機能と動作の繋がりを「座位姿勢」から評価するヒント PT・OTのための動作分析
こんにちは。ReHub林です。
先日、「座位姿勢の見方についてもっと知りたい!」というご要望を頂きました。こういったご要望は非常に嬉しいので、是非今後もご連絡いただけると幸いです。
ということで、今回は座位姿勢がテーマです。
これはもう、理学療法士のみならず、作業療法士・言語聴覚士の方にとっても重要案件ですね。
教科書的な内容も紹介しますが、メインはどうやって機能障害や動作の問題と座位姿勢を直結して評価するか?という臨床思考と技術について解説します。
恐らくそこそこのボリュームになるので覚悟してください。
教科書的な座位評価
一般的な教科書では、座位姿勢・座位バランスの評価で以下の点を見るように言われています。
・静的アライメントと動的アライメントを評価する
・動的アライメントは他動運動・自動運動ともに評価する
・自動運動は支持基底面内での運動、支持基底面内外での運動を評価する*
・姿勢反射を評価する
*ここでの支持基底面内外の運動とは、座位での足踏みや立ち上がり動作等を指しているとのことです。
この時の評価指標の例は以下の通りです。
・身体重心の安定性
・重心動揺の速さと大きさ
・アライメント
・左右対称性
・脊柱の湾曲
・体幹の前後左右の傾斜
・重心移動の安定性
・身体重心移動距離、リーチ距離
・支持基底面の変化と重心移動のタイミング
・体幹と下肢の協調運動
などなど
盛りだくさんですねー。
しかし、これだけあっても、「だから何?」って思う方も多くいらっしゃるでしょう。
その理由は恐らく、上で挙げられた内容はバランスの検査であって評価ではない点にあるのではないでしょうか。
結局のところ、機能障害や姿勢コントロールの問題、活動面の問題を上手く繋ぎ合わせて、障害像を紐解き、アプローチを立案しないといけないわけです。
難しいですねー。
そんな座位姿勢の“評価”のちょっとひと手間をお伝えします。
動きのある座位と動きの無い座位を見分ける
動きの有無を見分ける手段はたくさんあると思いますが、ここでは3つだけ紹介します。
①骨盤を動かして姿勢反応を見る
②胸郭を動かして姿勢反応を見る
③膝・足部への荷重をコントロールして姿勢反応を見る
これ以降の内容は、立ち上がり動作についての動画でも近い内容を解説していますので、コチラもどうぞ
👉「立ち上がり動作の介助でほとんどの人がやっていない重要なポイント」
①骨盤を動かして姿勢反応を見る
一言で言うと、座位で骨盤を前後傾させます。
簡単に感じるかもしれませんが、そうでもありません。
(赤いライン・矢印は引き出す反応、黄色は坐骨荷重のイメージです)
骨盤を動かす際、荷重感覚を最も入力しやすい坐骨に圧を加えるように動かします。単に下方向に圧を加えるのではなく、骨盤の前後傾に伴って坐骨の位置も変化するため、その角度変化を忘れてはなりません。
この時に、臀部表層の緊張状態も捉えられるとベストです。
👉坐圧の変化を強調しつつゆっくりと前後に骨盤を動かした時に、上に繋がっている腰部や胸郭は追随して反応しているでしょうか?
👉前傾した時に下肢が支持し始める反応が起こっているでしょうか?
👉それは、下肢のアライメントを整えていなくても自然に整えようとする反応が起きているでしょうか?
👉下肢のアライメントを整えてあげれば、下肢が支持する反応が起こるのでしょうか?
👉前後傾に僅かに左右差を加えた時に、その左右差に応じた下肢の反応が起こっているでしょうか?
このように、骨盤を前後傾するだけでも着眼点はたくさんあります。
これらの反応を見定めることで、どの部分の問題が座位のコントロールを難しくしているのか、立ち上がりでの支持反応を生じにくくしているのかなど、機能障害や動作パターンの問題点との繋がりを詳細に分析することができます。
②胸郭を動かして姿勢反応を見る
骨盤の前後傾の話から、既におおよそ想像がついているかもしれませんね。
(赤いライン・矢印は引き出す反応、黄色は坐骨荷重のイメージです)
胸郭を把持し、胸椎の屈曲・伸展を誘導します。この時も坐骨に向けて圧を加えます。坐圧変化に対して、骨盤をコントロールする反応が生じれば、胸椎・胸郭レベルでのコントロールが不十分で座位姿勢が不安定になっている可能性があります。
また、胸郭の伸展を誘導する際、肩甲骨の下制・内転の動きも同時に誘導するパターンも比較することで、肩甲骨の運動が座位に影響を及ぼしているかどうかを見ることができます。
そして、①の解説と同様に骨盤・下肢の反応の有無を捉えます。
この他にも、左右に立ち直るように徒手誘導を加えることで左右に荷重した際の姿勢反応を見ることもできます。
単に胸郭を左右に動かすだけでなく、坐圧変化を強調して行うと抗重力伸展活動としての荷重側の体幹筋の緊張の高まりや下肢の支持反応を評価しやすくなります。
👉ただし、この緊張の高まりも過剰固定として高めているか、荷重変化に応じて追従するように安定性を高める緊張の変化なのかを見極めなければなりません。
👉臥床期間が長い患者に多い状態として、①②どちらも姿勢反応が非常に生じにくいことがあります。その場合は、胸郭と骨盤双方のコントロールを同時に徒手誘導し、反応の変化を見極めるとよいでしょう。(一人では難しいかもしれません)
この場合、反応の変化は非常に微々たるものです。しかし、それを見極められるかが、抗重力位での活動の第一歩です。
膝・足部への荷重をコントロールして姿勢反応を見る
①骨盤を動かして姿勢反応を見る中で“下肢のアライメントを整えてあげれば、下肢の支持反応が起こるでしょうか?”と言いましたね。
この“整える”にも色々あるので、少し解説します。
基本的にアライメントとしては、肩―股関節―膝―足が一直線に並ぶことが目安です。
こうして整えた状態で、さらに荷重の感覚を必要に応じて強調してあげます。
これらは下肢への荷重を単独で行うよりも、①②と同時に行い、その動きの中で誘導する方が容易でしょう。
(赤いラインは引き出す反応、黄色は坐骨荷重と膝・足部への荷重の強調)
例えば、セラピストが前方から両手で骨盤前傾を誘導しつつ、前傾角度に応じてセラピストの前腕で両膝への荷重を膝上から強調します。
*(どの程度の前傾でどの程度の下肢支持反応が生じるかは体感的に把握できていなければなりません。)
この誘導によって下肢の支持反応がより強固に得られる場合は、体幹―骨盤前傾時の殿筋群の遠心性収縮によるコントロールが不安定であることが考えられます。
なぜなら、殿筋による股関節伸展の力は、大腿骨で膝関節を下に押さえることで同時に膝伸展もサポートしているからです。
また、さらに足部の反応を強調するポイントも付け加えてみます。足関節に直接的に荷重の圧を伝えているのは、脛骨です。よって、脛骨直下の足底に割りばしや杖など、足部への荷重感覚を強調する細工をしておきます。
上で紹介した、膝への荷重でも足部への荷重を強調することはできますが、さらに足部の影響を考慮して評価する場合、このような手段も検討すべきでしょう。
膝への荷重と分けて行う場合は、内外果を下方に押さえるなどして工夫すると良いでしょう。
👉この誘導によって下肢の支持反応がより強固に得られる場合は、足関節や足底での荷重に対する支持反応が弱化しているために、座位のコントロールが不安定になっていると考えられる要素となります。
まとめ
今回紹介したのは、主に矢状面での動きですが、やはり結構なボリュームになってしまいました。
座位おそるべし。
座位という静止姿勢も結局は運動の1つです。
静止アライメントを捉えることは非常に重要なのですが、動きに繋がる情報をセラピストが提供した際の姿勢反応を見ることも重要です。
しかも、こういった姿勢反応というのは、単純に筋力や可動域だけでは説明できない神経系の反応が含まれています。
ただ骨盤を動かす、胸郭を動かすだけの話ですが、患者の動作に関する膨大な情報量がそこに詰まっています。
この記事が、座位という運動を通して、患者の動作障害の本質に至るキッカケになりましたら嬉しい限りです。
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