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映画『ロン 僕のポンコツ・ボット』感想

予告編
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 以前に投稿した映画『TANG タング』感想文でも少しだけ述べましたが、なんとなく似ている部分があったからなのか、本作を思い出しちゃったんですよね。

 というわけで、本日投稿する感想文は『ロン 僕のポンコツ・ボット』です。よければ読んでくださいー。


〈友達〉とは


 見た目も相俟ってか、ちょっとだけ「ベイマックスみたいだな」と思ったのが第一印象。誰とでも繋がれるが故に、人との繋がりが希薄になったり見失いがちになってしまう人も多いであろう今のSNS時代にマッチしたような作品です。僕はSNSをやっていませんが、そんなこと関係無しに楽しめました。まぁもしかするとSNSやっていた方が共感できる部分が多かったかもしれないけどね。


 本作に登場する ”Bボット” と呼ばれるロボットは、やたらと高性能なAIロボット。しかし決して自我に支配されるようなことはなく、今でいうスマホやスマートスピーカーの進化系みたいな存在。なので本作が、スマホと人々との関係に置き換えて観ることができる物語であることは誰でもすぐにわかる。今の科学技術の延長線上にあるような世界観なので、SFっちゃあSFなのかな?  そんな物語において、ぶつけてしまった衝撃でバグが発生するとか、手書きのメモ・付箋や紐などを用いて手作りした特別なアルゴリズムだとか、クラウドにあるデータを人力で操作する等々、SFの世界やその中での常識をアナログな存在や事由がかき乱すという構造が面白さを生み出していた印象です。


 本作の世界におけるBボットの役割は、”友達を作ること”。Bボットを持っているのは最早マストで、その上で各Bボット同士が仕事やプライベート面で共通する人物同士を自動でマッチングし、友達という繋がりをどんどんと増やしていく。最初、学校内でBボットを唯一持っていなかった主人公バーニーは、友達が作れないために孤独な昼休みを過ごす羽目になっていたのですが、この “共通項が無いと友達になれない” という環境は、はみ出し者が排除される現実社会と近似しているようにも見えてきます。

たかだかBボットを持っていないだけの理由で不遇な想いをする主人公に対し、見当外れなフォローをしてくる大人の存在も、観ていてしんどかった。自分の物差しであーだこーだと決めつけてくるのもあるけど、子供を子供だと(弱者を弱者だと)思って接している感じに「ああ居る居る。こういう、子供の社会もシビアだってことをわかっていない大人」だなんて感じられて辟易してくる。当事者のシビアな現実への理解が無いまま的外れな共感を持って歩み寄られるというのも、どこか現実社会とのリンクを意識して作られていたのかもしれません。


 十中八九、「友達とは何ぞや?」と考えさせられる本作。しかしバーニーが持つBボット・ロンは、周囲が提唱するような “友達” 或いは “友達らしさ” の条件とは似ても似つかない要素だらけで、揉め事や上手くいかないことが多々発生する。その上で、”彼らには友情がある” と明示される不思議さがある。友達である理由を言語化できない、明確に形容できないこの事実こそ友達たる所以なのだけれど、この辺は実際に観て楽しんで貰うのが一番なんじゃないかな。

 ベイマックスみたいな無機質な顔、機械的な喋り方、唯一スキン(≒外見)を設定できない仕様……。ロンは、なんていうか ”外面” が無い。形式的、形骸的なものが無いからこそ「友達とは何ぞや」という問いを誰にでも当てはめられるし、それは誰でも映画を楽しめるということにもなる。


 とまぁ、色々能書きを垂れてみたけれど、本音を言うと、とにかく主人公に強く共感してしまうことが多かった!  それに尽きます。バーニーの言動一つ一つを書き出していたら切りが無くなるから全部は語れないけど、特にヤバかったのは、リッチたち幼馴染みに対し「友達じゃないのはわかってる」と言うシーン。字面だけだと冷たいセリフだけど、彼の内面の色んなものが凝縮された一言に思えるんです。親への不満、先生への不満、でも強く出られない。自分がしんどい思いをしているから、その痛みがわかるから、相手にしんどい思いをさせたくない。だから言えない。

友達が居ない、人付き合いが苦手、それは視点を少し変えると、彼自身にも苦手な人はいるということ。ロンが無暗矢鱈にかき集めてきた見知らぬ友人にちょっぴり引いてしまうこともあった。自己肯定感や自己評価が低いバーニーは、他人にとっての自分が “そういう人” になっているかもしれない不安感を抱えている。そんな彼が最大限、相手に気を ”遣わせないように” 口にしたセリフだと思うんです。

「大丈夫、わかってる」という、「“友達” になれるだなんてうぬぼれていない」と言わんばかりの自己防衛が滲み出ています。それは同時に、彼にとって “友達” という存在が如何に特別で、どれほど羨ましいものなのかをも表現しているセリフ。もぉ堪らんよ。その後のリッチの返しも素敵なん だけど、マジで書き切れないから割愛。



 他人の視線や評価・意見に左右されがちな現実を意識させつつ、それによって、時折挟まれるバーニーの一人称視点が活かされていたり、ストーリーもドラマ部分も演出面も、見所いっぱいの本作。人によっては説教臭く感じてしまうこともあるかもしれませんが、とても良かったと思います。


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