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侵略活動の軍資金に!即金融資いたします!

「困るんだよねェー、ダークバルメロイさんさァ」

 黒くマッシブな鎧姿の男が、いかにも落ち込んでるのを見るのは気分がいい。
 銃の代わりに金銭貸借契約書を突きつければ、大抵の連中はうなだれる。
 そしておれはそういうのを仕事の生きがいにしている。
 宇宙ギャング系大物侵略組織の大幹部・ダークバルメロイがこうなってしまったのにはわけがある。
 日本征服を足がかりに地球侵略を企むやつらというのは、いまや掃いて捨てるほどいる──そうした連中の大部分が、資金繰りに苦しむ。
 なぜか? 理由は二つだ。
 ひとつは、資金源の貧弱さだ。どういう理由であれクソみたいな理由で悪事を始めて、それをポケットマネーで支え続けられるほど大富豪は多くない。
 ふたつ目は組織としての貧弱さだ。人間をダース単位でブチ殺せる能力を持っていても、そいつに払う金を稼ぐ能力に欠ける組織はザラだ。
 結果、悪の組織と呼ばれる連中は、担保なしでカネを融通するおれたちのような闇金を頼り──悪の組織だからと踏み倒そうとする。
 おれはそういう連中にカネを払えと言うのが仕事だ。で、法律を意に介さない連中には、暴力による追い込みが一番だ──ヒーロー崩れには最高の仕事と言えた。

「すいません、オーガファイナーさん……月末まで待ってもらえませんか」

 ダークバルメロイが鎧をガシャガシャ言わせながら絞り出したのが、そうした言葉だった。
 話にならない。

「あんな、困るんだよ。ウチはトイチでやってんの。オタクら相手にゃ破格の利子だよ。これでジャンプ三回目。月末まで待ってたらまた利子が膨らむだろうが。払えんのかって。それとも今度の作戦で使う電磁砲カタに入れる?」

「いやちょっとそれは無理です」

「無理かどうかじゃなくて払うか出すかって聞いてんだよ!」

 おれは足元に転がっていた怪人用のイスを蹴っ飛ばした。まだ現実が見えてないらしい。

(続く)

#逆噴射小説大賞2019