Makoto MURANAKA(村中誠)

2008年からフランス🇫🇷に住み、パリのビストロでシェフをしながら絵を描いています。(ア…

Makoto MURANAKA(村中誠)

2008年からフランス🇫🇷に住み、パリのビストロでシェフをしながら絵を描いています。(アイコンの写真は自分の顔をアプリで老化させました)

最近の記事

「水道橋博士のメルマ旬報」第十回

子供の頃、僕の家にはプレゼントを持ってサンタクロースは一度も来てくれなかった。その理由として、家にクリスマスツリーがなかったことや、僕が良い子ではなかったことがあったと思う。だから、サンタクロースの存在を信じていなかった。しかし娘が生まれてから9年間、我が家には毎年、12月25日の朝にクリスマスツリーの下に娘のためのプレゼントが置いてある。 目印になるクリスマスツリーが我が家にあることと、娘が良い子であることが、サンタクロースが来てくれる理由だろう。そして、何より、娘がサン

    • 「水道橋博士のメルマ旬報」第九回

      最近、絵を依頼されて描くということを始めた。依頼者の意向に沿った絵を描くということは、今まで一度もしたことがなかった。正直、僕にそんなことができるのだろうか?とも思ったが、僕は「始めたばかりの頃はなんでも経験した方が良い」という考えの持ち主なので、やってみることにした。 こういう言い方をするとなんだが、お金を頂いて新たなことに挑戦できるなんて、願ったり叶ったりだ。ただ、描いた絵が、依頼者が求めているものではなかった場合、どういう反応になるのだろうか? 依頼者に満足してもらえ

      • 「水道橋博士のメルマ旬報」第八回

        水道橋博士が新連載する「藝人春秋FINDERS」の絵を僕が担当することになった。 突然、博士からメールが来て、表紙と挿絵の仕事のお誘いをいただいたのだが、僕には断る理由もなければ、躊躇する暇もないので、すぐに喜んでお引き受けする旨を伝えた。 そして、博士から連絡が来て6時間後には違った感じの絵を二枚描いて博士に送って見てもらい、そのうち一枚がすぐに採用されて表紙になった。 採用された絵は、2枚描いた内の初めに描いたものだったが、やはり2枚目に描いたものより、1枚目の絵が瞬間

        • 「水道橋博士のメルマ旬報」第七回

          この原稿を書いている2021年9月18日現在、僕は「第四回モダンアートエナジー展 in Paris」という、Galerie SATELLITEというパリの画廊で開催されているグループ展に参加している。このグループ展は日本人アーティストを海外で紹介する展覧会で、僕は以前ワインラベルのコンペに参加して情報を拡散している中で、たまたまこの展覧会の主催者と出会い、僕の描いたワインラベルの絵を気に入ってもらい、招待を受け参加することになったという経緯がある。 そして今さっき、そのグル

        「水道橋博士のメルマ旬報」第十回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第六回

          コロナの影響で久しく遠ざかっていた美術館や映画館が、ようやく再開された。娘と妻はすでに夏のヴァカンスに入っていたので僕のヴァカンスが始まってすぐのタイミングで、家族みんなでオルセー美術館に行くことにした。オルセー美術館には、遠い昔に一度妻と訪れたことがあったが、去年の5月から本格的に絵を描き始めたこともあって、絵画をはじめとした芸術作品がどのように自分の目に映るのか、以前と何か違う見え方や発見があるのか、そういったことにも興味があった。 オルセー美術館は主に印象派の画家の作

          「水道橋博士のメルマ旬報」第六回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第五回

          フランスの厨房に立った初日のことは、今でも鮮明に覚えている。オーナーシェフとの面談を終え、「やる気があるなら今夜試しに働いて見る?! 」と言われ、15分後にはコックコートに着替えて厨房に立った。 お店にもよるが、だいたいフランスのビストロの営業時間は19時からが多く、18時の面接が終わったあとは、ちょうど営業前の賄い飯の時間と重なり、誰一人知らない人達と軽い自己紹介をしながら僕は賄い飯を食べた。とても緊張していて、正直何を食べても味がしなかった。サービス前のなんとも言えない

          「水道橋博士のメルマ旬報」第五回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第四回

          2021年6月19日。フランスではコロナの影響で7ヵ月半以上ずっと営業ができなかった飲食業が再開された。その反動はやはり大きく、テラス席のみの営業だったが、連日お客が押し寄せ、満員御礼。久しぶりに働いたということもあり、僕はすぐに疲労困憊となった。まあ、それは置いておいて、兎にも角にも仕事が再開できたのは良かったし、嬉しかった。 現在、自分がシェフを任されているお店はビストロと言われる店だ。ビストロでは気軽にリーズナブルな金額で食事が楽しめる。ドレスコードもなく、子供も気兼

          「水道橋博士のメルマ旬報」第四回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第三回

          2014年7月17日、パリの労働局から一通の手紙が僕が勤めるレストランのオーナーシェフに届いた。その内容は、僕のフランスでの労働許可の更新を却下するということだった。 パリのビストロでシェフをしているというと、なんだかかっこいい感じに聞こえるかもしれないが、フランスにとって僕は所謂ただの外国人労働者。料理の仕事はきついし、ミシュランの星をとるような店は一握り。料理人は、フランス人の若者にとって憧れの仕事では決してないだろう。だからフランスの飲食業界には、多くの外国人が合法に

          「水道橋博士のメルマ旬報」第三回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第二回

          ワインラベルのコンペの結果が出た。トリッピーは撃ち落とした。しかし僕も撃沈した。 トリッピーは「票を買った」とドメーヌが判断したと思われ失格になった。これで得票数が2位の僕が本来なら受賞のはずだったのだが、3位の応募者が受賞したという発表が酒蔵のFacebookとInstagramで正式に発表があった。全くもってこの事態を把握できない僕は、すぐさまドメーヌのSNS上に「どうして2位の僕が受賞ではなく、3位の応募者が受賞したのか、説明をしてもらいたい。」という旨のコメントを書

          「水道橋博士のメルマ旬報」第二回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第一回

          2021年3月9日フランス時間11時10分、この「メルマ旬報」に連載するきっかけとなった、ワインラベルのコンペの結果はドメーヌ(*1)から今まだ発表されていない。 本来ならそのコンペの結果を待ってから書こうと思っていたのですが、いつになるのかわからないし、その待っている時間が自分にとってストレスなので、それを紛らす意味でも、第一回目の「メルマ旬報」の記事を執筆しようと思い、書き始めています。 始めに、まず、全く無名のどこの馬の骨かわからない人間に、「メルマ旬報」の仕事をく

          「水道橋博士のメルマ旬報」第一回