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フールズメイト3(過去作)
その日、純喫茶「フールズ・メイト」には、洋二の雪江の二人しか居なかった。
マスターは、どうやらまた競馬に出かけていたのだという。つまり、店番もかねた居座りという事である。
外は酷い雨だった。窓の無い店だというのに、ドアに当たる雨音が、レコードの音に紛れて聞こえた。
洋二は珈琲を飲んでいた。
その向かいで、雪江は本を読んでいる。
ふいに、唸る様な雨音が聞こえ、冷たい風が流れた。
フールズメイト2(過去作)
3
「君は、まるで知らぬ素振りを決め込むが──」
と、隣から聞こえる声を、板垣に身を寄せる忍はあえて無視した。
しかし、それでもその声は愉しげな調子で続ける。
「僕の周りには、数々の陰謀が蠢めいている──暗殺組織──秘密結社──そいつらから身を守る為に、僕は知識を備えた──おかげで、今このような真似が出来るのもその知識のたまものというわけだから──有り難く──うやうやしく─
フールズメイト(過去作)
とある夏の夕方。
黄昏れた街をひた歩き、一軒の酒屋と、堆く詰まれた本の山に埋もれる古本屋の前
で立ち止まると、ふと、貴方はそこで店の間に伸びる小さな横道を見つけてしまう。
その横道は、道というには随分と狭く、暗い。
吹き流れる風は酷く湿っており、まるで魔窟如き有様。そこから見える路地の地面には、吸殻だの、食べ残しのカップ麺だのが無造作に転がっている。
しかし何故か、貴方は吸い込ま