回僕の扱った説明文の「筆者の主張」は何か、生徒に問うてみたところほとんどの生徒が間違えました。


実習中の僕の経験をふまえて、「主張」と「事実」は何が違うのか、その違いを理解するためにはどのような活動をすればいいのか、話していこうと思います。




今回僕が授業する教材は『森には魔法つかいがいる』という説明文です。「森には海を豊かにするフルボ酸鉄がいて、海を守りたいなら森を大切にすべきだよね」って内容です。


詳細は省きますが、この説明文の筆者の主張って何?と発問したところ、多くの生徒が間違えて答えたのです。もちろん、ちゃんと捉えている人もいました。ただ、本当に数える程度の人数で、1人か2人か……って感じです。

①「森には魔法使い(フルボ酸鉄)がいる」
②「森と川と海は一つなのだ」


この2つの意見で対立していました。


圧倒的優勢なのは①の「森には魔法つかい(フルボ酸鉄)がいる」でした。筆者の主張は①だと主張する彼らの理由としては、「タイトルが『森には魔法つかいがいる』だから」とか「フルボ酸鉄の話だから」とか、そういった声が多くありました。


確かに、タイトルは『森には魔法つかいがいる』ですし、「フルボ酸鉄」は文章のキーワードといっていいでしょう。


しかし、筆者の「主張」といえるのでしょうか?


①は、「主張」ではなく、「事実」ではないでしょうか。



◆「主張」と「事実」


そもそも「主張」と「事実」にはどんな違いがあるでしょうか。一言でいえば、「変わるもの」か「変わらないもの」という違いがあります。


基本的に「事実」は誰がどう見ても事実です。現実世界で実際に起きている、起きた事象のことですから、基本的に誰もがそれは事実だと頷くことができます。地球は太陽の周りを廻るし、食べなきゃ生きていけないし、最近の僕は寝不足です。


「事実」とは、一定以上の客観性が必要であるというわけです。



一方、「主張」は違います。人によって変わり得るものです。人と違うことを思ったからこそ「主張」するわけですから、当然といえば当然ですよね。


ある一つの「事実」があるとします。「あなたはこの事実に対してそう思うのね。私はこう思うの」という場面は日常茶飯事世界のどこかで起きていますよね。


「主張」とは、主観的な考えのことであり、「主張」するとは、主観的な考えを事実として発信していく行為と捉えることができます。



話を戻しましょう。


①「森には魔法使い(フルボ酸鉄)がいる」
②「森と川と海は一つなのだ」


この2つ、どちらが「事実」で、どちらが「主張」でしょうか。ポイントは、変わるかいなか。客観的か主観的か。


もうお分かりですよね。


①は「事実」です。誰が調べても、森にはフルボ酸鉄を発見することができます。実際に発見されたことで、ひとつの「事実」となったわけです。よって、①は筆者の「主張」ではないわけです。


①という事実を受け、②という主張を展開しているのです。


◆ロジックを捉える活動


「森には海を豊かにするフルボ酸鉄がいて、それぞれを切り離して考えるべきではないから、森と川と海は一つである」


これが筆者の考えというわけです。「事実→理由→主張」という構造になっていると思います。実は、この三つの関係性を理解することが重要で、特に僕が担当しているような中学1年生を対象とした論理を捉える授業では工夫が必要です。


そこでめちゃくちゃ便利なのが、三角ロジックシートです。昨日の記事で詳しく書いているので、是非、ご覧になってみてください。



三角ロジックシートを用いることで、「事実」と「主張」の違いや、それらを支える「理由」の存在に気付くことができます。ちなみに、『森には魔法つかいがいる』の筆者の主張は以下のような関係のもと成り立っていると考えられます。

スクリーンショット (443)


今後生きていく上で、自分の考えを論理的に形成する力は必要になってくるので、教育の原盤でも特に力を入れるべき題材かなと思いました。


最後まで読んで下さりありがとうございました。

20220913 横山黎



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