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夢絨夜

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自分なりの『夢十夜』を書いてみたいと思い至り、高校生の頃から夢日記を付けてみたら七十までやってきてしまいました。読み方はそのまま「ゆめじゅうや」です。千夜一夜までいけるかは、私の…
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#短編小説

『第五夜』

『第五夜』

 こんな夢をみた。

 私は、屋根裏の薄暗い部屋に置かれた鏡台だ。自分が一体どんな姿をした鏡台なのかは知らない。部屋にある鏡は私だけだから、皮肉なことに知る由がないのだ。
 部屋には、木製の簡素なベッドと、センスの悪い衣装が何着も収められたクローゼットと、素人でも造れそうな歪んだ円形のテーブルと、萎れた感じの造花が挿された花瓶一つだけが置かれている。ちょうど今頃のような、錆びた夕陽がこの部屋にはと

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『第三夜』

『第三夜』

 こんな夢をみた。

 私は公園のベンチに腰をかけて、ぼんやりと砂場を眺めていた。

ありふれたどこにでもある昼下がり。幼い子供たちが、砂のお城を作っては崩しを繰り返しながら、きゃっきゃっと騒いでいる。

「それ」が訪れたのは突然のことだった。ぽかぽかと、温かい陽気の中を、サッと冷たい風が吹き抜ける。風に誘われるように瞬きをしたとき、ふっと何も音が聞こえなくなったのに気が付いた。驚いて辺りを見回す

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