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映画『エルヴィス』感想 

予告編
 ↓ 


先日発表された、第95回アカデミー賞®ノミネート作品。。。

作品賞
主演男優賞(オースティン・バトラー/エルヴィス役)
美術賞(キャサリン・マーティン、カレン・マーフィー)
撮影賞
衣装デザイン賞(衣装デザイナー:キャサリン・マーティン)
編集賞
音響賞
メイクアップ&ヘアスタイリング賞

以上8部門でノミネートされた映画『エルヴィス』の感想文ですー。


ちなみに、明日、2/26(日)に WOWOW にて ”初” 放送みたいですよ。

しかも、同じく明日、2/26(日)に Netflix でも配信開始するそうですね。


神格化


 本作は、伝説のロックシンガーであるエルヴィス・プレスリーについての伝記映画。世代じゃなくたって知っている。楽曲も幾つか聴いている。有名どころですが、『A Little Less Conversation』 など、中には普段からよく聴いているくらい好きな曲だってある。

まぁ、未だにCMやらTVでも楽曲が用いられているくらいだから、そりゃ知っていて当然か。でも平成生まれの人間にとっちゃ、九分九厘これぐらいの認識なんじゃないかと思う。だからこそビックリした。

「こんなにスゴかったのか!!!!」と。

「!」マークが幾つあっても足りやしない笑。なので、 本項はエルヴィスの知識が薄い人間の感想文だと思って読んでください。



 ファンの盛り上がり様は最早、狂気の沙汰と言っても過言ではなかった。形容するなら、パニック、狂乱、病的興奮……。しかしながら、 もちろん作られた映像ではあるものの、その異様な乱痴気騒ぎすら納得させられてしまうエルヴィス(オースティン・バトラー)のパフォーマンスが素晴らしい。冒頭から、目が回るような激しく煌びやかなCGやカメラワークが連続している本作の映像に、全くもって見劣りしないパフォーマンス。このパフォーマンスと歌唱がほぼ吹き替え無しというのも、作品全体の力強さの底上げに繋がっているんじゃないかな。

兎にも角にも、主演のオースティン・バトラーのパフォーマンス、そしてバズ・ラーマンらしいド派手な映像の見応えを楽しめる映画です。150分超えの大作なので、人によっては胃もたれを起こしちゃうかも笑。それぐらい濃厚な二時間半でした。



 物語が二の次に感じてしまうくらいの驚きが詰まっていた本作でしたが、それとは別に一つ、意外に感じられたことは、本作がエルヴィス自身ではなく、彼のマネージャーの視点で描かれることが多かったこと。劇中では「大佐」と称されていたこの男の存在が作風に大きく影響していきます。

エルヴィスに手を出したというか、遊園地で彼に専属契約を持ち掛けるシーンはとても印象的。鏡の迷路から外の世界へと誘い出し、観覧車に乗ってマネジメントの話を始める大佐。ここで周囲の人間との高低差を利用し、如何にエルヴィスが高みに相応しい人間なのかと伝えようとする大佐の目論見を映像的に示してくれます。

さらにその後のシーンで、彼らが乗る車が前方の車列を勢いよく追い越していくシーンも、 これから一気にスターの階段を駆け上がっていくエルヴィスを喩えているかのようでした。

目まぐるしく変化する編集の中で、ほんの短い描写でもこういった見せ方が隠されているのはとても面白い。驚きが先行していたり派手な演出に目を奪われがちだったために気付けなかっただけで、他にもいっぱいこういうシーンがあったんじゃないかな。


 中でも一番印象的だったのは、プリシラが家を出ていく時のエルヴィスの様子。まるで胎児のようにうずくまり落ち込む姿は、どこか幼児退行を思わせ、それが母を失った前出のシーンでの憔悴ぶりを彷彿とさせる。それぐらい大きなショックだったのだとわかる表現というのもあるけれど、大佐の視点が多く、あまりエルヴィスの人間的な部分が見えづらい本作だったということもあり、強く印象に残ったのかもしれません。

またプリシラとのシーンで言えば、これだけ次から次へと派手な映像が続いてきた忙しない本作の中で、クライマックスに描かれる車の中での会話が落ち着いた映像になっていたのも感慨深い。他の雑音や雑情報を排除したかのような演出が、彼にとっての大事なものを浮き彫りにさせてくれるような素敵なシーンだった。



 色々な出来事が描かれていくものの、大佐の視点が織り交ぜられることが多く、先述した通りエルヴィス本人の人間的な部分が深くは描かれなかったこともあり、物語が進めば進むほど、どこか彼が(ボヤけると言うと聞こえが悪いけど)アイコン化していくような気になります。

そして訪れる悲しい別れ。早くに亡くなってしまった事も相俟って、より強く神格化された印象です。あまり知られていなかった人間性を丁寧に描くからこそ、改めてその人のパフォーマンスをより深く味わえるような、アーティストの伝記映画によく見られる類の造りとは若干異なる気がします。
だからこそ、よく知りもしないで観に行った僕のようなタイプの人間には衝撃が大きかった。

まぁアーティストの伝記映画だし、パフォーマンスを楽しむとか音響の良し悪しという意味でも劇場の方が良いんだろうけど、単純に作品の世界観やそれらが生み出す独特の雰囲気に耽溺できるという意味だけでも、映画館で観られて良かった。


……IMAX版を観に行き損ねたことだけが悔やまれる。「まぁ話題作だからしばらくはIMAX上映が続くだろう」と高をくくっていた自分を呪いたい。


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