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食事場面で座位姿勢を評価・治療するヒント PT・OTのための動作分析

こんにちは。ReHub林です。

先日、「座位姿勢についてもっと知りたい」というご要望を頂き、“機能と動作の繋がりを「座位姿勢」から評価するヒント”の記事をアップしました。

座位姿勢からある程度、動作障害の根本的な問題点を評価した上で、他の活動の中で治療につなげるにはどうすればいいか?
そのためには、活動の要素・特性をよく理解し、本来起こるべき身体反応に誘導していく知識と技術が必要です。

今回は、食事動作と座位のコントロールの繋がりを解説していきます。
食器の配置や、食器やカトラリーの形状などの環境設定によって変化する姿勢反応を知ることで、食事場面でどのように治療的に関わるかのヒントになります。
2回に分けますので、ぜひ最後までご覧ください。

食器の位置によるリーチの変化

下は、食器の配置と身体反応の関係性を捉えた写真です。
奥の食器(とん汁)にリーチする際、手前の食器同士の隙間の広さによってリーチのパターンが変化していることがよく分かりますね。

食事と座位のコントロール1linein

腕をすんなりと通すことができる場合は、その隙間を通るようにリーチしています。右手でリーチする際は、上肢を正中に近づけるために左側荷重で立ち直る反応が生じています。
逆に左手でリーチする際は、右側荷重になっていますね。
もし、大腿骨頸部骨折や麻痺などによって患側に座位が崩れている場合、これらの反応を利用して荷重をメインでコントロールして欲しい位置に誘導することができます。

さらに、とん汁までの距離を調整することで、前傾角度を調整することも可能です。
前傾を強めると、足部への荷重量が増えるため、下肢が支持する反応が生じやすくなりますが、坐骨から足部への荷重変化に応じた下肢の支持反応が生じにくい場合、あらかじめ下肢のアライメントを整えておく必要があります。

また、胸郭や骨盤などリーチに伴う構えや対象に向かっていく反応が上手く生じない場合、タイミングを合わせて徒手的に誘導していきます。

好きなように活動させてしまうと、悪循環に陥った異常パターンから抜け出せないため、適切な姿勢コントロールの援助が必要なのです。

カトラリーと上肢のコントロール

カトラリーとは、ナイフやフォーク、箸などの食器類を指します。
例えばスプーンは食物をすくって乗せることに特化した形状ですが、箸は掴んで保持することに特化しています。
もちろん箸も2本のスペースを固定することですくうことも可能ですが、箸は掴みながら乗せるという意味で性質が異なります。

箸はその性質上、食物の質感を捉える点において優れています。2本の箸先端から伝わる弾性、粘性などの質感を受けて、食物が滑り落ちないように保持しようとします。

この視点で考えると、様々な食物の質感に対して多様な戦略を求められる箸は、姿勢反応を誘導する上で都合が良いです。

これは患者の機能にもよりますが、食物にある程度の粘性があり、まとまりがある場合は、スプーンでの介入が良いでしょうが、食物に硬さ・弾性があり、個別の物体が多い場合は、箸での介入の方が、それぞれのカトラリーなりの反応を引き出しやすいでしょう。

もう一つ、カトラリーの扱いと食事動作について重要な要素をお伝えします。

カトラリー

上の写真の違いは何でしょう?

お皿を持っているかどうかですね。
お皿を持つということは、お皿に乗っている食物の形や位置をコントロールするということです。これは、両手動作として非常に重要な反応です。
ヒトは、上肢末梢の課題を正中に近い位置でコントロールしようとする特徴があります。これは、安定が得られやすいことと、視覚的に関わる情報を捉えられるということが関係していると考えられます。
お皿を持って中の食物をすくう場合、スプーンであれ、箸であれ、カトラリー側はお皿を持たない時よりも動きが非常に乏しくなります。

ヒトは、このように操作と安定のバランスを両手動作によって補完しあって完成させているのです。

👉もし、麻痺や上腕骨骨折等の既往がある患者に対して、上肢の反応をより引き出したい場合、机の環境設定などである程度の安定性を補償できるならば、お皿を手に取った状態で反応を引き出すように介入するのも良いでしょう。

カトラリー2line-in

上の4コマの写真は、同じ場所に同じ角度で同じ長さのラインを引いています。

こうして見ると、操作する場所が多少左右に動きますが、非常に僅かな動きです。
両上肢が食物をすくうために、協調した結果ですね。

このように正中で食器や食物をコントロールしやすくするために、座位のコントロールを援助してあげることが重要です。


食器の形状と前後のコントロール

お次は、食器の形状についてです。
深皿と平皿の違いってなんでしょう?

①視覚的に捉えやすいかどうか
②食器の壁を使用して食物を操作しやすいかどうか

大きく分けるとこの2つです。
深皿で視覚的に捉えにくいということは、食べる時に視覚的に捉えようとしてその食器に向かって前傾姿勢を促しやすいということです。

また、食事場面では単純に前傾するだけでなく胸椎を伸展させ、より高い位置から見ようとすることが自然な反応です。
これは、立ち上がりにおける「構え」の反応とも類似しており、座面と足部でのコントロールが不可欠です。
少し奥に配置した深皿にアプローチするように声をかける時は、それらのアライメントを整えた上で、提示すると反応が得られやすくなります。

食器の壁を利用して食物を操作する反応については、先に解説した協調的な両手動作に関わる反応です。
👉治療的に関わる場合は、1種類の食器を使用するよりも複数の形状の食器に対して代わる代わるアプローチするようにキューを提示すると良いでしょう。

まとめ

今回は、食事動作と座位のコントロールについてのお話でした。

ザックリ要約すると、
👉前後左右の座位の大きなコントロールについては、食器の配置と形状によって誘導することが可能。
👉両上肢の協調性については、座位をコントロールした上でカトラリーや食器の形状によって誘導することが可能。

ということですね。

患者の食事動作において、どんな反応を引き出したいのか?
また、患者の座位を変えるために食事動作のどんな反応を活用したいのか?

これらの点を明確にして関われば、食事動作に対して治療的に関わることが可能です。

実際の食事場面を動画で解説してありますので、動画もご覧下さい。
👉「コンビニご飯の食事動作をPT・OT・STみんなで見よう

昨今、理学療法士も作業療法士も実際の食事場面に関わる機会が多くなっていることと思います。
せっかく実際の場面に関わるのなら、明確な意図をもって患者の身体反応を引き出せるように関わってみましょう。

この記事が、患者の食事や座位の活動が改善するきっかけになれば幸いです。

次回は、食事動作と座位のコントロール第2弾!
もう少しだけ違う視点を加えて食事動作と向き合ってみましょう。

面白い、タメになったと感じていただけたら、ぜひナイス・フォローをよろしくお願いいたします。

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