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【オリジナル作品】短編・長編小説、俳句

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オリジナルの短編や長編小説、他に俳句などの作品をまとめています。
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#祖父母

冬眠していた春の夢 第16話 祖父母の一周忌

冬眠していた春の夢 第16話 祖父母の一周忌

 謎は謎のままで、何も変わらずに夏休みが終わった。
 そして、「高校受験には中2の2学期の内申が大事」と先生がしつこく言うので、私も通常運転に戻り、勉強に励んでいた。
 なにしろ絶対に仁美と同じ高校に行きたいのだから。

 そして中間試験が終わった後の、10月の日曜日、祖父母の一周忌の法要が執り行われた。
 名古屋の叔父叔母以外に、お葬式には来られなかった祖父方の親戚4人と、祖母の姪という2人と、

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冬眠していた春の夢 第10話 新盆

冬眠していた春の夢 第10話 新盆

 中2の夏、私は生まれて初めて異性を気にするようになった。
 もしかしたら、この感じ…初恋なのかもしれない。
 でも、まだ自分でもよくわからないでいたのに、私の変化に興味津々な仁美が、聞きもしないのに、橋本さんについてあれこれ教えてくれた。

 誕生日は3月29日。血液型O型。一人っ子。
 出身は逗子市だが小学4年生の時に小田原市へ引越し、今は鎌倉在住で賢吾と同じ大学の1年生。恋愛経験なし。趣味ゲ

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冬眠していた春の夢 第4話 喪失感

冬眠していた春の夢 第4話 喪失感

 テレビのニュースで事故を知った翌日からちょうど1カ月、父は仕事を休んで私のそばにいてくれた。いや、途中で一週間は家に帰ったけど、その間は名古屋の叔母がいてくれた。
 こっちにいる間、父は黙々と遺品整理に明け暮れていた。
 私は普段通りに学校に通い、帰宅すると殆ど猫達と過ごしていた。

 私の知らないところで、大人達による今後の私の生活について、話し合いが行われていたようだ。
 普通だったら、実の

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冬眠していた春の夢 第2話 宗教家の祖父母

冬眠していた春の夢 第2話 宗教家の祖父母

 祖父母は仕事はしていなかったけど、何か宗教をやっていたようで、家には、まるでお寺さんにあるような、でもそれよりもやや小さ目の立派な神棚があって、祖父はいつも作務衣のようなものを着ていて、たまに来る信者さん達から「先生」と呼ばれていた。
 それでも、宗教家として熱心に何かをしていた感じはなく、日々同じような繰り返しの日々を淡々と過ごしていた。

 祈りに関して言えば、祖母の方がずっと熱心で、お経を

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