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高校生と考える "光合成と呼吸"

九州工業大学さんが2021年の前期日程で出題した大問3の前半を紹介します。出題範囲は単元「代謝」です。内容としては「光合成と呼吸」をテーマです。生体内での代謝を考えるにあたり、代謝の過程は多段階の化学反応であること、反応物と生成物の間に "中間体" の生成と消費が挟まれることを考えます。そして、定義に基づき呼吸商を計算すること、そうした計算を通じて呼吸基質の違いをどのように評価するかを問うきっかけになります。問題は大学が公開しているものを参照してください。九州工業大学さんの問題は "現象の全体をとらえる" 問題としてよくデキていると思っています。

以下の「問題研究」は指導者向けの解説例です。著者が勤務校にて高3生を対象とした校内ゼミで受講生と検討したものを文字起こし・修正したものです。なお、記事中の化学式は以下の記事を参考にして $${\KaTeX}$$ 同様の表記をしています。フォントはローマン体にしました。

問題研究

序論

この問題は 1 つの大問の中で同化と異化、光合成と呼吸をセットで出題しています。小問別にみてみると、歴史的な実験を扱っている、代謝の理解で躓きやすい中間体の考え方を問うている、進化的な視点を背景に生物の特徴の有利性を論述させている、定義に基づいた計算がある、定義を踏まえて段階的に解釈を拡張させています。1 つの大問から入試生物に出てくる様々な問い方を見れる点で、広く深い 1 題と考えます。

<まとめ>代謝を学ぶ心構え
 1. 代謝=生体内で起こる化学反応
  ⇒化学式と化学反応式で表現する
 2. 「代謝」という "大きな物語" は "小さな場面" の積み重ね
  ⇒合成されながら消費される "中間体" を介する多段階反応 

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