鏡飆〈かがみ〉の技代記〈テクノクル〉
天涙はいよいよ極まってきた。横殴りにざあざあと叩く滴は、撥水加工を施した飛貂のコートの上からでも痛みを伴う程で、イカィツ・ウメアはその瑠璃色の瞳孔をきゅっと細めた。
視覚でも〝歯〟覚でも、視える世界は漆黒の高密度な泣雲の塊で、ウメアに対してこっちに来るなと哭いて拒絶をするのだった。
この泣雲海を、横断する。
それも飛行機で。
空前にして、これから続く全ての飛行機乗りへと繋がる大業績になるだろう――もし成功したならば。
蒸気船による泣雲海横断は百エカントの昔に達成さ