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映画『TENET テネット』感想

予告編
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 明後日、8月9日(水)にアマプラにて配信開始予定の本作。

 公開当時の話も混ざってはいますが、よければ併せて読んでくださいー。


Don't think!…Feel!


 さ、ささ、最っ高♡笑。そう、これこれ。“映画体験” ってことで言えば、こういうことも大きいんじゃないかな、と思うのです! 目の前で流れる映像や音をただ眺めているだけじゃ意味が無い。

「なるほど、こういう演出ね」
「はは~ん、上手い見せ方だな」
「ほほう、これは監督っぽさが出ているなぁ」

とか、決めつけや知ったかぶりで上から目線で観るのもまた違う。常に能動的に鑑賞することを心掛け、映画だからこそ可能な表現一つ一つを見逃さないよう目を皿のようにして……でも! 結果的に後手に回らざるを得ないこの感覚!「かなわん」「参った」と言わせてくれるノーラン映画が大好きなんです。単に “わかりづらい”、“意味不明” とは異なる複雑さ。この難解なエンターテイメントを劇場で観られる喜びは、ここ数年でもトップクラス。だって(あくまでも公開当時ですが)本場アメリカでは未だに映画館が休館している州も多く、大コケしたって言うじゃないですか。

 先に述べておきますと、本項にネタバレはありません。つーかネタバレさせたくてもできない。仮にできても理解できやしない。未だに不明点だらけで、こんな状態で感想文をしたためても良いのかすら判然としないくらい難解なのだから。

 そんな僕が自信を持って言えるのは、本作『TENET』がマジ面白いってこと。これに尽きる。そりゃあもう、ここから先は読んでも意味が無いってほどに笑。もし読むならこんな駄文ではなく劇場用パンフレットです。だって、「面白い!」って述べている僕自身が、内容をよくわかっていないんだから(爆)笑。

 オススメは、事前情報無しで一度鑑賞して、それからパンフを読んで二度目の鑑賞って流れかな、と。(あくまで経済的な理由で)普段パンフなんて買わない僕にパンフをお勧めしてくれた友人に、この場を借りて感謝申し上げます。ありがとう!



 さて本題。「一度観ただけじゃ全てを理解できない」と巷で噂になっていましたけど、ノーランの作品に関しては、多少なりとも覚悟していたこと。でも過去の作品でもよーく観たら必ずヒントが映っていたりしたわけですし、何よりノーラン作品を観てきた方々ならば、全てを理解するのはともかくとしても、物語から置いてけぼりを喰らうことは無いと思います。『ダンケルク』(感想文リンク)や『メメント』など、時系列を逆に展開させたりシャッフルさせたりといったタイムラインの複雑さ、或いは『インセプション』や『インターステラー』(感想文リンク)といった、新しい概念や映像表現などなど、“初めての映画体験” に触れることに対する抵抗が少ないはずだから。そういう免疫がちゃんと構築されているに違いない。だからきっと順応速度が違う。もちろん、科学考証なんて二の次なわけかもしれませんけども。

 本作は、“時間の逆行” という、また新たな概念を視覚化し、さらに時間軸が順行だけじゃないからこその複雑なタイムラインで展開されていき、尚且つスピード感も凄まじい。少し(かなり?笑)強引な見解ですが、まるで過去のノーラン映画のギミック(≒魅力)が全部詰まったような一本なんです。



 予告編を観た時に想像していた “時間の逆行” は、時間軸を行ったり来たりの一次元的なものだと思い込んでいたんです。でも実際は、逆行と順行が同時に存在したりしていて、「TENET」の語源でもあるラテン語の回文(SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS)に隠された二面性を彷彿とさせるものでした。

 映像的なことで言えば、終盤のビル爆発シーン。ビルの中腹辺りが爆発する様を逆行で映しながら、ビルの上層部が順行で爆発……、ってコレどーやって撮ったの?!と思わされ、それだけで楽しい。順行の人物と逆行の人物が戦うアクションシーンも同様。そんな驚きの映像だらけの本作は、随所に実際に逆再生させている(と思われる)シーンが織り交ぜられているからこそ、他のシーンにおいても、逆行のように見せかけるシーンのリアリティが増すのだと思います。本物志向のノーラン監督ならではですが、だからこそ「あのビル爆破シーンはどうやって撮ったのか?!」と改めて思ってしまうわけでもある。YouTubeにメイキング映像がアップされてはいましたが、正直物足りない。ブルーレイの特典映像が待ち遠しなぁ。



 当然のことながら細かな部分でも魅力がいっぱいの本作。例えば、インドでビルに忍び込み武器商人のサンジェイ(デンジル・スミス)を襲うシーン。実は彼の妻のプリヤ(ディンプル・カパディア)が黒幕だとわかった次のカットで、プリヤ越しにサンジェイを奥の方に小さく映す……。それまでの二人の立ち位置(手前と奥)とは逆にスイッチさせることで、“実はこっちが黒幕だったんだ” 感を視覚的にも印象付けてくれていた等々、細部の演出までぬかりない。



 まぁ色々述べましたけど、本項ではこの映画の本質はほとんど語れていません。「観てくれ」としか言いようがないのかもしれません。謎解きも良いですが、単に映画に溺れるだけってのも良いものですよ笑。

 ただ、少し気取った物言いで本作を語ることが許されるならば、劇中で出てきたセリフを引用したい。本作は、その一言に尽きると言っても過言ではありません。そのセリフは序盤、研究所の女性職員が主人公(ジョン・デビッド・ワシントン)に、〈時間の逆行〉を説明する。あまりにも突飛で常識外れの概念に困惑というか、どうにか理解しようとしている様子の主人公に対し、彼女が言う言葉。きっと彼同様に、同じく困惑しながらも理解しようと頭を回転させながら見つめているであろう観客に対しても刺さる一言……

——「理解しようとしないで 感じて」——。


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