Makoto MURANAKA(村中誠)

2008年からフランス🇫🇷に住み、パリのビストロでシェフをしながら絵を描いています。(ア…

Makoto MURANAKA(村中誠)

2008年からフランス🇫🇷に住み、パリのビストロでシェフをしながら絵を描いています。(アイコンの写真は自分の顔をアプリで老化させました)

最近の記事

「水道橋博士のメルマ旬報」第十九回

笠井誠一さんという画家がいる。その笠井誠一さんの娘さんの計らいで、笠井さんご本人のアトリエ兼ご自宅にお邪魔して、お話を伺う機会を設けてもらった。 そもそも、笠井さんの娘さんと僕はSNSで出逢い、僕の絵を気に入ってもらったことがきっかけで、知り合いになった。それからメッセージでやりとりしていく中で、銀座のギャラリーゴトウでの展覧会のお知らせをした時に、彼女のお父様が著名な画家であることを教えてもらった。僕は無知過ぎて、笠井誠一さんのことを存じ上げていなかったのだが、作品を含め

    • 「水道橋博士のメルマ旬報」第十八回

      2022年7月21日にコロナのPCR検査を受けた。フランス出国前72時間以内のコロナウィルス陰性証明がないと、僕は飛行機に乗れず、日本に行けない。このことに気付き渡航する二週間前ぐらいからずっとストレスであまり良く眠れなかった。もしも検査結果が陽性の場合、展覧会にも行けないし、何より絵を急いで日本に送ったとしても、額装する時間なども含めると、展覧会の初日に間に合わない可能性もある。本当に最悪の事態になってしまうのだ。しかし、僕は勝手に日本へ行けると信じていたので、前もって絵も

      • 「水道橋博士のメルマ旬報」第十七回

        「村中誠展」 Gallery Goto 住所 銀座1-7-5 銀座中央通りビル7F 電話 03-6410-8881 2022/08/01(月)〜8月10日(水)12時〜18時 日曜日休廊  最終日16時半まで 8月6日(土)15時(ギャラリートーク) 参加申し込みは画廊まで。 いよいよ、日本での僕の展覧会が近づいてきた。絵を描き始めた約二年前に、日本の、東京の、銀座の画廊で展覧会をすることになろうとは、想像すらできなかった。絵を描くか、描かないか。あの日、あの時、も

        • 「水道橋博士のメルマ旬報」第十六回

          「きおくのうみ」 あたしには じいじのてんしが みえるんだ きおくを みはるのが てんしのおしごとらしいの だれにでも ひとり ついてるみたい ほら きょうも じいじの きおくをのぞいてる 「ねえ じいじ あたしにも ちいさいころって あったの?」 「もちろんじゃ よ〜く覚えおるわ」 でもね このごろ じいじは わすれんぼうなの だけど すごいよ めかくし してても みえるみたい 「あぁ わしには みえるのさ」 あるひ とつぜん じいじが さけんだの 「わしは ボケ

        「水道橋博士のメルマ旬報」第十九回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十五回

          僕がお世話になっているパリの画廊から、「DDESSINPARISというアートフェアに参加します。」という連絡が来た。 そのイベントは、10年前から始まった展覧会で、今年は12の画廊が、それぞれ選出した様々な形態のドローイングのアーティストを紹介する。そのアーティストの一人に、僕が初めて展覧会をした画廊のオーナーのセシルが、僕を選んでくれたのだ。しかし、この展覧会には高額な出店料が発生するので、パリを中心としたイルドフランス地域圏における僕の絵の売買は必ず画廊を介して欲しいと

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十五回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十四回

          コロナ禍のフランスは早々にロックダウンとなり、飲食業が何ヶ月も業務停止となった。仕事ができない間に僕が絵を描き始めたことは以前にも書いたが、娘の願いもあって犬を飼い始めたことも、我が家で起きたコロナ禍の出来事のひとつだ。 犬を飼うといっても、ここはフランス。日本とは色々と勝手が違う。最初は日本のように、ペットショップに行き、好きな犬種を選び、買ってくるとばかり思っていたが、日本のようにあちらこちらにペットショップがあるわけではない。ペットを飼おうなんて計画が全くなかった頃か

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十四回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十三回

          僕の記念すべき初めての絵の展覧会が終了した。展覧会中にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、世界の情勢は大きく変わってしまった。心穏やかではない日々が続くが、実際に国を攻撃され、住んでいた土地を奪われ、そこを去らなければならないウクライナの人々に比べれば、物価が上がろうが、国際郵便物が遅延しようが、ロシア上空を飛行できずに飛行時間が延びようが、本当に大したことではない。しかし、僕らはたった一人の権力者が手にする指揮棒の一振りで、これからの先行きを、こんなにも脆く不安に思ってしま

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十三回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十二回

          2022年2月5日快晴。真冬のパリでは珍しく太陽の日差しに恵まれた土曜日の午後、僕の記念すべき人生初の絵の展示会のオープニングパーティーが開催された。我が家は、犬、娘、妻、僕、と家族総出で参加して、絵を見に来てくれるお客様を迎えた。 僕たちが会場に着くと、まずは画廊のオーナーであるセシルが「展示会おめでとう!」と出迎えてくれた。「とりあえず画廊に展示されている僕の絵を見て」と言われたので、額装され画廊に飾られている自分の絵をじっくり見た。セシルが選んだ額装は、マットを用いず

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十二回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十一回

          天狗が好きだ。どこが好きかというと見た目だ。自信に満ち溢れた表情と山伏のような衣装が良い。僕にとっては、勇気とやる気を起こさせてくれる存在だ。世間一般的には妖怪や魔物ということで、印象はあまり良くないと思うのだが、僕が思う天狗は人間が天狗のお面を被っている天狗だ。つまりは、どこにでもいる人。羽も、リュックサックのように背負うタイプのものだ。 天狗は架空の生き物だけど、もしも僕が天狗のお面を被り、山伏の格好をして、羽を背負って、下駄を履いて、人里離れた山奥でずっと一人で2、3

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十一回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十回

          子供の頃、僕の家にはプレゼントを持ってサンタクロースは一度も来てくれなかった。その理由として、家にクリスマスツリーがなかったことや、僕が良い子ではなかったことがあったと思う。だから、サンタクロースの存在を信じていなかった。しかし娘が生まれてから9年間、我が家には毎年、12月25日の朝にクリスマスツリーの下に娘のためのプレゼントが置いてある。 目印になるクリスマスツリーが我が家にあることと、娘が良い子であることが、サンタクロースが来てくれる理由だろう。そして、何より、娘がサン

          「水道橋博士のメルマ旬報」第十回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第九回

          最近、絵を依頼されて描くということを始めた。依頼者の意向に沿った絵を描くということは、今まで一度もしたことがなかった。正直、僕にそんなことができるのだろうか?とも思ったが、僕は「始めたばかりの頃はなんでも経験した方が良い」という考えの持ち主なので、やってみることにした。 こういう言い方をするとなんだが、お金を頂いて新たなことに挑戦できるなんて、願ったり叶ったりだ。ただ、描いた絵が、依頼者が求めているものではなかった場合、どういう反応になるのだろうか? 依頼者に満足してもらえ

          「水道橋博士のメルマ旬報」第九回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第八回

          水道橋博士が新連載する「藝人春秋FINDERS」の絵を僕が担当することになった。 突然、博士からメールが来て、表紙と挿絵の仕事のお誘いをいただいたのだが、僕には断る理由もなければ、躊躇する暇もないので、すぐに喜んでお引き受けする旨を伝えた。 そして、博士から連絡が来て6時間後には違った感じの絵を二枚描いて博士に送って見てもらい、そのうち一枚がすぐに採用されて表紙になった。 採用された絵は、2枚描いた内の初めに描いたものだったが、やはり2枚目に描いたものより、1枚目の絵が瞬間

          「水道橋博士のメルマ旬報」第八回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第七回

          この原稿を書いている2021年9月18日現在、僕は「第四回モダンアートエナジー展 in Paris」という、Galerie SATELLITEというパリの画廊で開催されているグループ展に参加している。このグループ展は日本人アーティストを海外で紹介する展覧会で、僕は以前ワインラベルのコンペに参加して情報を拡散している中で、たまたまこの展覧会の主催者と出会い、僕の描いたワインラベルの絵を気に入ってもらい、招待を受け参加することになったという経緯がある。 そして今さっき、そのグル

          「水道橋博士のメルマ旬報」第七回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第六回

          コロナの影響で久しく遠ざかっていた美術館や映画館が、ようやく再開された。娘と妻はすでに夏のヴァカンスに入っていたので僕のヴァカンスが始まってすぐのタイミングで、家族みんなでオルセー美術館に行くことにした。オルセー美術館には、遠い昔に一度妻と訪れたことがあったが、去年の5月から本格的に絵を描き始めたこともあって、絵画をはじめとした芸術作品がどのように自分の目に映るのか、以前と何か違う見え方や発見があるのか、そういったことにも興味があった。 オルセー美術館は主に印象派の画家の作

          「水道橋博士のメルマ旬報」第六回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第五回

          フランスの厨房に立った初日のことは、今でも鮮明に覚えている。オーナーシェフとの面談を終え、「やる気があるなら今夜試しに働いて見る?! 」と言われ、15分後にはコックコートに着替えて厨房に立った。 お店にもよるが、だいたいフランスのビストロの営業時間は19時からが多く、18時の面接が終わったあとは、ちょうど営業前の賄い飯の時間と重なり、誰一人知らない人達と軽い自己紹介をしながら僕は賄い飯を食べた。とても緊張していて、正直何を食べても味がしなかった。サービス前のなんとも言えない

          「水道橋博士のメルマ旬報」第五回

          「水道橋博士のメルマ旬報」第四回

          2021年6月19日。フランスではコロナの影響で7ヵ月半以上ずっと営業ができなかった飲食業が再開された。その反動はやはり大きく、テラス席のみの営業だったが、連日お客が押し寄せ、満員御礼。久しぶりに働いたということもあり、僕はすぐに疲労困憊となった。まあ、それは置いておいて、兎にも角にも仕事が再開できたのは良かったし、嬉しかった。 現在、自分がシェフを任されているお店はビストロと言われる店だ。ビストロでは気軽にリーズナブルな金額で食事が楽しめる。ドレスコードもなく、子供も気兼

          「水道橋博士のメルマ旬報」第四回