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映画『私をくいとめて』感想

予告編
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 昨日投稿した映画『犬部!』感想文の中で、本作について少しだけ触れたので、今日投稿するのは映画『私をくいとめて』の感想文ですー。


共感(わかりみ)


 「面白い」、「良かった」、「楽しい」……etc.
 鑑賞後の大雑把な感想を言葉に形容するといえば、以上のような言葉が多用されがち。もちろん本作も例に漏れず ”面白かった”、”良かった”、”楽しかった” んだけど、個人的には「わかる!!」が最も的を射た表現だったかと。「理解< 共感」って感じかな。一つ一つの言動や事象というより、その都度訪れる脳内プチ会議(?)の度に「わかる!!」という共感が襲ってくる。


 なんでしょうね……、共感周知とは若干違うんだけど、シーンによっては力みながら「ゔゔぅぅ…」と声が漏れてしまいそうになるほど “わかってしまう”。「悲しい」とか「ムカつく」、「面白い」といった感情ではないんだけど、納得・共感できるあまりに悶えちゃうイメージ。共感出来るから ”面白い”、共感出来過ぎて ”しんどい”。そんな感情が往復する本作は、おひとり様を謳歌していた主人公・黒田みつ子(のん)が、うっかり恋をしてしまったことから始まる物語。逆に全然共感できなかったという人もいるかもしれませんけど、そんな人の意見も聞いてみたいものです。



 人にもよるけど、何か悩み事や考え事にぶつかった時、自身の頭の中で議論を構築するタイプの人間ってのは少なからず居る。どちらかというと僕もそのタイプなのかな。そして本作のみつ子も同様なのだが、その議論の相手——本作ではAと呼ばれていた彼——は、いわゆるイマジナリーフレンドって奴なんだろうけど、姿を現さないというのが面白い。最近、イマジナリーフレンドが登場するような作品に触れる機会が多かったためか、事前情報無しで観ていたことも相俟って、はじめのうちはその姿を探してしまった。「誰と喋ってんだ?」「今喋っているコイツはどこに居るんだ?」みたいに。(僕にとってのAはこんなに丁寧に返答はしてくれないけれど泣、僕自身は彼女と同じくらい、言葉は構築している。……もしかしたら知らず知らずのうちに声に出してしまっているかも笑。)

何よりこのAのキャラ、或いはみつ子との距離感が個人的に超好き。『アイアンマン』シリーズのトニーとジャービスみたい。寄り添っている、でもベタベタしない。とても素敵。しかし彼女はトニー・スタークとは違って、メンタル面がかなり揺らぎがち。



 特に一人暮らしの場合、家の中の様子というのは、その人物の心の有り様と言っても過言ではない気がします。特に本作に限ってはそれがとても色濃かったように感じます。週末に行った体験教室で作った天ぷらの食品サンプルを飾っていたりする辺りからもそんな意図が窺い知れる。(Aが登場しないからこそ、あの部屋を彼女の心情とリンクさせて観てしまったのかな?) だからこそ、多田君(林遣都)が帰った後の部屋の虚しさや静けさが活きていたんじゃないかと思うのです。


 あと、なんとなく “入ってくる” とか “やってくる” 動作が多かった印象の彼女の家の玄関シーンも面白かった。家の中に入っていくという動きが、まるで家の中を、仕事やらプライベートやら外で頑張ってきた(≒気を張っていた?)”彼女自身の逃げ場” のような印象にして見せていた気がするし、だからこそ多田君が家にやってくるという事態が、みつ子の心の中の ”多田君占有率” に比例しているようにも見えてしまい面白く感じられたに違いない。

そしてラスト、玄関を開け、外に出るみつ子の姿が含蓄ある風なのもまた良い。



 本作はスローの使い方も良かった。ノゾミさん(臼田あさ美)のカーターへの献身っぷりを描くシーン等々、エンタメ的に見せるようなスローはコマ送りというか粗目のスローで統一されていて、町の人々の陰の部分が聞こえてくる(想像してしまう)シーン等々、みつ子の心情(主に感情が毛羽立っていたり深く沈んでいたりした時)を丁寧に描く際は鮮明なスローになっていて、スロー映像の感じが使い分けられていた印象。ついつい何でも独り言で喋ってしまう彼女なのに、その瞬間だけは敢えて言葉ではなく、映像だけで表現されていたことで、逆に彼女の心情が浮き彫りになっていたように見えます。


 仕事でもプライベートでも、それとなく上手に人付き合いが出来ていて、コミュ障とか呼ばれるタイプではない。けど、言いたいことを口籠ったり上手く言えなかったり。むしろ上手く言えないことを警戒するあまり、気を使って、“気を使っていない” フリをしたり……。ああ!!わかるわかる笑!!  みつ子が学生時代の友人に会いに行くシーンなんか顕著。多田君とのLINEでの炊飯器のやり取りも同様。もぉわかり過ぎてしんどい笑!!  一旦マイナスに入った思考がぐるぐると滞っているうちに、そのマイナスとは関係ない過去のマイナス(嫌な記憶)までが顔を出す

……とまぁ、挙げたら切りが無いんだけど、だからこそ彼女を応援したくなる。性別も境遇も何もかも異なるけど、同じようなウィークポイントを持つ人間を応援したくなっちゃうのは人の性分。共感する部分が多いほどハマってしまうはず。

 観終わってから知ったけど、小説が原作なんですね。読んでみようかな?


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