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映画『MISS ミス・フランスになりたい!』感想

予告編
 ↓



本日4月22日は、ミス日本の日
1950年のこの日に、ミス日本が初開催されたんですってね。

ミス日本に関する映画感想文は見つからなかったけど、代わりにミス・フランスの映画があったので、今日はその感想文を投稿しますー。


ネタバレのタグは付けていないですけど……うーん、ネタバレってどこまでがネタバレなのか……。

一応、ネタバレご注意ください


流行と本質


 邦題の副題通り。本作は「ミス・フランスになりたい!」——そんな夢を持った青年のお話。一昨年公開の映画『Girl/ガール』(トランスジェンダーの少年がバレリーナを目指す物語。近しい部分があるからといって同様のものとして語ってしまうのは危ういのですが……。[感想文リンク])と比較すると、非常にマイルドに描かれていて観易かったです。その上で、ちゃんと登場人物の悩みや葛藤といった心理描写もある。何かと立ち止まる姿が描かれることが多かったことで、勇気ある行動の裏にも弱い部分もあることを窺い知れるから、より一層に主人公アレックス(アレクサンドル・ベテール)を応援したくなる。終盤、ステージで華やかに舞う姿には、まるで映画『リトル・ダンサー』のラストシーンにも似た感動もあったように思います。


 本作は何よりテンポが良い。物語がトントン拍子で進む展開も然ることながら、特に時間経過を示すシーンでポップミュージックを流していたのも面白い。明るい曲調だとか、或いは縦ノリしたくなるような選曲のおかげで、音楽が流れ出したと同時に「おっ!(物語が)動き出したぞ!」という気分にさせてくれる。『Feel It Still』の選曲もGood!(単純に好きな曲だった、というのもあるけれど笑)ポルトガル・ザ・マンのボーカルの声質というか、男性ボーカルながらも女性の声のような高音の歌声が、本作の内容とも少しだけ合っていた気がします。その他、『Girl/ガール』の時のように、トイレ事情だとか陰部を隠す苦労の時などの痛々しさが軽減されていたのも観易さの一つだったのかもしれません。(語弊があるかも……。ついつい比較してしまっているけど、どちらの方が良いということではありません。どうか誤解無きよう。)



 クライマックス。観客席にいた子供と、幼い頃の自分自身を重ね合わせた彼女が口にした言葉、選んだ行動からは、大きく二つの印象を受けました。一つ目は、観客席の子供(≒幼い頃の自分)のような若い子や次の世代の人達の背中を押すような意図。その子供が視界に入ってから口にする姿は、まるでそういう人々に何かを伝えようとしているように映る。物語の中で、「私のように失敗しないで欲しい」と言っていたヨランダ(イザベル・ナンティ)や、自分自身のことを「古い」などと卑下しがちなローラ(ティボール・ド・モンタレンベール)の姿も相俟って、なんていうかそういうシーンとの合わせ技で「もう時代は変わったんだよ?」と教えてあげているようにすら見えてくる。周囲の人々から笑われていた時代とはもう違うのだ、と伝えていたんじゃないかな。


 そして二つ目は、近年の潮流への揶揄。「自分は何者か」を知りたいと口にしてきた主人公は、最期の最後に自分の名前、それも “両方の名前” を手放す。様々な出来事や悩み・苦しみを乗り越え、多くの人との関わりを経て、“自分自身” を形作る何かを見出したかのような瞳をした主人公がそんな行為をすることを “揶揄” と形容した大きな理由は、劇中で何度も出てきた〈流行〉と〈本質〉という言葉に思う所があったから。

——「流行ばかりに目が行くと本質を見失う」——劇中でアマンダ(パスカル・アルビロ)が述べていたこの考え。そして環境問題と美人コンテストを強引にひとまとめにしていたミス・フランスの滑稽さも相俟って、そう思ってしまった。


 近年、ジェンダーへの関心が高まっている。それは良いことだけど、敏感になり過ぎていたり、或いはそういったポリコレの動きを、まるでファッションのように着飾ったり振りかざしたりする一部の人達に向けた揶揄だと感じたのです。身体的性差についての物語はあったものの、恋愛や性自認についてはそこまで言及されていない本作だからこその「アレックスでもない、アレキサンドラでもない」というセリフが活きていたんじゃないかな。

名前をも超えるアイデンティティを見つけたのだ、と言わんばかり。まぁここまでいくと考察・深読みを超えて “こじつけ” や “二次創作” の域に至っている気がしないでもないけど←


 クライマックスのオーディエンスの反応も新鮮で面白かった。ブーイングから始まるものの、会場の雰囲気をひっくり返すほどの喝采が巻き起こる。その光景を、自信に満ち溢れた表情をしながら見る主人公。けど、最期までブーイングと喝采の両方が存在していた。時代が変わったと言えど、これが現実なんだと思い知らせてくれる側面と同時に、こういったハートフルな作品だと、なんだかんだでオーディエンスも含めて皆が喝采に変わっていくようなイメージを持っていたから、とても意外でした。とはいえ、その直後に素敵なラストシーンが待っていたから、気持ち良く劇場を後にできたわけなんだけどもね。


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