メンヘラ・バー
バーで働いている。なんか今や普通になりつつあるけれど、私、源氏名「すずか」は、メンヘラ・バーで働いている。メンヘラとは、相手に異常に執着する、自己愛が強いコミュニケーション障害を持った美少女の呼び方だ。
現代人には、「メンヘラと付き合いたい」という人間が存在する。主にインターネット掲示板の牛のクソどもが言っているイメージがあるが、実際にそれに悪影響をうけて、『メンヘラ・バー』に興味を持ってご来店されるお客様もいるのだ。
すずか「もうね、すずかね、お金なくてね、お店も追い出されそうでね、死のうかと思ってるの、ぴえん、」
客「すずかちゃんみたいな美少女が死んだらぜったいゆるせないよ!」
すずか「だからね、きょうはね、酔っちゃいたいきもちなの、ヘラる」
客「よーし、オレ、シャンパン入れちゃうぞ!」
こんな毎日である。「すずか」は「メンヘラ」であるが、内実の私はただの小金稼ぎの卑しい人間だ。「メンヘラ」という属性を付与するだけでこれだけ儲けられるなんて、私たち従業員もオーナーも、ウハウハである。
この前、一日体験にきていた「りさめろ」は、精神を病んでいることが分かり、というのも監視カメラの映像から精神障害者手帳が見えていて、出入り禁止になった。精神障害者は扱いが面倒くさいうえに、客への態度がカスなことが多い。オーナーは監視カメラでしっかり観察する。少しでもおかしな行動、通院が確定したら即座に解雇だ。
客が名乗る職業は「精神科医」「薬剤師」が際立って多い。実際は全く免許なんて持っていないのに、SNSでオーバードーズをしているメンヘラちゃんのツイートを覚えて、処方箋の名前を出して、私たち「(ニセ)メンヘラ」を誘惑するのだ。この前も
すずか「えー薬剤師さんなの!すごい!」
客「まあね。エチゾラム(デパスの後発医薬品のこと)あげようか?」
すずか「え~うれしい‼ありがとう‼」
その後、即座に警察に通報し、客は薬事法違反で現在は東京拘置所にいる。
このように平和かぎりない職場である。メンヘラに人は惹かれる。
髪型は黒髪前髪ぱっつんロングヘアか、派手髪から選べる。
もちろん『メンヘラ・バー』が本職である人間は少ない。
キャストは、土木作業員、地底アイドル、歌手志望のギター持ち、バンドマン、などさまざまである。
オーナー曰く、『メンヘラ・バー』を本業にするようなやつはカスだ。そんなやつ精神障害者だ。
とのことだ。「すずか」は中学2年生から『メンヘラ・バー』キャストなのだけれど、誰にも知られていない。
オーナーは、「すずか」の旦那だから。
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