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映画『トップガン マーヴェリック』感想

予告編
 ↓ 


もう今更というか、だいぶ前の感想文ではございますが、
せっかくだから投稿しようかと。

前半は 映画館の思い出 について書いてあります。
で後半が、映画の感想文ですー。

[目次] からも飛べますが、もしよろしければ併せて読んで頂けたら嬉しいです。



映画館の思い出


2022年6月9日、TOHOシネマズ日比谷、IMAX規格対応のスクリーン4。
上映開始時間は、お昼ちょい前。

本作の公開開始直後(5月末)に、既に一回観に行ってはいたんだけど、その時は端っこの方の席しか取れなかったから、今回は真ん中辺りの席。
Lの15番。


TOHOシネマズ日比谷のスクリーン4……っていうか、IMAXでの鑑賞経験がある人ならご存知の通り、大きなスクリーンの劇場内の座席は、後ろに行けば行くほど高さがあり、そこそこ急な階段を上ることになる。


開場と同時にどんどんと席に着くお客さんたち。平日にも関わらず大盛況。
今か今かと観客が待ちわびる中、客席の階段に人の列ができはじめる。
どうやら先頭を歩く人の歩みがかなり遅く、階段を上る人たちの渋滞ができているらしい。

よく見ると、おそらくご高齢の男性が階段をのぼっている。マスク越しなのでおおよその年齢しかわからないけど。

そして、その後ろには付き添いの女性らしき人(ご家族かな?)が居り、、、、ん? 何か持っている?

女性が持っていたのは、細長い形をしたカートで、そこから繋がるホースのようなものが、男性の口元までのびていた。
それはおそらく、家庭用の酸素ボンベ

本当に色んなお客さんが来るのだと思った……って、え? 僕の隣の席?!


TOHOシネマズ日比谷スクリーン4のL列は、かなり後ろの方の座席。
そこそこの高さの階段をのぼってきたその男性の息は荒い。

しかし、その呼吸音は特に気にならない。どうせいつかは落ち着くものだから。
ただそれ以上に、おそらく僕を含めた周囲2~3mに座る人たちが気にしていたのは……

「(ジー……、ジー…、ジー…、ジー…、)」

という、おそらく呼吸を補助するための医療器の音


白状すると、一瞬、本当に少しだけ、
「(え、もしかして上映中、ずっとこの音が聞こえてくるのか?)」
と思ってしまった。

いかんいかん。これは仕方のないこと。多くの人が平等に楽しむための空間で、こんな考えは良くない。



 いよいよ上映開始。すでに場内も暗くなり、『NO MORE 映画泥棒』のお馴染みの映像が流れ出す。

「(ああ……、でもやっぱりこの音、気になるなぁ……)」

と、思っていたら、その男性と付き添いの女性がゴソゴソと……
そして、その男性の胸元辺りにあるツマミをひねり、「カチッ」という音が聞こえる。

すると、それまで聞こえていた「ジー」という音が消えた。

弱くしたのか? それとも停止させたのか?
いずれにせよ、その男性は、映画の上映にあわせ、呼吸器の補助を取っ払ったのだ。



 ...…本編をご覧になった方なら御承知の通り、本作には、胸が熱くなるような瞬間が度々訪れる。前作を知っているなら尚更に。
そんなシーンが訪れる度、その男性が、喜びや興奮に打ち震えていることがビンビンに伝わってくるんです。それは、ほんの少しの体の揺らぎ、若干ではあるがグッと上がる両の腕、喜びが溢れ出して、つい手を叩きそうになるのをギリギリで抑えているかのような動き、或いはその気配。それらは、真横に座る僕にしか知り得ないほど小さな、けれど明らかな熱量



上映終了、明るくなる場内。
弱々しいのに、どこか力強い、音にもならないような拍手をするその男性。
一方で、まるで「拍手してる場合か」とでも言わんばかりに、サッと男性の胸元のツマミを回す、隣の女性。

「(ジー……、ジー…、ジー…、ジー…、)」

再び聞こえ出した医療器の音。



勝手な想像だけど、
”体に無理をしてでも観に来ていたんじゃないか” とか。
”他のお客さんに迷惑かけたくないから機械を停止させたんじゃないか” とか。
”いや単純に、その男性自身が「映画観る時にこの音、気になるな」と思ったから止めたんじゃないか笑”とか。
”つまりはそれだけ本作を楽しみにしていた、延いては前作からのファンだったんじゃないか” とか。
他にも色々。


「なぜか」と言われると上手く言えないけれど、とても素晴らしい、気持ちの良い映画体験。
真っ暗な中、不特定多数の見知らぬ他人と同じものを観て、感動や興奮を共有するという劇場体験の心地良さ。

たとえば、映画を観終わって、帰りに友達と喫茶店でお茶をしながら映画談義するのはメチャクチャ楽しい。
でも、今回のような出来事も、ある種感動の共有とも言える気がする。

やっぱり映画館は特別なのだと、改めて思い知らされた。


なんだかんだで、一部劇場では未だに上映中です。
劇場での鑑賞がマストと言っても過言ではない、そんな本作の感想文は、ここからです。 ↓ ↓ ↓


映画感想文



「 ”今日じゃない” 」


 これは激熱よね。もう読まなくて良いので、早く劇場で観てください笑。公開から半年以上経っていようがなんだろうが関係ない。根拠は無いけど、ここで断言してやる。近年でも『ボヘミアン・ラプソディー』(感想文リンク)や『グレイテスト・ショーマン』など、劇場で観てナンボの映画は、大手シネコンなどが人知れず上映を続けています。本作も同様。これこそ映画館で観ないでどうするのか!
流石にIMAX上映やドルビー上映は残っていないかもしれないけれど、それでも、絶対に劇場で観る事をオススメしたい。コロナ直撃でずーっと公開延期の連続だったけど、それでも劇場公開にこだわって貰えて本当に良かった。近年でも屈指のエンタメ映画です。


 とはいえ、ちゃんと感想は書きますよ。本作は、36年前に公開された『トップガン』のまさかの続編。その公開当時、僕は生まれてすらいなかったわけで、思い入れという意味ではそれほど大層なものは無い。

けれど、ド頭に流れる音楽、空母からの発着シーン、そしてルースターのルックス、その他諸々。前作を知っているというだけの理由で何故か感動できてしまうこともあったので、生粋のファンには堪らなかったんじゃないだろうか。
またその一方で、本作では過去に何が起きているかが劇中でしっかりと語られるので、一見さんでも問題なく楽しめます。



 本作の醍醐味は、なんといっても “本物感”。 世界最高の戦闘機パイロット訓練学校、通称 “トップガン” が舞台となる本作では、戦闘機を用いた激しい空中戦が拝めるのですが、既に多くの方がご存知の通り、俳優本人らが実際に戦闘機に乗って撮影をしているんです。

CGではないという贅沢さだけでも充分に映像に臨場感をもたらしてくれるのは勿論のこと、しかもそれが戦闘機に乗っての撮影となればただ事ではない。前作とは比較にもならないというか、近年でも屈指の迫力に、ただただ圧倒されるばかりでした。



 近年、ヒーロー映画や大作シリーズ映画などに代表されるように、CG技術の進化は目覚ましく、本物と見紛うどころか、CGだと気付かずに終わることすらある。しかしながら、スーパーヒーローの超人的な能力、恐竜やら何やら未知の生命体、宇宙空間や超常現象等々、挙げれば切りが無いが、スケールの大きなものを目にすれば「これはCGだ」と思いながら観てしまうのも事実。そんな現代において、この “本物感” という映画体験は、何にも勝るエンターテインメント。

いや確かに、物語の中には「ん?」と思う部分も無いことはないし、もっと言うと、全くCGを用いていないわけでもないんだけど、そんなことどうだって良くなってしまうくらいのパワーが本作にはあるんです。


 以上のことは、映像的な価値だけには留まらないんじゃないかとすら思わされる。ある時、「さあこれからどんな熱い物語が、激しい戦いが描かれるのか」と期待していたところに、急に水を差されてしまう。無人機やドローンの存在によって、エースパイロットは不必要な存在になるというのだ。
序盤に描かれたダークスター一つとっても、人の力がいつか及ばなくなることがわかってしまう程に、科学技術は日進月歩で進化し続けている。

そんな中、その事実を認めた上でマーヴェリックが口にする「今日じゃない」という言葉に、腹の底から震わされた。それは本作で描かれたどんな苛烈な飛行シーンよりも。
本作そのものも、この言葉と同様。CGの発展は凄まじいけれど、それが本物を超えるのは「今日じゃない」のだと、本作が示してくれている気がしてなりません。


 序盤のダークスターのシーンは、前作からのファンを喜ばすかのような冒頭シーンの直後に、36年ぶりのマーヴェリックの変わらぬヤンチャぶりを示しつつ、本作における映像や音響の迫力をも同時に描いただけじゃない。

「今日じゃない」と作品全体で語っていながらも、更なる高みを目指し続けているトム・クルーズという映画人をも象徴しているんじゃないかとすら勘繰ってしまいます。



 パイロットの存在は無人機などに取って代わられるんじゃないか、ルースターとの確執はどうなるのか、作戦の事や自身のこれからの明暗……etc.
本作で描かれる様々なことについて、考えるのではなく行動することが重要であることを本作は提示してくれる。

過去を見つめる ”考える行為” よりも、未来に影響を与える ”行動するという姿勢” が前面に出ており、その前向きな雰囲気も本作の徹底的なエンタメっぷりと相性が好い。


 長々と書きましたが、要するに最高なのです。さっきと同じこと言うよ、これは映画館で観てナンボです。


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