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#人生を変えた一冊

自我を手放した先にあるのは楽園か?ー約束された場所で(村上春樹)

自我を手放した先にあるのは楽園か?ー約束された場所で(村上春樹)

この世にいるのが辛い時、私たちはきっと、誰かから愛されたり理解されたりした記憶で生きている。でもその受け皿がもしなかったとしたら?
そんなことを考えさせられるような、オウム信者たちの自己喪失のプロセスがわかる一冊だった。

被害者側の体験を記したアンダーグラウンドとは違い、信者側(実行犯よりオウム内で地位が低い人々だが)のインタビュー。
『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』も良かったが、本書の後半に

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絵画のような美しい人生ーSTONER(ジョン・ウィリアムズ)

絵画のような美しい人生ーSTONER(ジョン・ウィリアムズ)

例えば私の人生が波のようなものだとしたら、寄せては返すその波に抗って生きていきたいと思う。

ウィリアム・ストーナー。
彼は、波と歩調を合わせるように、波と共に生きてきた男と言えるだろう。
決して折れることはないが、それゆえに自分自身の置き場所を宿命的に変えられない、そんな印象を受けた。

多くの人がそうであるように、彼は自らの人生に期待をした。ただ、期待をし、望んだ分だけの責任については、負わな

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限界を超えた先にあるものーねじまき鳥クロニクル(村上春樹)

限界を超えた先にあるものーねじまき鳥クロニクル(村上春樹)

読み終えて、しばらくはこちらの世界に帰ってくることができなかった。
読んでいた時、息子が熱を出してしまったり、家の中が少しゴタついていてわたし自身が疲れていて、極限状態だったことも影響しているかもしれない。
まるで泥の中を這いつくばって歩いているように感じた。出口が見えず光も見えない、ただそこにあるのは自分以外の人間が作っている外の世界が何故かわたしの人生を作っているという絶望だった。

ねじまき

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あなたを閉じ込める「ずるい言葉」(森山至貴)

あなたを閉じ込める「ずるい言葉」(森山至貴)

「あーあの人そういうとこあるよね。でも、悪気はないから。」

そんな風に、あなたの違和感を無かったことにした経験はないだろうか。
わたしは、無数にあるのだ。

中途入社した会社で、初めての上司から言われた言葉は忘れない。
『雑用は全てreinaさんに任せればいいから。ゴミ箱みたいにぽいぽい彼女のメールボックスに入れていって。』
彼女にとっては、
わたし=ゴミ箱、雑用といってもお客様対応ごとなので、

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