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「水道橋博士のメルマ旬報」第八回

水道橋博士が新連載する「藝人春秋FINDERS」の絵を僕が担当することになった。

突然、博士からメールが来て、表紙と挿絵の仕事のお誘いをいただいたのだが、僕には断る理由もなければ、躊躇する暇もないので、すぐに喜んでお引き受けする旨を伝えた。
そして、博士から連絡が来て6時間後には違った感じの絵を二枚描いて博士に送って見てもらい、そのうち一枚がすぐに採用されて表紙になった。
採用された絵は、2枚描いた内の初めに描いたものだったが、やはり2枚目に描いたものより、1枚目の絵が瞬間的な熱量と思いが封じ込められていたのだと思う。

改めて博士のフットワークの軽さと決断力の速さに驚かされると同時に、そういうことが本当に大切なのだろうと、自分自身にも言い聞かせた。

「僕は絵を介して、人との出逢いや出来事を楽しんでいることに気が付いた。絵を描いた先に僕は用がある。誰かに逢うために絵を描いているんだ。絵を描かなければ逢えない人に。」

これは少し前に僕がSNSに書いた文章だが、博士との出逢いもまさに絵を介してだし、僕が博士の新連載の絵を担当することになるなんて、本当に人生は面白いし飽きない。
2020年の5月から絵を描き始めてから、絵が僕にもたらしてくれた出逢いと出来事は、僕の想像を遥かに越えていった。

原カントくんがMCを務める「渋谷のほんだな」というラジオ番組に出演したのも、絵のおかげだ。僕がフランスに住んでいるということもあり、Zoomでの収録だったのだが、原さんとは以前からメルマ旬報でメールのやり取りはしていたので、初めて対面して話したのだが、昔から知っている人のような気もして、気楽に話すことができたと思う。
今回のラジオ出演では僕の経歴を話して終わってしまったので、もしも2回目の出演の
機会があれば、今度は絵のことを話せたらと思う。

ラジオの収録の際に、事前に原さんから4曲リクエストをお願いされて、その曲の紹介も僕がするという、いかにもラジオ!っぽいこともあって嬉しかった。

好きな映画や音楽や漫画やアニメや本は、その人を短時間で知ることができる手がかりになると僕は思っている。実際、博士に出逢ってメールのやり取りを始めた時も、僕の好きな映画三本は「マッドマックス、マッドマックス2、戦国自衛隊」と書き博士に送った。

そんな考えもあり、番組中に僕が選曲した音楽が僕を知ってもらうことになるだろうと思ったので、時系列で高校生から今に至る僕の根幹にもなっている曲を選んだ。

1曲目は僕が今でも大好きで聴き続けているHR/HM(ハードロック/ヘヴィーメタル)を好きになるきっかけになったPanteraの「Cowboys from hell」。この曲は高校生の時に僕が夜な夜な遊びに行っていた、中野くんの家で観たMTVを録画したビデオで出逢ったのだが、音もそうだがこの曲のミュージックビデオにやられたと言った方が良いかもしれない。とにかく釘付けになり何度も何度も繰り返し見返した思い出がある。今観ても本当にカッコ良いと思えるミュージックビデオの一つだ。

そもそもミュージックビデオはライブ映像&白黒にすることで、大抵カッコ良く見えるのでは?!とも思う。後にボーカルのフィル・アンセルモの容姿に憧れ、モヒカンみたいな感じの髪型にして軍パンをハサミで切って履いていた。

2曲目は、これも僕が好きなHR/HMに分類されるAlice in chainsの「Them Bones」。
このバンドは一番好きかもしれない。
1992年に発売された「Dirt」というアルバムが特に好きで一番聴いたアルバムだと思う。そのアルバムの一曲目が「Them Bones」だ。
このバンドは好き過ぎて「Would?」という曲の歌詞を赤いTシャツに白いペンで書いて着ていたという苦い思い出がある。シャア・アズナブルも言っていたが「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」という言葉が適切だと思う。

3曲目は、今僕が日本で一番カッコ良いと思っているdownyというバンドの最新アルバムに収録されている「砂上、燃ゆ、残像」。ポストロックという言葉をこのバンドで知った気がする。僕が好きな変拍子が多用された音楽で、何度も聴くうちに虜になって行った。
たまたまInstagramでボカールギターの青木ロビンさんと知り合いになり、勝手にアルバムの絵を描いては青木さんに送っていた。そしてある日、本人から連絡が来て、「自由に遊んで下さい」と優しい言葉をかけてもらい、ラジオに出演する際にこのエピソードを話してもいいと承諾をもらい話した経緯がある。downyのライブには一度も行ったことがないので、いずれ行きたいと思っている。

4曲目はmooks2018というバンドの「ケムリ」。僕はこのバンドのジャケットの絵を担当している。
バンドのメンバーは高校生の時からの友達で、ベースとドラムは一緒にコピーバンドを組んでいたことがある。ベースの長谷川くんがドイツ人女性と結婚してベルリンで生活することになったり、ボーカルギターの金城くんが就職したりで、バンド活動はずっと休止していたのだが、2018年に、ゆるめるモ!というアイドルグループに「歩くの遅い犬」という曲を提供したことをきっかけに、再び音楽活動を再開した。

ボーカルギターの金城くんは埼玉、ドラムの杉山くんは東京、ベースの長谷川くんはベルリンと、住んでいる場所は違うけれど、作曲活動は、音源のデータを共有してみんなで音楽を作っている。ライブはさすがに集まらないとできないけれど、それぞれが仕事を持ち、住んでいる国が違うのにバンドを組み音楽を続けることができるのは素晴らしいと思う。そんな彼らを応援したいのと、「ケムリ」という曲は僕が本当に好きなので選んだ。

これからも、僕の絵が、僕自身を何処か誘ってくれることを期待している。

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