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映画『TANG タング』感想

予告編
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 4/14(金)にWOWOWにて”初”放送予定の本作。
18日(火)と24日(月)にも放送予定なんだとか。

あと、アマプラでも昨日から配信開始しているんですって。
もしよければ併せて読んでみてくださいー。


不完全さ


 近未来が舞台の物語。とはいえ、現代の目線で観ても特に問題はありません。スマートフォンやタブレット端末、電話、テレビ、ドローン等々、作品内に出てくるものが、ちょっとばかし現実世界よりは発展・進化している程度です。普段よく目にするような車も出てくるし、服装だって何ら不自然ではない。現代の技術の延長線上にあるぐらいの技術なので、物語の世界観には入りやすい。現実と明確に違うのは、人々の生活に高度なAIを持ったロボットが融け込んでいるということくらい。



 主人公・健(二宮和也)がひょんなことからポンコツロボットのタングを手に入れ、次第にバディのような関係性になる物語。なんとなくだけど、映画『ロン 僕のポンコツ・ボット』(感想文リンク)のような設定。ただ本作は、それ以上に子供向けというか、老若男女を問わずわかり易い内容になっています。セリフや芝居の説明臭さ、感情を誘導しやすいメロディアスなBGMなど、人によっては苦手に感じる人もいるかもしれませんが、その他の明確なメタファーなども含め、おそらくこういった大衆性みたいなものは、どちらかといえば本作の良い部分


 綺麗事に見えなくもないけれど、本作の優しい語り口はテーマや内容も相俟って、まるで絵本を読んでいるかのようです。物語中ずーっと快晴続きだったことや、家の中や街並みがやたらと綺麗だったことなども含め、先述の “若干の近未来感” は、SF色を入れ込むというよりは浄化作業に近い演出なんじゃないかな。……まぁ、こんな言い方が合っているかは自信無いですけど、少なくとも僕は〈浄化〉と形容することにします。作り物のように整理された背景、綺麗過ぎる部屋の中の様子などからは人間味というものがあまり感じられませんが、絵本的な寓話感との相性は好いと思います。

それとは反対に、重要なシーンで屋内の美術をリアルに作ることで違和感を生み出すなど、それまでの浄化作業を逆に活かしていた瞬間があったのも良かったです。


 また、現代とそれほど遠くない近未来感がある本作の中で、銃が一度も出て来ないのも良かったです。舞台のメインが日本とはいえ、銃が出て来てもおかしくないシーンもあったからさ。

その他、過去の事故の描写をアニメ風に表現しているなど、見え方を和らげる配慮が要所要所で施されていたことも大衆性に繋がっている気がします。

劇中、タングのカメラ(視点)から捉えた画角が幾度か出て来ており、そんなタングの “子供っぽい視点” のレベルに合わせた優しい描写だったのかな、と解釈してみると、それもそれで面白い。


 そういった作品全体の柔らかさでいうと、お笑いコンビ・かまいたちの存在も大きい。緊張感あるシーンに二人が映っているだけで緩急になるし、ちゃんと漫才みたいなテンポで会話してくれるから普通に笑えてしまう。作中で一番クレバーなサイコパス犯罪者感を出している山内さんが怖くないから笑、どんな展開になっても安心して観ていられる。そして怖くなり過ぎないというのも、これまた本作の見やすさ。



 前に進めず、心が内へ内へとなってしまっている健と、興味や好奇心がどんどんと外へと向かうタング。単なるポンコツロボットと思われていたタングの、そのロボットらしからぬ〈不完全さ〉という ”ある種の人間らしさ” が際立つことで、健自身の人間らしさというか、その人らしさというものが薄れていることも窺い知れてくる。そして互いが補完し合うことで、立ち止まってしまっていた健の心も動き出すという、普遍的な絆の美しさを描いた温かいストーリーです。

 ロボットの存在というフィルターを通すことで〈人間らしさ〉が浮き彫りになるのも面白さの一つ。近未来という成熟した社会ですら未だ不明瞭で、〈人間らしさ〉や〈自分らしさ〉というものをどこか掴み切れていないままでいる様は、一見するとネオテニーのようでもありながら、実は真逆なのかもしれないとも思わされる。人の幼形の部分を残したまま社会が成熟したというよりは、発展し、可能性や選択肢が増えてしまった社会になったからこその幼形化なんじゃないかな。それはどこか便利になり過ぎてしまったが故に大切なものが薄れつつある現代社会の人々のことを暗に示唆しているとすら感じられてしまう。

 とまぁ、最期の最後に小難しいことも述べてしまいましたが、多分考え過ぎなのでお気になさらず。本作はとても気軽に観られる映画です。個人的な本音としては「一人で観に行くもんじゃなかったかなぁ……」と少し思っちゃいましたけど笑、観終わった後味はとても綺麗で気持ちの良いものでした。


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