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映画『犬部!』感想

予告編
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 本日、4月19日は ”飼育の日” という記念日なんだそう。

日本動物園水族館協会(JAZA)が制定。
理由は「4(し)1(い)9(く)」の語呂合わせから。

ということで本日は、『犬部!』の感想文です。
もしよければ読んでくださいー。


「かわいい」


 実在した動物保護サークルについてのノンフィクションを原案にした映画。殺処分ゼロを目指して保護活動をする主人公ら『犬部』の面々の奮闘を描く青春ストーリーです。

 本作からは、殺処分ゼロのためにあーしよう、こうしようみたいな、政治的とまではいかないけれど、どこか作り手の強い主張を感じる……ように見えて、実はそうでもない。いや勿論、犬猫等ペットの殺処分ゼロを唱えてはいるものの、そのプランはあまり明確には語られておらず、問題提起に対する解決策がフワフワしているんです。「オレは獣医として多くの犬たちを救う」とか「オレは保健所の所長になって現場から変えていく」とか。ただ頑張るというか、根本的な解決への道筋が特に示されていません。これは批判的な意見ではなく、本作の肝はそこじゃないというか……。それ以上により強く感じられたものが他にあるというだけ。



 僕は大学生の頃、動物・ペットに関わるゼミに入っていて、殺処分問題などについて学んでいました。保健所に行き、殺処分までの流れや殺処分が起きてしまう要因など、一時的とはいえ様々なことを間近で見てきました(本作では殺処分の直前までの映像はありましたが、個人的には殺処分の瞬間の映像を用いても良かったのかな、と思っています。人によってはかなりしんどいかもしれませんが、より強く観客の心に刺さったかも)。浅知恵かもしれないけれど、殺処分ゼロに向けた仕組みや制度がどーのこーのと、語ろうと思えば幾らでも語れる……。つまり何が言いたいかというと、”本作だって、そうだったかもしれない” ということ。語ろうと思えば幾らでも語れたに違いない

けど本作では、もっと初歩的というか、シンプルなことがストレートに描かれているんです。劇中で主人公・花井(林遣都)が何度も口にしていた「かわいい」という言葉……。これに全てが詰まっていると言っても過言ではないかもしれません。彼に限らず、ペットとの想い出を語ったり、抱えていた想いを吐き出すシーンが幾度もある。本作の登場人物には、根っこが優しい善人がとても多いんです。捨てられた犬に対して「見ろよ、こいつらこんなにかわいいんだぜ?」という花井の無差別で無慈悲な愛情……。

強引な考えかもしれないけれど、本来であれば、この花井のような気持ちがあるだけで、犬猫などペットの殺処分なんて絶対に起きるはずがない。そんなことすら思わせるほど、本作の登場人物らの動物愛は深く大きい。



 これは個人的な見解(邪推?笑)だけど、ペットショップの描写が少ないのは、作り手の隠れた本音が見えるような気がします。唯一描かれたペットショップが酷い有様で、他にはペットショップの描写が一つも無い。遠回しにペットショップ・生体販売を大枠で批判しているようにも思えたので、「解決策がフワフワ~」と前述はしましたが、この点については非常に良かったと思います。繰り返しになりますが、あくまでも僕の個人的な見解(≒邪推)です。



 普段、映画の感想文で俳優個人について語ることって滅多にないんです。「演技があーだこーだ」はまだ許容範囲かもしれなくても、当人の声質だとか雰囲気だとか、そんな不明瞭な部分で語っても伝わり切らないことの方が大多数ですし……。ただそれでも、本作の林遣都さんは本当に良かった! 「何が」って聞かれると困っちゃうけど、なんとなく雰囲気が良かったw。

たとえルールだったとしても、自分自身の気持ちと折り合いがつかなかったり、理不尽な現実に納得できない時に、平然とルールを無視して自身の信じる正義感に従って行動してしまう我の強さ、もとい、ある種のちょっとしたヤバさがある花井。その雰囲気と林遣都さんが合っているとい うか、彼の雰囲気のおかげで花井のヤバい奴感が成立しているような気さえするんです。

去年公開された映画『私をくいとめて』(感想文リンク)の時もなんとなく感じたのですが、何かの拍子にヤバい側面が出てきそうな危うさがある。でもそれと同時に、心根の真っ直ぐさみたいなものも感じ取れる。その辺の兄ちゃんっぽい喋り方だとか掠れた感じの声だとか、「これが要因なのかな?」と思えるものはあるものの、明確な根拠には繋がらない。そしてその雰囲気が、柴崎(中川大志)との対比にもなっていて、より物語に入り込みやすくなる。



 タイトルもあってか、ペットの中でも主に犬に焦点が当てられがちだった本作ですが、最期のエンドロールで、犬猫以外の動物の写真がたくさん映っていたのも好印象。全編を通して、メインの登場人物たちの心に邪な感情が無く、気持ちの良い青春ストーリーになっていたからか、こういう小さなところすらもより素敵に感じられます。


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