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その背臥位は動けるか否か?PT・OTのための動作分析

こんにちは。ReHub林です。

背臥位であれ、座位であれ、姿勢を見ることは重要です。
姿勢パターンから障害像や動作パターンを予測することが可能なことは言わずもがなですね。

また、いかなる静止姿勢においても微小な重心移動が持続的に行われているということもご存じかと思います。

かのクラインフォーゲルバッハは、静止姿勢を「元の運動」と捉えており、”静止”状態と解釈しておりません。

そのため、パッと見の姿勢から得られる情報は非常に重要ですが、加えて動きを見ることが本来の”姿勢を見る”ことに繋がります。

今回は、背臥位姿勢をどのように評価するか?を解説していきます。

”止まった”背臥位から動作を見るポイント

止まった背臥位からは、まず過剰固定部位を見ます。
緊張を高め、過剰に固定されている部位がどこかを観察・触診します。
この時の評価を円滑にする視点として、「クロスシンドローム」という考え方があります。

クロスシンドローム

クロスシンドロームは立位の評価に関して取り上げられることが多いですが、背臥位においても同様の視点で評価することができます。

右背部に過緊張を認め、過剰に固定している場合、左腰部も同様に固定されており、動きが生じにくい状態です。左腰部に過緊張が生じている場合、左腹部の緊張を高めにくい状態になっていることでしょう。
すると、反対側の右臀部は支持面から浮いた状態になり、右下肢の運動を起こす際に、末梢の緊張を本来よりも過剰に高めなければ動きにくい状態になります。

このように、各部位がどのように影響し合っているかをあらかじめ予測することができます。
加えて、麻痺や拘縮など本来抱えている障害像と合わせることで、他部位の過剰固定などの影響を受けて二次的に運動を起こしにくくなっている部位を推察することが可能です。

この視点が非常に重要な理由は、二次的に運動を起こしにくくなっている部位を根本となる問題点として捉えるという過ちを回避することができる点にあります。

二次的に緊張が高まっているものを、一次性の問題と捉えてアプローチしても、結局根本的な問題が解決されていないとイタチごっこになってしまいますからね。

”動く”背臥位から動作を見るポイント

ここでは、”パーキングファンクション”の視点からお話します。

パーキングファンクションとは、”過剰な連結がなく、必要最低限の筋連結で各身体体節がむずびついている状態”を言います。次にいかようにも動けるための準備状態が整えられた状態です。

一般的に、視診から過剰な連結の有無を評価する方法と、徒手的に各部位を動かして評価する方法があります。

徒手的な評価では、背臥位で胸郭や骨盤を左右に動かすことで、その抵抗感などから評価します。

パーキングファンクション

ここで重要なことは、ただ左右に動かした時の硬さ等を見るだけでは動きを見るために不十分であるということです。

ポイントは、左右に動かす際、支持面との接触情報を強調するように背面に圧を加えつつ左右に動かすことです
例えば、左に胸郭をスライドするように動かす際、左背部への圧を高めつつ動かします。この時、背面の圧変化に応じてさらに左側に支持面を広げようとする反応があるかどうかが重要です。

この反応の有無によって、スムーズに左側に寝返ったり起き上がったりする能力があるかどうかが予測できます。

これが、”動き”としての背臥位の見方の一例です。
支持面やそれに対する身体各部位の重心の変化に応じて姿勢緊張を整える反応があるということは、”動き”がある背臥位です。

逆に、動きが無い背臥位は、連続的な支持面の変化とそれに伴う運動の拡がりを起こせない状態であるため、過剰固定・過剰努力によって協調的な滑らかな運動が難しい状態であると言えます。

動作から背臥位を見るポイント

これは、背臥位から始まる動作「寝返り動作」「起き上がり動作」の動作分析において詳しく解説します。
また、寝返り動作分析の動画にてすでにお伝えしている内容と重複するため、動画をご覧いただければ幸いです。

寝返り動作分析サムネ

👉「理学療法士・作業療法士は知らないとヤバイ!寝返り動作分析

ヒトは、各動作が始まる瞬間、全身的に筋緊張を整え、動作に向けて準備します。これが、「構え」や「元の運動」と呼ばれる状態です。

例えば、左に寝返ろうとした瞬間に、左背面の支持面を広げ、胸郭も広がります。そうして、寝返る方向に機能的な支持面を広げるのです。一見動けそうな背臥位であっても、いざ動こうとした時に、この反応が生じないことがあります。

これが、動作から背臥位を見るということです。
動作分析するにあたって、この全身的な筋緊張の調整が目的動作に向けて行えているかどうかを見る能力は臨床において非常に重要です。

なぜなら、動作中の運動そのものを解決しようとしても、元の運動の時点でエラーが生じている問題の根本を解決しなければ、動作の質は改善しないからです。

まとめ

「その背臥位は動けるか否か?」いかがでしたか?

動きとして背臥位姿勢を見るポイントとして
①止まった背臥位から動作をみる
②動く背臥位から動作をみる
③動作から背臥位をみる

3つの視点からお伝えしました。

言い換えれば、
①パット見の動きが無い状態
②動かした時の状態
③対象が自ら動いた時の状態

これらを評価するということですね。

安静時背臥位というのは、支持面が広く安定しやすい姿勢であり、全ての患者において必ず評価される姿勢ですよね。
背臥位は、患者にとって世界が広がる第一歩ということです。
この記事が、全ての患者の生活空間が広がるきっかけになりましたら幸いです。

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参考文献
山岸茂則:臨床実践 動きのとらえかた, 文光堂, 2012
冨田昌夫他:臨床動作分析 PT・OTの実践に役立つ理論と技術, 三輪書店,2018

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