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「食事動作の要素」を知ってリハビリ専門職みんなでコラボしよう!

ご覧頂いている理学療法士・作業療法士の方、食事場面に直接関わる機会ってありますか?
言語聴覚士の方であれば特に機会は多いでしょうね。

私はかなりの割合で食事場面に介入します。
それは単にポジショニングをするとかいっただけではなく、治療的に介入するためです。
患者が患者の意思で活動に向かう中で姿勢などの反応を援助します。

食事は意欲・意図・動機を掻き立てるのには最適な活動の1つです。

患者が患者の意思で活動に向かう中で姿勢などの反応を援助します。覚醒度の改善、認知機能の改善、座位コントロール能の向上やそこから繫がる上肢活動の自立度向上、立位バランス能の向上などなど
上手く、食事動作の中で、目的とした要素に介入すれば、治療効果に繋げることができます。

今回は、そんな食事動作の要素を紹介いたします。

動物的要素と社会的要素

食事には大きく分けて2つの側面があります。
①食欲を満たすための活動としての動物的側面
②人との関係性の活動としての社会的側面

①動物的側面は自律的な要素が基本です。
咀嚼
嚥下
味覚・嗅覚の探索
(上肢・口・頭頚部・体幹の協調性)
などが挙げられます。

STの場合、①動物的側面を中心に関わることが多いでしょう。
咀嚼や嚥下を自然に行えるようにするためには、顔面だけでなく、頸部・体幹の姿勢緊張も整ってなくてはいけません。
そういった視点で考えると、リハビリ3職種全てが咀嚼・嚥下に関わることができると言えますね。

逆に、咀嚼・嚥下に関わりながら、座位の姿勢緊張を整えるということも可能です。

適応する患者がいらしたら、ぜひチャレンジしてみてください♪

ちなみに、頭頚部と上肢の協調的な反応については、整容動作関連の動画を先行してアップしていますので、そちらをご覧ください。

👉PT・OT・STどの職種でも使える整容動作の反応と治療応用

②社会的側面は文化的な要素も含みます。
場面への適応
コミュニケーション
食事マナー
食物の知識
上肢巧緻性
道具の操作技術

などが挙げられます。

PT・OTの場合は、この②の要素の中でも上肢機能に関わることが多いかもしれません。

「上肢の巧緻性などは自立的な姿勢反応に含まれるべき」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、人は社会的背景の中で動きをある程度制約しているため、今回は②に含みました。

次に身体機能以外で食事動作に影響する要因をいくらか挙げてみます。

身体機能以外で食事動作に影響する要素

個人の嗜好(味や香りなど)
食卓・空間の拡がり
場面
同席者
座面の形状
座面とテーブルの高低差
配膳パターン
空腹感・満腹感
食物の質感・重量
水分量・透明度

などが挙げられます。
まだまだあるかもしれませんが、ひとまずこの辺にしておきます。

食事場面への治療介入では、これらの要素を駆使して動作を引き出していくのがポイントです。

多くの場合は座位で行うことが多いでしょう。
そのため、これらの要素が影響し合うためには、まず座位のコントロールが不可欠です。

車椅子にハマり込んだ座位のままで、コントロールできていない座位のまま食べさせてはいませんか?

それでは①動物的側面も上手く機能しませんし、②社会的側面に脳の容量を割く余裕も無くなります。

ここで、1つ例を紹介します。

症例紹介

重度の片麻痺があり、座位が非常に不安定な方で、注意機能も著しく低下していました。
スプーンを持つことすらできず、お椀から直接食べようとします。
前院のサマリーでは「半側空間無視」が疑われていました。

ADLで食事は全介助。
リハビリではOTでは道具使用の練習、PTは装具歩行をメインに練習されていたそうです。

しかし、林は姿勢定位の困難さが基礎的な注意機能をさらに低下させていると評価し、食事場面への介入をしました。

足部の位置や骨盤のコントロールを適切なタイミングで誘導しつつ、それぞれの食器にアプローチするように促しました。
もちろん、配膳パターンにも気を配ります。

その結果、その方にとっての左右空間の拡がりは改善し、スプーンなども適切に使用できるようになりました。

この場合、空間の拡がりや座面の変化、配膳パターンを利用しつつ姿勢定位に関わったと言えますね。

このように、食事という活動の要素を上手く利用しつつ姿勢をコントロールする手掛かりを提示してくことで、食事動作が大きく変化することがあります。

このように、食事動作を上手く行えていない時、それぞれの要素に対して反応できていない瞬間を見ることができます。

そのため、どの要素でどんな反応が出るべきなのかを我々はもっと知らなければなりません。

「食事動作と座位コントロール」については、別の記事で詳しく解説する予定です。

姿勢の反応や配膳パターンとの関係性、料理による反応の違いなど、簡単ではありますが、動画にしています。ご覧ください。
👉「Let's動作分析!コンビニご飯の食事動作をPT/OT/ST皆で見よう

いかがでしたか?

この記事を機に、食事場面での評価の視点が広がれば幸いです。
今後、上記の動物的要素と社会的要素それぞれに対する治療アプローチの例なども更新していきますので、楽しみにしておいてください。

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