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映画『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』感想
予告編
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明日、9月28日(木)よりアマプラにて配信開始予定の本作。
作中に登場する青年・ザックを演じるのは、この映画を制作するきっかけとなった人物であるというザック・ゴッツァーゲン本人。
もしよければ読んでくださいー。
愛おしい映画に出逢う
障がいについて触れる作品は、しっとりし過ぎていると感動ポルノだと揶揄されることがままある印象です。障がいをユーモアに用いることを不謹慎とするのを間違いだとは述べませんが、アンタッチャブルな存在として線引きし過ぎるのもお門違いだとも思います。不都合はあるかもしれないけれど、それを除けば皆同じ一人の人間なんだと知っているからこそ、本作は面白い。
近年の障がい者にフォーカスした作品、或いはメインキャラクターに据えている作品は、カラッとしていて明るい気がします。健常者が手を差し伸べるだとか、壁を越えた絆だとか、そもそも障がい者を弱者だと決めつけたり壁があったりだなんて思い込みが誤りなのだと教えてくれるよう。本作の主人公二人には、そんな薄っぺらい常識は必要なさそうです。
この後も本作の良い所をちまちま並べ立てるつもりですが、大前提として、障がいを持つザック(ザック・ゴッツァーゲン)と、ひょんなことから彼と行動を共にするタイラー(シャイア・ラブーフ)の主人公格二人共が、完全に善人ではないのがとても魅力的で好感が持ててしまいます笑。
人助けや感謝などの善意の鑑が散見する物語を観ていると、「僕はこんなに慈愛に満ちた美しい行いができているのだろうか」と、自身の不完全さを否定されているようでしんどくなってくる。これは僕の性根が腐っているからかもしれませんが、意地悪く言うなら「むず痒い」というやつ。こういった思考は、決して褒められた感情じゃないんでしょうけどね。
でも本作は違う。言動の中に子供らしい無邪気さが混ざっていたり、人間の心の弱い部分(負の感情)からの過ちであったり、人間が持ち得る不完全さが観客に共感を呼ぶからこそ、二人の物語を応援したくなる。そんな二人が「人の善悪を決めるのは何か」について話しているシーンは……もうね、言葉にするのは簡単ですけど、映画の中でこの台詞を聴くからこそ心に響くと思うから、敢えてこの場では述べません笑。ごめんね。
「ああした方が良い」「こうした方が良い」と様々な “べき” を理路整然と突き付け、正しさを振りかざすエレノア(ダコタ・ジョンソン)の存在も良い。後々、そんなエレノアをも味方につけてしまうからこそ余計にね。筏の上で三人、波も穏やかで周囲に誰も居ない感じとかも、彼らの旅の心地よさを表現しているかのようです。
お察しの通り、本作はザックとタイラーの関係性が大きな魅力。序盤、鬱陶しがっていたタイラーに、ザックは自ら歩み寄る。常に対等であり続けるザックに困惑するタイラーにメリットを問われれば迷うことなく「僕と友達になれる!」と言う。面白いとか超越して、もはや可愛い、愛らしい!
そんな冗談みたいな付き合いが次第に距離を縮ませていく中で、タイラーの回想が良い働きをしているのも見どころ。かつてタイラーを愛してくれた兄・マーク(ジョン・バーサル)との想い出……。回想直後に映るザックとタイラーの二人は、回想の中でのタイラー×マークと同じ構図で描かれています。そしてよく見ると、回想の中でタイラーが居た位置にザックが、マークが居た位置にタイラーが居る。そこでのタイラーの優しさは何となく、過去に兄にしてもらったことをザックにすることで、まるで兄への恩返しをしているようにも見えてきます。だからこそ人の優しさが浮き彫りになる、とても心温まる素敵なシーン。
本作には、元来、人が持つピュアネス、タフネスといったものを教えてくれる魅力がある気がしてなりません。以上のシーンに限った話ではありませんが、そんな素敵な演出がいっぱい詰まっています。更に言えば、例えば、純粋なファンの存在やそのファンの気持ちに応えるクリス(トーマス・ヘイデン・チャーチ)のヒーロー性、それに喜び興奮するザックの後ろで、ザックにバレないようにクリスに向かって親指を立てながら共に喜ぶタイラー達の姿…etc. 小難しさなんか一つも無い、シンプルに「素敵」「大好き」「イイネ!」と言えるシーンがあるのも素晴らしい。
クライマックス。誰もが心優しいわけではない中で、ザックの力で一矢報いるのも最高。リアルさには欠けていたかもしれないけど、こういったところはフィクションの良さ。きっと多くの人が大声で「ピーナッツバター・ファルコン!!」と言いたくなるに違いない笑。
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