花柳 朱音

徒然なるままに、書きたいことを書きたい分だけ。Twitter→@akane_hanay…

花柳 朱音

徒然なるままに、書きたいことを書きたい分だけ。Twitter→@akane_hanayagi filmarks→ https://filmarks.com/users/riririririko56

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最近の記事

世界でいちばん透きとおった物語

SNSで評判だったので購入。 誰しもが明確な感想を述べていないのに誰しもが最終的に驚愕している文言に惹かれて。 どんなどんでん返しかどんな感動があるのかと思い読んでみたけど…(いい小説は世の中にたくさんあるのでハードルはなかなか高いぞ) へえええええええええええという感嘆が止まらない。ラストですべてがわかったときの鳥肌たるや。すごい一冊に出逢ってしまった。 SNSでも内容についての評論が全くないのも納得。 この作品を読んでいない人に薦めるとしたら、もうこの一言し

    • 自己愛についての走り書き

      自分のことはわりと好き。いや、謙遜しました。大好き。自己肯定感も、おそらく高いほうだと思う(比べるものではないが)。 でも負の感情に苛まれたり、周囲の負の出来事に振り回されたりすることが多い。怒ったり悲しんだり。 自分のこと大好きだし、自己肯定感高いんだけど、芯がぶれぶれだなぁと思ってた。その矛盾が更に自分を追い詰めた。あれ?これって自己肯定感高くなくないか?と思った。 とある女優が「自分のことが大好きです」と発言したニュースをみた。そのニュースに対して、世間は絶賛だった

      • コンビニ人間

        テンポよくて好き。 コンビニアルバイト歴18年の古倉恵子。 幼少期から“異色”だった彼女は(本人は何とも思っていないが周りが“普通”を求めるので“普通”でいようとする)、マニュアル化され尽くされたコンビニの作業が大好きだった。 働いているスタッフ達の話し方をインストールして組み合わせて“普通”の話し方をし、求められるであろう作業をこなし、明日のバイトの為に体調や身なりを整え眠りにつく。 新しくアルバイトとして入ってきた白羽は、いかにも「世界に守られて依存している癖に世

        • ままならないから私とあなた

          どちらも、考え方が違う二人を描いたストーリー。 「レンタル人間」…一目惚れした女性がレンタル業をしていると知り、人間同士のありのままの関係の素晴らしさを教えようとする男。元体育会系出身で、男同士の裸の付き合いや会社の先輩とのなんでもさらけだせる関係に陶酔している。 「ままならないから私とあなた」…小学校からの幼馴染であるユッコと薫。薫は効率的で先進的なことを重視する一方、ユッコはそういう技術的なことの中では”人間らしさ”はない、その中にこそ美しいものがあると考える。 共通点

        世界でいちばん透きとおった物語

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        • 読書記録
          8本

        記事

          どうしても生きてる 朝井リョウ

          様々な「生きづらい」のオムニバス。 それぞれが苦しいんだけど、ある意味で“健全な“私たちは死ぬことを選べない。選ばない。 だけど現代日本人の中で、この層は結構いるんじゃないか。 それぐらい私にも心当たりがあった。 作中のエピソードはもちろん私自身が味わったことでもないのに節々に「あるある。似たような出来事」となる。 共通なのはこの本の題名にもなっている“どうしても生きてる“ということ。 時間は残酷にも過ぎるし、今の境遇を打開するほどのパワーも熱意もそこまで不幸でもない。だ

          どうしても生きてる 朝井リョウ

          この部屋から東京タワーは永遠に見えない 麻布競馬場

          現代風刺画。 今しかわからない風刺画。 数年後読んでも、おもしろく感じないはず。 東京コンプや学歴コンプや容姿コンプを全部同じ大鍋に入れてぐつぐつ煮込んで、もう汁なくなりましたよーってやつを小皿に分けて調味料で味変した小話集。 全部じゃないけど9割方のエピソードに“きつぅ〜”ってなった。なぜなら私も彼らと同じく“きつい”から。 「東京」というものに夢みて、怠惰と少しの努力で生きられる地元を「退屈」だと見下し、自分は日本一の都会で華咲かせるんだと、それだけの能力を持ってい

          この部屋から東京タワーは永遠に見えない 麻布競馬場

          「能動的に生きる」か「受動的に生かされる」か

          対岸の火事だったコロナが日本に上陸して早一年。日常は一変した。 働き方改革に拍車がかかり、ソーシャルディスタンス、3密、おうち時間などの新しいワードもすでに耳になじんできた。 リモートワークによって、満員電車に乗ってよーいドンで開始する日本の風物詩ともいえるようなワークスタイルも見直されるようになった。 とはいえ、パソコンではなく対人で成り立っている職業はなかなかそれも難しい。飲食業、観光業、接客業等がコロナの向かい風を受けた最たる業種だろう。経済面に於て。(第一線で働

          「能動的に生きる」か「受動的に生かされる」か

          センセイの鞄 川上弘美

          「大人の恋愛」というものを読みたくなったときに、真っ先に頭に浮かぶ小説のひとつ。 「アラサー」なんていう年代がまだおこちゃまにも思えるほどの恋愛だ。 40を手前にした主人公の女性・ツキコと、かつて高校時代の教師であった男寡の「センセイ」の恋物語。担任でも恩師でもなかったセンセイとは思い出がないどころではなく、再会の初めはむしろ誰であるかさえも思い出せなかったほど記憶から遠のいていた、いち国語担当であった人だった。 共通の酒飲みというふたりは、共通の居酒屋で、ゆっくりと時

          センセイの鞄 川上弘美

          ヴァニティ 唯川 恵

          20代後半から30代前半の女性たちが織り成すアンソロジー。 もう若いだけではなく、それぞれの人生を歩んでいっている彼女たちの恋愛や人生における悩みを描く。 結婚して家庭をもった女性がいる。キャリアウーマンとしてバリバリ働いている女性もいる。背徳感に苛まれる恋愛に落ちた女性もいる。なんとなく可もなく不可もない夫と一緒になった女性もいる。仕事は順調だけど恋愛はからっきしな女性がいる。やりたかったことをやれずに食べていくために現在の仕事についている女性がいる。 環境は様々であ

          ヴァニティ 唯川 恵

          ショートショートBAR 田丸雅智

          ベースはとあるバーを舞台に、そこに訪れた客とマスターの、お酒を交えたショートストーリー。他にもすこし奇妙なショートストーリーが何本か。 「世にも奇妙な物語」を思わせるような雰囲気の小説。テレビと違うのは、ぞくっとするような怖いエピソードはひとつもなく、すべてのストーリーがほんわかしたりクスッと笑えるような終わり方をしていること。中にはファンタジックな物語もあったりして、気付けば自分もその世界に入り込んでしまい、読後はその不思議なバーの客の一人になっていたかのような気持ちだっ

          ショートショートBAR 田丸雅智

          ゼツメツ少年 重松清

          リュウのお父さんの最後のセリフ 自分の子供に一番伝えたいことは、生きていてほしいんだ。 この一言にすべてもっていかれました。 重松さんの小説はすべて読んだわけではないけど、そこかしこにあの作品に出てきていた登場人物だ。って気付いたときは、私も長らくあっていなかった大切な人達に再会したときのような喜びがあった。幸せであってほしいと、幸せであってくれれば私が嬉しいと思った。 「生きることは大切だ」なんて、もうずっと言われ続けている抽象的で輪郭のない論理を押し付けるつもりは

          ゼツメツ少年 重松清

          モンスター 百田尚樹

          数年前に読んで衝撃をうけた小説のひとつを、このタイミングで読み返してみた。私は世間一般でいうところのアラサーである。初めて読んだときと、どう受け取り方が違うのかと気になって再読した。 結果から言うとかなり違った。 初めて読んだのはたしか20代前半だったと思う。お察しのとおり大した努力もせず、それなりの身なりを整えていれば男性(特に年配のおじ様)からちやほやされる年頃だ。(もちろんその年頃でも努力をしている女性はたくさんいる。私が若さにあぐらをかいて努力をしてこなかった"側

          モンスター 百田尚樹