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映画『バズ・ライトイヤー』感想

予告編
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己とのたたかい


 ピクサー映画『トイ・ストーリー』において、劇中にも登場したおもちゃのバズ・ライトイヤーのモデルとなった映画、という体の作品……ってなんかわかりにくいな。本作の冒頭でも、「アンディが夢中になった映画」として紹介されており、まぁ要するに『トイ・ストーリー』シリーズのスピンオフ作

 しかしながら、『トイ・ストーリー』を知らなくても問題なく観られる映画なんじゃないかと思います。一部登場人物の設定や、スーツや小物の機能に関しては地味にシリーズを踏襲している等々、シリーズを知っているからこそ気付けるポイントなんかも散見されましたが、特段、ストーリーを左右するほどのものでもなかった印象です。……本作で超光速に突入する時のバズと、シリーズで天井の紐に掴まってグルグル回っていた時のバズの姿を重ねてしまったのは私だけでしょうか?笑

 シリーズを知っているからこそ、その知識がフックとなりエモさをもたらしてくれるようなシーンは、個人的には一場面だけでした。クライマックスまで焦らされたせいか、うっかり忘れていた彼の長所を目にした時の「来たーーッ!」感はとても良かったです。



 とはいえ、本作に登場するバズという人間味を堪能するには、シリーズを観ていた方が良いのかもしれません。有能なスペースレンジャーであるバズでしたが、彼のミスで多くの乗組員が地球に帰還できなくなる。どうにか全員を地球に帰すために、周囲の意見なぞ何のそので、危険なミッションに繰り返し挑み続ける彼の姿や言動には、どこか融通の利かなさみたいなものが窺い知れてしまう。有能が故のプライドなのか、そんな素振りに対して、なかなか上手くいかない流れや、マイペースなメンバーのトロさも相俟って、観客の心には小さなフラストレーションが溜まってしまいかねません。

 しかし今改めて考えてみると、バズという男は『トイ・ストーリー』シリーズの時でも “常に現状を打破しようとし続ける男” でした。ウッディら他のおもちゃの意見を一切寄せ付けず、自分を疑うことなく、外の世界へ出ようと必死だった。自身がおもちゃであることを知り、ウッディらと仲間になってからも、仲間の危機を救うためには躊躇することなく行動し続けていた。そんな彼の事を知っている観客にとっては、本作でのバズの行動もどこか理解が及んでしまうんじゃないかな。


 シリーズ一作目のウッディやバズを見ていればわかる通り、本作では独りよがりの正義感の危うさがきっちり描かれており、だからこそバディや仲間の重要性が浮き彫りになる。そして、支えてくれる、手を差し伸べ導いてくれる存在がなかったらどうなってしまうのか、独りよがりの正義感を拗らせたらどうなってしまうのかも描かれているのが面白い。

(先述した通り「アンディが夢中になった映画」と紹介されていた本作ながら、子供には少し早いテーマな気もしますが、)善人にも悪人にもなり得るという、自分自身の二面性に向き合うことになります。そしてそれを、(一部では低評価気味と噂の笑)シリーズ二作目のストーリーを活かして描いているのも良い。単純に上手く繋がった、というのもあるんですが、諸般の事情で急遽作り直された二作目の救済にもなっている気がします。若干の改変によるサプライズ感も良かったと思います。



 そんなこんなを踏まえると、ある種明確な敵は存在しないとも言える本作(自身の二面性と対峙するということを考えれば、“本当の敵は自分自身” なんて気取った言い方もできるのかな? そうなると上記のサプライズに、より深みが出てくる感じがします)。状況や現状への抵抗は本来のバズとも通じる要素であり、そして今居る場所や仲間をホームと感じられることもまたシリーズと同様なんじゃないかな。



 『トップガン マーヴェリック』(感想文リンク)の公開前だったら、もう少し本作の迫力に感動できたかもしれませんが笑、それでも超光速のシーンなど、なかなか迫力があったと思います。また、迫力など大きな面だけではなく、例えばスペースシップ発射時にバズのヘルメットの透明なカバー部分に景色を反射させることで、延いては彼が見据える光景をハッキリと絵にしてくれているなど、わかり易さに繋がるような細かな部分も非常に良かったです。あと、ペンやらワープできるスイッチやら、ピクサーお得意の小物の伏線回収の面白さも相変わらず健在でした。


 最後に改めて。散々シリーズの話をしといて何ですが、本作はシリーズ未見でも問題ないと思います。


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