【対談vol. 1】期中管理で電気をつくる!~発電所の災害対策について~
こんにちは!「再エネのアセットマネジメント」noteで管理人を担当しているオリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント(以下、OREM)です。
このnoteでは、さまざまな課題が露呈している太陽光発電事業の期中管理ににおいて、これまでトライ&エラーを積み重ねてきたOREMが発電量向上に資するノウハウを皆さまと共有し
環境ダメージを与えて開発したからこそ、最良の状態で活用し続けたい
エネルギー自給率の低い日本の電気を最適な期中管理で増やしていきたい
という想いで再エネのアセットマネジメントについて普及啓発しています。
そして、最適な管理体制で自然と共存し発電ロスを抑制することで、環境に優しいクリーンエネルギーを増やしていきたい!と私たちは考えています。
↓ 期中管理の基本的な考え方については初回の記事を参照ください。
自然災害による発電事業への影響
今年の夏も、気候変動による異常気象等の影響で猛暑が予想され、暑さも本格化してきましたが、皆さん熱中症など体調を崩されていないでしょうか?
例年この時期は、集中豪雨や台風など、自然災害による被害が相次ぎます。再エネ業界においても、過去に太陽光発電や風力発電などの設備が被災した事例があり、発電事業への影響やトラブルが少なくありません。
<被害の一例>
設備故障による停電や売電ロス
故障部材交換などによるコスト発生
アレイやパネルの飛散による近隣への二次被害
敷地外への泥水流出
土壌の洗堀や浸食、地盤沈下
地盤沈下、斜面や法面(のりめん)の崩壊 など
発電所の期中管理においては、このような事態を想定し「被害を最小限に抑えるための備え」や「トラブルを未然に防ぐための心構え」が大切です。
そこで今回は、株式会社ジオシステムをゲストにお迎えし、発電所の災害対策についてお話を伺います!
産業の現状
まずは長年、発電所の土木造成などに携わっているジオシステムさまにご意見をお伺いします。
ジオシステム:特に、FIT法が施行されて以降、ほぼ毎年、全国各地で自然災害が発生している状況です。発電所の開発については、1ヘクタール(1ha)以上の森林開発の場合、林地開発許可制度の基準に沿って設計をすることになっています。
しかし、この基準を上回る自然災害が発生しているのも事実です。そのため、最近では行政が独自に開発のガイドラインを設定するなど、自然災害を意識した動きも出てきています。
例えば、1ヘクタール(1ha)未満の森林開発の発電所においても、林地開発と同基準で計画する案件もあります。
ジオシステム:弊社はもともと法面や擁壁の資材メーカーとして、公共工事を主としていましたが、5年ほど前からメガソーラーの現場でも類似の取り組みが採用されるなど、再エネ業界での需要が高まりつつあります。
最近では、既設発電所における土木補修の相談が増えてきました。その中でも、排水に関する相談案件が多く、改めて排水計画の重要性を認識しています。
このような背景もあり、弊社では太陽光発電所での雨水による洗堀・崩壊のリスクなどに対応した「土木メンテナンスサービス」の提供を新たに開始しました。
既設発電所の土木メンテナンスとは?
OREM:それでは早速、詳細についてお伺いしていきます。
ジオシステム:これまで、発電所の期中管理においては、電気点検などのO&Mメニューが主流だったと思います。しかし、昨今相次ぐ自然災害の影響で、既設発電所から発電事業に支障が出ているなど、土木系の事故を懸念する声が多く寄せられました。
土木リスクにおいても、O&Mと同じように状態を把握し、リスクに備える対策を講じておくことで、大きな事故や被害を最小限に抑えられます。それだけではなくダウンタイムの抑制につながり、コストの面においても、長期安定稼働が求められる太陽光発電においては有効な施策となります。
ジオシステム:土木メンテナンスサービスでは、ドローン空撮と現地踏査をすることで、発電所の健全性を検証し、問題点の特定と改善策をレポートで提出します。また、必要に応じて、最適な復旧方法までご提案しています。
ジオシステム:問題の箇所を特定できている場合は、現地踏査で充分ですが、発電所全体のコンディションを把握するためにも、ドローン空撮は有効です。
ジオシステム:問題の箇所を特定できると、その後の現地踏査もスムーズに実施できるようになります。また、ドローン空撮でパネル下にできたガリ浸食の水路も分かったりします。
ジオシステム:排水設備の機能不全で、濁水が流出してしまったり、パネルの杭が浸食されて傾斜しているなどの問題が、よくある事案になります。
例えばこちらの写真をご覧ください。
ジオシステム:これは「ガリ浸食」と呼ばれ、水みちによって溝ができてしまった事例ですが、ドローン測量をすることで地盤の高低差や勾配が分かります。その結果、水の流れ方や流域も分かってくるので、どのように水路を配置すれば良いのかが分かってきます。
またその際、既設発電所においては、いかに発電停止を伴わず、発電所内に水路を設置するかもポイントで、施工を考慮して排水路を形成するなど、最適な配置提案が重要になります。
発電所でのトラブルシューティング
ジオシステム:このほかにも発電所内ではさまざまな事案が発生しています。
ジオシステム:また、トラブルを未然に防ぐために、現地踏査によるボトルネックを抽出、リスクの洗い出しを行い、その上で排水設備の再設計や、浸食防止機能を有した植生マットなどをご提案しています。
OREM:最後に、再エネ業界にむけてメッセージをお願いします!
ジオシステム:業界全体にいえることですが、発電所内のメンテナンスを電気点検に限定せず、予防的に状態把握することで、自然災害などのリスクを未然に防げる体制を整えておくことが理想です。これを機に、発電所の長期安定稼働のために、土木メンテナンスにもぜひ関心をお寄せいただけると嬉しいです。
対談を終えて
自然災害による被害を目の当たりしたり、メディアで報じられると「太陽光発電所は悪だ」と受け取られることも少なくありません。しかし、発電所でのトラブルは、全国各地に数多く存在する発電所の一例が取り上げられているだけに過ぎず、同じ被災エリアで全く問題なく稼働している発電所も存在しています。
その違いは一体どこから生まれるのでしょうか?
発電所ができるまで、立地の選定や、ガイドライン等の法令遵守、土地に見合った設計、最適な設備の選定など、開発~建設~期中管理とそれぞれの事業段階で留意すべき点はありますが、長期にわたる期中管理こそ侮れません。
だからこそ法令で定められた最低限の電気点検だけではなく、稼働年月、設備仕様、地域特性、天候の変化など発電所ごとの状況に合わせた予防的な対策が重要です。
そして、中長期的な視点で投資回収性を最大化する「再エネのアセットマネジメント」に取り組んでいる私たちだからこそ「被害を最小限に抑えるための備え」や「未然に防ぐための心構え」を発信することで、自然災害などのリスク回避や売電ロスの抑制に、少しでも貢献できれば本望です。
おわりに
今回の記事はいかがだったでしょうか?今後も発電所の事業運営に役立つ話題をお届けし、再エネに携わる皆さまと共に、産業を盛り上げていければと思います!
次回、8月はレインボー薬品株式会社さまをゲストにお迎えし、
「発電所の雑草対策」に関する対談を予定しています。
お楽しみに!!!
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