記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画『ラストエンペラー』感想

予告編・リリース情報
 ↓

PG-12指定


過去の感想文を投稿する記事【58】

 過去に書いたものの中でも、学生時代の感想文を晒すのはかなり恥ずかしいものです笑。まぁ大目に見てやってください。

 明日5月7日、それから26日にWOWOWにて放送予定の本作。
今年ニュースにもなった、故・坂本龍一さんが手掛けた音楽も印象的な映画。もしよければ読んでくださいー。


壮大なスケール、絢爛豪華な舞台や衣装、美しい音楽……でも、どこか虚しい


 お飾りのごとく祀り上げられ、時代に翻弄されていく姿は、あまりにも切ない。これでもかと煌びやかなものに囲まれているのに、募るのは虚しさばかり。映る全てのものが形骸化されているような、異様で狭い世界に閉じ込められる溥儀(ジョン・ローン)の、人間らしい心の行方が次第に消えゆくようで、可哀想にすら感じてきます。

総じて、とてもハッピーと言うには難しい物語ですが、ラストシーンのおかげで、なんかこう、救われた気持ちになれました。きっと音楽も相俟ってのことだと思いますが、なかなか忘れられない作品になる予感。


 しかしながら、ラストシーンの解釈についての正解はよくわかっていません(それだけ何回も観られるほどのシーンということでもあるのですが)。まぁ白状してしまうと、自信が無いだけなんですけど。

城へ向かう姿や、玉座を指しながら少年に「昔あそこに座っていた」というシーンは切な過ぎます。一瞬、「もしかして死も近付いた年齢になっても尚、未だに形骸化されたものに固執しているのではないか」とも思ってしまいましたけれど、そうではありませんでした。

その少年に、元皇帝だった証拠として、溥儀は玉座の裏から小瓶のようなものを取り出します。ちょっと大きくなった頃には家臣に酷い仕打ちをしていた溥儀が、たった一匹のコオロギを愛でるような、とても人間らしい心を幼い時分には持っていたことを思い出させてくれる、或いはまだ残っていたと教えてくれる、そんな細やかなアイテム。とはいえ当然、その時のコオロギが生きているわけがない。

少年がふと目をやると、既にそこに溥儀の姿はなく、直後、カットが変わり、すぐに溥儀の死を知らされ、エンドクレジット……。もしかしたらあのコオロギはずっと孤独だった溥儀を象徴するものだったんじゃないかな、なんて。彼自身の最期と、閉じ込められていたコオロギが解き放たれるシーンは重なるように感じます。そしてコオロギが生きている、というファンタジーは、風のように消えた溥儀の存在にもファンタジーの気配を付け加える。実はあの時点でもう死んでいたんじゃないのか、という。死して遺った未練が、玉座に返り咲くことなどではなく、かような存在であるコオロギの、延いては自身の解放だったという意味のシーンのように感じてしまう。


 どこまでが事実なのか云々はともかく、この小さな小さな作り話が、本作をただの歴史劇には留まらせず、僕のような歴史に疎い人間をも惹かせるような傑作へと昇華させているように思えてなりません。


#映画 #映画感想 #映画レビュー #映画感想文 #コンテンツ会議 #ネタバレ #坂本龍一 #WOWOW


この記事が参加している募集

#コンテンツ会議

30,708件

#映画感想文

66,330件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?