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【連載】日本文化のはなし

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日本文化の色々を語る連載。とりあえず隔週月曜更新にします。現状、毎週月曜日は割とこういう系の話をしています。月曜日に知的になる人。
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#日本文化

【器のはなし】ビーチコーミングで得た陶片を観察して盛り上がろうよ

先日ビーチコーミングで入手した陶片の紹介をする。なんか、シーグラスのノリでシー陶器って言うらしいね。ふうん……よし、やっていくか。 これらは、ほとんど一箇所の浜で入手した。あまりにも取れるので驚いた。たくさんあったとはいえ、模様らしい模様がバッチリ残っていたりアクセサリーになりそうな大きさだったりというのが少なめな気がするから、同じ場所で良いものをさらっていった先人はいたんだろうと思う。使いにくそうな高台部分も多く残っていた。 とりあえず時代順に並べてみる。左から昭和〜大

【器のはなし】滝といえば鯉じゃろがい!(ちょっと浮世絵の話も)

先日、オモコロチャンネルで「個人的”恐怖症”発表会」という動画が上がっており、そこで恐山さんが葛飾北斎の『諸国瀧廻り』が怖いと話していた。特に「木曽路ノ奥阿彌陀ヶ瀧」が怖いそうだ。 動画内で「構図がおかしくない?」と触れられており、それはその通りなんですが!この上の円形の部分は、滝の真上の水が溜まっているところを描いたものらしく!そう考えると葛飾北斎が試みた表現方法ってすごいところまでいってるんだなー!ってなるよね。私は何かしらの展示でこの解説を見て、一気にこの絵が好きにな

【器のはなし】白って二百色あんねん

好き好きの器を大自慢する回。今回は、江戸中期染付輪花縁なます皿。一目惚れと言っても差し支えないほど瞬時に購入を決めた。一客しか無かったし、傷モノだから安かったし。 まず注目すべきなのは白磁の部分が多いところ。江戸期の白磁は高い傾向がある。真っ白は高価がち。おそらく良いものしか残されていない。現在ではダメなのは出回ってない。白磁を美しく作るのは難しいからそもそもの基準が高かったのだろう。ここからは私の想像なんですが(栗原さんの口調です)、あまり良くないのは絵付けして誤魔化して

【器のはなし】手持ちの中で多分一番出来の良い器を見せながらずっと話す

手持ちの中で、多分、一番出来の良い器。江戸中期染付蛸唐草文なます皿。金継ぎされているから骨董品としての価値がすごくあるわけではないし、これよりもっとすごいものが美術館や博物館に行けば見れるわけだけど、それでもやはりこれは美しい。 江戸中期の伊万里だから古伊万里にカテゴライズされる。「古伊万里」というのはざっくり言えば江戸時代の伊万里焼のことで、人によっては江戸時代の作で出来が良いもの(上手のもの)をだけ古伊万里と言ったりする。伊万里焼は誕生して割とすぐに全盛を迎える。それが

【器のはなし】六歌仙全員の名前覚えたはずなのに、いつの間にか言えなくなっている。

今回はどう〜しよっかな〜と器を眺めていた。モチーフごとに器を出していくのも良いな、花とかかな。というか前に何をやったかな。覚えてないけど多分まだやってないだろう。で、決まったのが人物図縛りである。 というわけで、今回はいろんな人たちを見ていこう。なんか集めてみたら個数多かったからサクサクと進める。 六歌仙六歌仙、人生のどこかの段階で全員の名前覚えたはずなのに、いつの間にか言えなくなっている。小野小町と在原業平はみんな言える。お坊さんが二人、喜撰法師、僧正遍昭。あとは文屋康

【古文のはなし】『土佐日記』を読む。出発から浦戸まで。

土佐日記を読もう。教科書に載ってるところの次からやる。マナペディアを見ると、二十四日まではもうやってるらしい。 原文は青空文庫より引用。訳は他のサイトなどを駆使してなんとか自分で付けるが、読みやすさを優先して厳密な現代語訳はしない。勉強というよりは読書ですな。 ○ 二十五日、国守の館から招待状がきた。行くと、一日中遊ぶようにしてそのまま夜が開けた。 >「呼ばれて至りて日ひとひ夜ひとよ」ここ気持ちいい 二十六日、昨日からいる館で宴会し、下男にまで褒美を与えた。楽しくな

【浮世絵のはなし】山鳥が鳥界のナルキッソス扱いされている

何をするか決めかねているうちに今日がやってきた。てことで今日はこれです。 新聞錦絵。東京日日新聞第三号!これの文章の部分をやる。翻刻は、高橋克彦『新聞錦絵の世界』より引用。 先に錦絵を見ておく。画面右から原田きぬ(女性)、嵐璃鶴(男性)、窓の外に商人。原田きぬは網手模様の着物に乱れた帯をしている。嵐璃鶴は三つ橘亀甲文の着物。団扇を持っていることと網手模様から夏の暑い日のようだ。手前にたばこ盆があり、嵐璃鶴がキセルを吸っている。江戸時代の喫煙率めちゃたか。 ○ さて文章

【浮世絵のはなし】「新聞錦絵」「錦絵新聞」どっちなんだ問題

新聞錦絵の回。ちょっと調べたので雑談を。前回のをなんとなく見ておくと少し良いかもしれない。 絵と文字が一体化していると躍動感が出る前回は東京日日新聞を取り上げたが、東京ではこのあと郵便報知新聞など他の新聞紙も同様に新聞錦絵が作られる。東京日日新聞は絵の中に文章が溶け込んでいるが、郵便報知新聞は文章が絵と分かれている。 郵便報知新聞の絵を描いたのは大蘇芳年という人で、実は月岡芳年のことである。高橋克彦は著書『新聞錦絵の世界』で、東京日日新聞と郵便報知新聞の構成の違いについて

【浮世絵のはなし】小鳥かと思って外を見たら先日死んだ義弟だった

新聞錦絵の回をやろう。本を読んだらやろう。ちゃんと調べたらやろう。と思っていたが、ついに本は読み終わらず今日を迎えてしまった。なので今日は「絵を見る」方に振り切って鑑賞する程度の足の突っ込み方をする。 ところで「新聞錦絵」を呼んでいたが、一般的には「錦絵新聞」と呼ぶようだ。Wikipediaがそう言っているからきっとそうなんだろう。このWikipediaページがちゃんと調べられてそうだったから、大学のレポート提出で参考文献に挙げてもいいだろと思ってしまった。 初めて錦絵新

【浮世絵のはなし】首都圏で一時間に一本の電車て。

浮世絵第二弾。個人的に文明開化の浮世絵が好きなので、開化絵を。本当は新聞錦絵をやろうとしてたんだけど、そのことをすっかり忘れて本を読んでなかったから次回以降に回すことにした。 浮世絵って江戸時代のイメージが強いけど明治もまだまだ作られていて、題材が西洋化しているそのギャップがとても好きなのよねえ。西洋髪の婦人とかドレスの婦人とかとっても好き。あと赤の色が鮮やかになっているのも良い。明治っぽい。明治は赤で決まる。 今回の出典は国立国会図書館デジタルコレクションがほとんどです

【浮世絵のはなし】こんなのもう推しグッズじゃん。ファン心理を分かってる。

ようやく回ってきた浮世絵回。普通に趣味でデータベース見て回ってたら、載せたいのが多くてブックマークがごちゃごちゃになってしまった。それくらいデータでみれる作品が多い。実際にみた方がいいものもたくさんあるのだけど、取り寄せてみる〜みたいな気軽さで触れられるもんでもないので行ける時に行くしかない。 高橋克彦『大江戸浮世絵暮らし』では、「浮世絵は芸術ではなく日常のものである」と繰り返し書かれており、なるほど確かにそうである。今回は、その中でも特にワクワク感の強い「玩具絵(おもちゃ

【話芸のはなし】「まんじゅうこわい」「寿限無」あたりは普通に会話に登場するからすごい。

さて、話芸の話をするつもりで一つだけ論文を読んだが、電車内で読んで眠くなること何度もあり、正直あんまり覚えてない。思いつくままに進んでいこう。探り探りの回。 日本の話芸と聞いて初めに思いつくのは「落語」だろう。落語家が何となく身近なのは『笑点』があるからだと思う。落語家は落とし話をする人たちであって、大喜利だけをする人たちではないのだが、『笑点』があるために逆に大喜利の方が有名になっている。大喜利は寄席の最後に行われる余興のことで、三題噺、謎かけ、都々逸などが行われる。

【観察記録3】はま寿司の器を見に行きました。【どことなく絵本みがある】

今やもう回っていない回転寿司の器を調べるシリーズ、久々の新作である。続編待ってた。私が。誰も待ってなくても私が待ってた。 さて、今回ははま寿司だ。知らないうちにロゴが変わっていた。ちょっとまろやかな雰囲気のある文字で、以前より文字が暴れていない。最近はいろんなロゴがシンプルな方向に行っているみたいだ。流行りが。というのは今やる話ではないのでここまでにしておこう。 まずは、寿司皿から。今思ったけど、回転寿司の皿って大きさどれも一緒だよね。微妙に違うのかもしれんが、だいたい4

【和歌のはなし】己惚れをやめればほかに惚れ手なし

田川水泡著『滑稽の研究』を読んだ。タイトル通り滑稽についての本で、滑稽についての理論と日本文化の舞踊、和歌、文学、絵画における笑いを取り上げる。理論の部分は、滑稽とは美だとか醜だとかちょっとよく分からなかったが、文化の方は読んでいて楽しかった。 前々からなんだか江戸時代が好きなんだよなあと思っていたが、それは町人の文化だからかもしれない。それまでの貴族・武士の文化から、町人の文化へ移り気軽な感じが出ているのか。上品な遊びから下品なものになると教養があまり必要なくなってくるか