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逆噴射小説大賞2019-第3週

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逆噴射小説大賞2019-第3週に投稿された作品をまとめています。
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記事一覧

シーユーレイター・アリゲーター

地下は薄暗く、足元は湿った土でぬかるんでいた。 メキシコとの国境に壁がある。その壁の下に…

Yugaming
4年前
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一つ目巨人の眠る地で

「準備はいいか?」 「ああいいよ」 遠くから馬蹄の音が聴こえる中、 俺の問いかけにグレイの…

しぼり
4年前
5

要塞監獄の星/白銀の塔

「なああんた、一つ聞いてもいいか」 男は相手の返事を待たずに一方的に話を始める。 「この星…

明石
4年前
15

ガンアンドコフィン

 校舎に入った瞬間から何か様子がおかしかった。  教師も生徒も誰もいない。  中学校が無人…

有茂竹刀
4年前
6

侵略活動の軍資金に!即金融資いたします!

「困るんだよねェー、ダークバルメロイさんさァ」  黒くマッシブな鎧姿の男が、いかにも落ち…

13

根源のヴィリャヴァーン

 わたしたちは誰もがヴィリャヴァーンの輝きから生じ、その根源の炎を胸に抱きながらこのエ・…

35

グッバイ、オールドマン

「親父ィ、死んでくれ」  銃口が私のこめかみに向けられていた。  5年ぶりに再会する息子の姿。  酷く痩せこけて骨と皮ばかりの相貌。その中で縦に裂けた金色の瞳だけが爛々と燃えるようにギラつき異彩を放っている。  蹴破られた書斎のドア越しに倒れている、頭部を撃ち抜かれた部下の死体を見るにどうやら伊達や酔狂ではないらしい。 「なっ──」  連続する銃声。  3発の弾丸が、私の頭蓋に叩き込まれた。反動で椅子から転げ落ちる。 「……」  が、すぐさま無言で立ち上がり、片手

MCCS -大規模犯罪対策室-

Case1. 刑事と魔女見習い、出会う  発達した科学は魔法みたいなもんだと大昔の作家が書いて…

無名翁
4年前
4

方舟と根絶やしザメ

 ギルガメシュとエンキドゥはそれはそれは広い船の甲板を歩いていた。周りには陸地さながらに…

届かぬ星は目の前に!

『西暦1996年。世界人口は三分の一を失い、人類の繁栄は……』 「ああ、どうもイイ感じの書き…

パウケン
4年前
7

デッド・アンド・アライブズ

 その日は不幸続きだった。 「こっちだ! 早く!」  少年に手を引かれるがままにシノ…

しかな
4年前
5

ドラゴンリトルシガー1カートン3ミリ

 出勤前にタバコに火をつけたら、景色がファンタジーになった。 「は?」  俺は混乱したが…

復路鵜
4年前
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ひとみ崩壊

私は、ひとみの瞳が好きだ。 ひとみは、とても澄んだ瞳をしている。 ひとみは、キスをするとき…

優まさる
4年前
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鏡飆〈かがみ〉の技代記〈テクノクル〉

 天涙はいよいよ極まってきた。横殴りにざあざあと叩く滴は、撥水加工を施した飛貂のコートの上からでも痛みを伴う程で、イカィツ・ウメアはその瑠璃色の瞳孔をきゅっと細めた。  視覚でも〝歯〟覚でも、視える世界は漆黒の高密度な泣雲の塊で、ウメアに対してこっちに来るなと哭いて拒絶をするのだった。  この泣雲海を、横断する。  それも飛行機で。  空前にして、これから続く全ての飛行機乗りへと繋がる大業績になるだろう――もし成功したならば。  蒸気船による泣雲海横断は百エカントの昔に達成さ