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オソーシキ・イン・メリー・クリスマス #パルプアドベントカレンダー2020

時は12月、noteもなんか浮ついた雰囲気につつまれ、施設のあちこちで赤と緑のクリスマスカラーが彩る季節を迎えていた。

そして場所はnote大広場。思い思いの作品を他の人になんとか読ませるべく、本気の連中が自作を携えて訪れる、言うなればメキシコの荒野めいた戦場である。

アロハをまとい、天狗面をかぶった謎の男、通称アロハ天狗もまた、自身の本気の一本を宣伝販売すべく、立ち並ぶスペースの一角を借り受け、著作を並べていたのだが……

「あ、鱗○のおじちゃんだーっ!」
「ハハハハハハハハ違うからねボクチャン!でも天狗は皆良いやつ!覚えていってね!」
「ハーイ!」

すっかり昨今の天狗面のキャラコラの影響で、まったく違うキャラのコスプレと勘違いされ、またnoteで求められるようなキラキラエッセイでもない、人が一杯死ぬ通称マーダーパンクなジャンルのため、販促には苦労していた。

「ああ……インターネットは年明けまで開通しねぇし、サイバーパンクはアプデでクソデカパッチ降ってくるし、どっちりむっちりしたドスケベ体型湿度高め陰キャコミュ障キャラのスケベウスイホンも来ねーし、今年はホントついてねーぜ」

CORONAを呷る。
もちろん、販促が難しいのはクリエイター万人共通の悩みであり、彼だけがなんか集中して割りを食っているわけではない。皆苦労しているのであった。

「一冊頼む」
「へいまいど!……なんだおめーかよ」

愛想よく立ち上がったのち、クソデカため息と共に座り込んだアロハ天狗の前に立っていたのは、映画ブレイドじみた黒ずくめのキリングマシーン男、レイヴンである。

「お前もう二冊買ってなかったか?まあ買うっていうなら出すけどな」
「布教用だ、note文芸部の部長に渡してくる」
「マジで!?いやーアリガタイ!でも文芸部に需要とかあんの?」
「他の面子は知らんが、部長さんは割りとイケるクチでな。多分刺さるだろうし、俺が身銭を切るだけだから誰も損しないって寸法よ」
「おおう……お前結構顔広いのな……いやマジサンキュー!」
「良いってことよ」

と、レイヴンがそっけなく振り返った所で、それは起こった。
葬式の仏具をコスプレした怪人五人が、人々を押しのけ大広場中央へと駆け込んできたのである。そして、note大広場中央を占拠した葬式必需品姿の怪人達は、ポーズを組んで高らかに名乗りをあげた!

「クリエイター仏壇ブラック!」
「クリエイター線香ブルー!」
「クリエイター位牌ブラック!」
「クリエイター棺桶ホワイト!」
「クリエイター木魚ブラウン!」

「五人揃って……」

『お通夜戦隊!ナンマイダー!』

『変態だー!?』

にべもない二人の感想を物ともせず、オブツダン怪人は語る。

「我々の目的は唯一つ、クリスマスを滅ぼすことのみ!邪魔するものは排除する!」
「そのこころは?」
「リア充……性の6時間……幸せな家庭……すべてもろともに滅ぼしてやるのだ!」
「ティピカルクリスマス怪人すぎる、伝統行事かなんかなのかコレ」
「つーかせめて色は分けろや色は。何でブラックが二人いんだよ」
「そーだそーだ、大体ブラウンて何だブラウンて。戦隊物ならせめて使用色ぐらいだな……何でレッドが居ないんだ」

レイヴンの詰問に、お仏壇は胸を張って答えた。

「レッドはクリスマスカラーだからだ!グリーンもクリスマスカラーなのでお線香のやつもグリーンではなくブルーになっている!」
「それの何処がこだわりどころなんだ何処が!」
「クッハハハハハハ!食って掛かってももう遅い!もう大広場は我々のお通夜会場となった!」

確かに、先程までクリスマスの浮ついた雰囲気を楽しんでいた様子は最早何処にも存在しない。その場に居るものは老若男女、如何なる例外もなく路面に伏して鬱屈し、悲嘆にくれている!会場カラーはモノクロ、BGMは木魚に読経が流れ、もはやこの場は葬式会場以外の何物でもないといえるだろう。

「なん……だと……」
「見たか!これが我らの力、『お葬式ムード』!我らの領域に足を踏み入れた者は、誰も死んでいなくてもお葬式雰囲気となり、落ち込み……何もする気が無くなる!」
「それだけ?」
「それだけ」

天狗と鴉はかぶりを振って嘆息した。呆れているのだ。
そんな二人のことは意に介さず、テンションアゲアゲで行くお通夜戦隊!

「そして現場のお通夜ムードがクリエイティブされ、その雰囲気が濃くなるほど我らの力も強まり、やがて東京、日本そして世界全土をお通夜ムードで覆い尽くし今年のクリスマスを中止なさしめるであろう!オマエタチはそこで指をくわえて見ているが良い!」
「イギリスはもう二〇二〇年のクリスマスを中止したが?」
「シャラーップ!たかが一国がクリスマス放棄した程度で我らの大願には程遠い!目指せ全世界お通夜ムード!滅びよサンタクロース!行け皆の衆!手始めにこの東京メガフロート全体を制圧するのだ!」
「ラジャー!!」

仏壇の号令の答え、線香、棺桶、木魚、位牌、四人の怪人が勢い込んで東西南北へと駆け出していく。お葬式怪人が離れるほど、その範囲内の人間はみるみる脱力し、地に臥せっていくではないか!?

「終わった……」
「ドウシテ……」
「今日はもう何もやる気おきない……」

危うし東京!危うしクリスマス!このままお葬式仏具怪人の意のままにお葬式ムードに塗りつぶされるのを待つほか無いのか!?

―――――

大広場から東!クリエイター位牌ブラックが駆け抜ける程に地から位牌が生え、note内はまるで墓標の林立する墓地めいた、しめやかな雰囲気に飲み込まれていく。施設内を彩っていたクリスマスカラーのレッドとグリーンはモノクロに差し替えられ、人々は位牌の隙間で悲嘆にくれるばかり……!

「イーハイハイハイハイハ!ちょろい!脆い!クリスマスに浮かれる凡俗共などこの位牌ブラックの敵ではないわーっ!」
「ちょーっと待ったーっ!」
「何奴!」

ウキウキの位牌ブラックの行く手を阻んだのは、眼鏡にゆったりカジュアルな柔和な雰囲気の男性!その人物はスマホをベルトにセットすると、お決まりのセリフを叫ぶ!

「変身!」

男性の足元に魔法陣が描かれたかと思えば、滝がさかのぼるがごとく噴水し、その姿を覆い隠していく!水がひらけた時、そこにたっていたのは……銀狼モチーフの特撮ヒーローの姿があった!

「ぬぅーっ!?貴様は一体!名を名乗れぃ!」
「パルプスリンガー、モモノ!そしてこれが、新フォーム!」

モモノはベルトのスマホをフリック操作、スピーカーから「ダ、ダ、ダ、ダーン……オーケストラフォーム、スタンバイ」の電子アナウンス音声が発せられる!スマホ発光!連動して装甲も光り輝く!溢れる音符エフェクト!

そして輝きが収まった時、そこに立っていたのは、アーマーを指揮者意匠のフォームに切り替えたヒーローの姿があった!

「オーケストラフォーム!やってやるぜ!」
「こしゃくなぁーっ!位牌ファンネル!」

位牌ブラックの号令と同時に、辺りに生え揃った位牌がロケット噴射からの空中急軌道!幾何学的推進路によるカクついた噴煙跡からいくつもの位牌がモモノに迫る!

「セイヤーッ!」

モモノは迫る位牌を……キック!指揮棒殴打!そしてハイキックからのフルート手裏剣投擲!着弾寸前で爆散していく位牌!爆炎を切り裂いてモモノが飛び込む!位牌ブラックとのゼロインチ格闘応酬!

「ベースブレイク!」振り回されるベースの巨体が位牌ブラックを打つ!
「グワーッ!」
「ティンパニスマッシュ!」落下するティンパニが位牌を包む!
「グワーッ!?」
「シンバルスラーッシュ!」シンバル斬!
「グワーッ!」

怒涛の楽器バイオレンス攻撃によろめく位牌ブラック!その隙を見逃すモモノではない!

「そしてこれが楽器の力を集めての……オーケストラ・ヒット!」

おお、見よ!宙に並びそびえ立つのは……オーケストラ楽器群!楽器の軍勢は次々位牌ブラックに衝突しては激突音でレクイエムを奏でていく!

「アバーッ!ヤ・ラ・レ・ターッ!」

位牌ブラックは楽器もろとも爆発四散!爆発跡に残ったのはひょろ長い板体型が一人!

「成敗!」

突発ヒーローショーに、お通夜ムードから解き放たれた民衆が沸く!

―――――

大広場から西!冠婚葬祭ジャンルエリアで祭事を検討する無辜の民を、棺桶ホワイトが死の予感に覆い隠していく!乱立する和洋折衷の棺桶!土葬桶!吸血鬼の寝床っぽい黒漆塗り棺桶!

「シシシシシシシシ……オマエタチにクリスマスは来ない、エイエンに……シシシシシシシシ」

不吉な含み笑いと共に棺桶群立行為を続ける棺桶ホワイト!桐素材の吸湿性の良い棺桶が逃げおくれた黒ギャルを、二郎オタクを、クリスマスケーキバイトサンタガールを包み込んで捕獲していく!催事場がもはやモルグ置き場ではないか!?何たる非道!

そこに姿を現したのは…黒のつば広帽をかぶった、中世医師めいた服装の壮年の男!

「カッカッカ、今年のクリスマステロリストはちぃーっとばかし、ヤンチャじゃのう?」
「死シシシシ……アンタも納棺されたい……?」
「やなこった、ワシャ医者じゃからの。そいつのお世話にならんようにするのが務めっちゅうもんじゃて。ほらこい筋肉共!縮こまって棺桶に収まりたいか!?」

「サーッ!ノーッ!サーッ!」

老医師の背後から隊列を組んで乱れることなく行進にて乱入してくるやつらは、筋肉である。一糸乱れぬ筋肉の軍勢が、ソリ隊列を組んで通路を行進してくるのだ!そびえ立つマッスル!並び進む大胸筋!男女混合率もハーフ・アンド・ハーフでジェンダーへの配慮も万全!

「シシシ……鍛えていても行き着く先はおなじ……シシャーッ!」

マッスルパレードをポルターガイスト現象に囚われた棺桶が強襲する!彼らもまた棺桶の囚われ人になるほかないのか!?いや、さにあらず!マッスルのミリタリーはなんと……跳び来る棺桶を肩に担ぎ……歓待しているではないか!?そう、ダンシング・ポールベアラーズ行為である!棺桶ダンスマッスル軍団が棺桶ホワイトに迫る!

「プロポーション!」
「グワーッ!」
「ダブルバイセップス!」
「グワーッ!」
「サイドチェスト!」
「グワーッ!」
「モストマスキュラー!」
「グワーッ!」

なんたる流れるが如きマッスルアピールか!死の予感に鬱屈していた人々も溢れる筋肉の熱に浮かされ歓声をあげる!

「いいぞーっ!」
「最高だぜあんたら!」
「次はアブドミナルアンドサイを見せてーっ!」

溢れる筋肉の奔流に成すすべなく揉まれる棺桶ホワイト!

「よっしゃ良いぞオメェら!ナイスバルク!フィニッシュだ!」
「サーッ!イエス!サーッ!」

マッスル軍団はひとり残らず棺桶ホワイトを取り囲むと、一斉にポージングを決めた!

『One Muscle!』

「アバーッ!ヤ・ラ・レ・タ・ーッ!」

筋肉すり鉢の底で棺桶ホワイトは爆発四散!マッスルの中心に転がっていたのは……陰キャのもやしガール!

「ハァッハーッ!メェリィクリスマース!」

ダイハード・マッスルショーに民衆が沸く!

―――――

大広場から南!オープンフードコート!青空望む野外飲食スペース!そこに現れたのは……線香ブルー!
高速田植えマシンめいた速度で自身からポールめいた線香を引き抜きテーブルに植えていく線香ブルー!燃え上がる線香!フードコートはしめやかな線香の匂いに包まれ、奥ゆかしい態度を促す空気感を演出!

流れてくるお線香の香りに、クリスマスのスペシャルメニューを楽しんでいた観衆の顔は見る間に曇り、誰も死んでないのにまるでお通夜そのものの沈んだ表情となり、ついには食べる手さえ止めてしまう……!なんという悪逆非道のおこないであるか!

「……惰弱!脆弱!ひ弱!なり!」

線香ブルーが二刀流めいて振り上げた線香を、焼き上がったターキーに突きたてんとしたその時である!

銀の剣閃が九度ひらめき、線香ブルーのお線香棍を十に分割、ターキーの平穏は保たれた。

「食べ物を粗末にするのは良くないですね、ええ」

線香を切り裂いた銀の流れは、革靴のかかとを甲高く鳴らして、その姿を現したスーツの紳士の手元へと手懐けられていく。

「ドーモ、編集長・キドと申します。お見知りおきを」
「……貴様も我らの行いを阻むか」
「ええ、ええ。クリスマスは皆さん楽しみにしておりますし」
「ではしねぇい!」

線香ブルーのお線香が霞む。突き出された線香をキドはよどみなくスウェー、スライドからの回避!線香は引き戻されることなく、バラバラになって四散した。線香ブルーは新たな線香をおのが身から引き抜く。だが。

「……む?むむむ?」

線香ブルーの四肢が断裂し、バラバラになって地面に落下、そして爆発四散した。跡に残されたのは引き締まった筋肉質の辮髪男のみ。

「失礼、隙だらけ、でしたもので」

線香ブルーの爆発四散と同時に振り始めた粉雪が、正気を取り戻した群衆に歓声と共に迎えられた。

―――――

大広場から北!音楽ジャンル!
突撃轢殺カバめいた質量で邁進する木魚ブラウン!一歩ごとに木魚音と読経が流れ、ロックンロールを、クラシックを、ゲーム音楽を上書きしていく!

音楽の情熱が、衝動が、見る間になえしぼみその場にいた者達は崩れ落ちて床に視線を向ける!そして徐々に音楽は絶え、木魚が、読経が辺り一面を覆っていった……

「ポークッポクポクポクポク!!これが音楽をも上回るお通夜の力!この勢いで東京も、日本も、お通夜にしてや……ギャーッ!」

BOKUBOKUBOKUBOKUBOKU!

頭上から降り注いだ銃弾の嵐が木魚ブラウンを文字通り木魚として打ち鳴らす!アグレッシヴな木魚ビート!

被弾からの蜂の巣ダンスを踊る木魚ブラウンの前に降り立ったのは……ざんばら黒髪にゴシックロリィタ、性別不詳で両手には花ではなく、銃!アサルトライフルとショットガンの取り合わせ!

「ハァイ、オレ、バッドプール。親しみを込めてバプちんって呼んでもいいよ?」

余裕たっぷりのアイサツを噛ますバッドプールに、木魚ブラウンは怒りの木魚ビートを打ち鳴らす!

「何がバプちんよ!おまえもお通夜にしてやろうか!」
「Ohシット、今日はそんな気分じゃねーよ!クリスマスだしさぁ!」

木魚ブラウンが手榴弾めいて投げまくる子木魚を、バッドプールは撃つ!撃つ!撃つ!小爆発が音楽エリアを赤く彩っていく!爆炎を銃弾が貫き、そのまま木魚ブラウンを強かに穿つ!

「サ~イレンナーイッ、ホーリィナーイッ♪」
「グワワワワワワワッーッ!?」

クリスマスソングの鼻歌に、木魚ブラウンの悲鳴と木魚ビートが入り交じる阿鼻叫喚ロックンロール!床に臥せっていたミュージック命達も、過激なビートに熱を取り戻していく!

「イェアアアアアアアアアア!盛り上がっていこうぜ!!」

二丁を投げ捨て、バッドプールが新たに構えたのは……ロケット・ランチャー!銃弾の嵐に翻弄されふらふらの木魚ブラウンに、過たずロケランの弾頭がまっすぐ突き刺さった!

Kabooooooooooom!!!

爆発四散!跡には樽めいた百貫ガールが黒焦げで転がっていた。

「さあしょぼくれてんなよおまえら!今日は楽しいクリスマスだからよぉ!」

発砲の熱溢れるガン・ビートに、会場は熱狂!うなだれていた者達も手に楽器を取り戻し、クリスマスを奏でていく!

―――――

視点は戻ってnote大広場中央、黒ずくめへと飛来する木魚グレネード群!

「南無、散!」

レイヴンが振るう長大なククリ、マシェットの二刀流交差斬撃波が、まとめて木魚の群れを仏壇ブラックへと凪ぎ返す!広場中央を覆う爆発の華!しかして、その紅い花弁の内より、ニードルファランクスめいた勢いでお線香が襲来!ゲルググ薙刀回転にてこれを防御する黒男!

「こんな巫山戯た見た目のテンプレクリスマス怪人の癖にバカに強いな……」
「クッハッハハハハハハ!ナンマイダーのリーダーであるこの俺は、場のお通夜ムードの深さに応じて強化される!すでに大量の人間をお通夜ムードに叩き込んだ俺はもはや無敵よ!」
「そいつはご丁寧にどうもな!」

投擲!猛禽類めいた鋭さで襲いくる山刀を、仏壇ブラックは過たず観音開き防御!次の瞬間、懐に入ったレイヴンは、音速の壁をぶち破る拳の一撃を放つ!破裂音と共に後退する仏壇!だがその表面には傷一つ付いていない!なんたるお通夜ムードによる同調圧力強化効果か!

「チッ、本当に頑丈なやつだな」
「へいへいお前の力はそんなもんかー?いいからさっさとヤッチマイナー」
「あいよ」

天狗の声援?に横柄に答えると、鴉は腰に帯びた赤黒い大太刀、その柄に手をかけ、抜刀。柄を握り込むと、レイヴンの輪郭は血を流し込んだ水墨画めいて剣気に揺らめき、大太刀の刀身は鍛鉄されたかの如く輝く!

「あー!柱だーっ!」
「えー、あんな人いたっけ?」
「きっとまだ出てきてない柱なんだよ!」
「すごーい!そうなんだー!何柱ーッ!?」

レイヴンは子どもたちの悪意ない勘違いに若干肩を落とすも、いい大人としてそんな無垢なる思い違いに厳しく否定するのは避けて、青眼の構えを取る。だがその時の仏壇ブラックの狙った先は……なんとそのちびっこ達であった!飛来する位牌ファンネル・ミサイル!

「疾ッ!」

剣閃!赤黒の兜割りがあやまず位牌ミサイルを叩き割り、返す刀で起爆よりもなお早くミサイルの断片を彼方へと打ち払う!空中で標的に届かないままに、紅蓮の花が咲いた!インタラプトの瞬間、盛り上がるちびっこ達、そして苦悶する仏壇ブラック!察する天狗!

「おっ、そういう仕掛けか!だったらちょっくら手伝ってやるぜ!」

天狗は仏壇ブラックの猛攻をことごとくインタラプト斬するレイヴンを横目に、自作の在庫を山と抱えてちびっこ達にダッシュ!そして自作をテンポよく渡してく!

「良いかいちびっこ達!鱗○さんの友達の、天狗のおじちゃんの一生のお願いだ。今渡した本をパパやママやお兄さんお姉さんに渡して、今すぐ読んでもらってくれるかい?」
『は~い!』

仕事が早い!そして天狗のお願いとあってか、ちびっこ達はすぐさまへたり込む保護者へ元へと駆け込み、託されたパルプ小説の読み聞かせをねだる!お通夜ムードを物ともしないちびっこ達のおねだりに根負けして、渡されたパルプ小説を読み始めた……!

「柳生暦37564年!?」
「東洋一の大魔窟、町田!?」
「柳生一族に復讐を誓う生き生首、千利休!?」
「柳生ベイダーって誰!?」
「町田に足を踏み入れて初めの一太刀で住民の八割が即死!?」

なんと、見る見る内に大広場のお通夜ムードは晴れ、その場にいた保護者達はちびっこ達と並んで配布されたパルプ小説を食い入るように読み込んでいく!苦鳴をこぼし、絶叫する仏壇ブラック!

「ぐわああああああああ!!!雰囲気が!雰囲気が変わっている!?きっ、貴様一体何を!」
「へへ……もちろんオレ様の傑作も傑作の……こいつよ!」

アロハ天狗は手にした、辞書めいた厚さのパルプ小説を掲げた!

『【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】だ!完結済み!物理書籍も刊行!の大傑作よ!』

「ばっ、バカな……そんな小説なんかに、俺達のお通夜ムードが……!」
「残念だったな」

這いつくばる仏壇ブラックの元へ、介錯人めいて黒衣の男が立った。その手は高く大太刀を掲げ、今にも介錯をなさんと構えている!

「そしてコレが俺からのクリスマスプレゼントだ。メリィクリスマス斬!」
「ア、アバーッ!ヤ・ラ・レ・タ・ーッ!」

両断。赤黒の灼炎をまとった一太刀は過たず、仏壇ブラックを二つに分けて爆発四散。跡にはどうにも、モブとしか言いようがない男が煤けて転がっていた。

「南無阿弥陀佛……とっとと帰ってスンスン哭きながら寝ろ」
「ちっ、チクショウ……こんなどう見てももてなさそうな奴らに……俺は諦めないぞ……来年こそは絶対にクリスマスを……」
「ぱぱー♪」
「パパ?」

元仏壇ブラックを見下ろす二人の元へ、正確にはアロハ天狗の元へ、おしゃまなちびっこがトテトテと駆け込んできて、彼の足へと飛びついた。

「お~♪どうしたのベイヴちゃん?パパお仕事だからお家でいい子にしててねって約束したね?」
「おむかえ!」
「あらまぁパパうれしいなぁ~、じゃあケーキ買って帰ろうか!」

さっきと打って変わって子煩悩な姿を見せるアロハ天狗の姿に、元仏壇ブラックは油の切れたロボットめいたぎこちない動きで、レイヴンの方へと向き直った。

「……実子?」
「そうだ」
「奥さんも?」
「いる」

残酷な現実を前にして、元仏壇ブラックはムンクの叫びめいたポーズをとった後……真っ白な灰になって、スナァーッ……っと黄昏空へと散っていった。
彼のその後を知るものは、誰もいないという。

【終わり】

 本作は #パルプアドベントカレンダー2020 飛び入り参加作品です。

これはなんですか?

これは元々パルプアドベントカレンダー2020用に用意していたプロットをちゃちゃっといい感じに仕上げつつ、なんか今年の年末、めちゃくちゃ苦労しているっぽいアロハ天狗氏に向けたちょっとしたプレゼントのつもりのなんかである。

なんかチープな雰囲気がスゴイのはニンジャスレイヤーを宣伝するブーブスみたいなノリでありおおよそ意図的な代物なのでどうかご容赦いただきたい。

そして作中で宣伝されていた【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】は実在し、noteで読める。第一話は以下から読めるぞ。

わざわざ俺が8000字越えのトンチキ胡乱小説を書いて応援するだけのパワがあるしんの小説であり、noteを代表する傑作のうちの一本といえるだろう……(カクヨムにもあるけどネ)というわけで、ここまでちゃんと読んだ猛者は存在だけでも覚えて帰って、あわよくば一話だけでも読んでいただきたい。損はないぞ、マジで。

ついでにお望月さんのレビューも合わせて置いておくな。

そして、作中に登場したパルプスリンガー達のアドベントカレンダー2020作品はこちら!

こうして油断なく他の人の宣伝も行っておき、配慮とかそういうのをしておくという寸法よ…!

Q.なんでアドベントカレンダー参加者全員出演じゃないんですか?
A.リソースが足りなかったのだ……

これは真面目にそうで、キャラクターイメージがしっかりかたまってた人しか出す余力がありませんでした。6人出すだけで8000字とかかかっており、年末の時期に24人の出番は流石に作れなかったんだぜ、まことにもうしわけがない。

オレもネタにしろ!という蛮勇溢れる方は別途言ってくれればまたなにか書くかもしんまい。できないかもしんまい。

というわけで今回はここまで、またな!
メリー・クリスマス!

現在は以下の作品を連載中!

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ロボットが出てきて戦うとか提供しているぞ!

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