すべてが、興冷めであった。 2023年の12/31、詰る所大晦日は、日曜日であったし、(日曜を週のはじめとする異端の他にとっては)、都合が良すぎるのではないか。ずうっと都合の惡い姿勢をこちらに続けていた、と思っているのは騾だけかも知れぬが、そういう姿勢で居た筈、否。その安楽椅子に坐って水タバコをふかしていたのに違い勿い者が、気紛れに銘柄を變えるように、 2024を。つくった(つくるという字は、須らく大仰であるから、ここでは平仮名で記す。)のでは勿いか。そう、考えた。
近代近代そこら辺に、飢えて死にそうな男がいた。 畑となる土地はあれど、植物の種や食べられそうなものもない。 その者はたいそう貧しく、物を買いに行く金さえなかったのである。 そこへ、種を売りに、男が訪ねてきた。 「さあご主人、種はいかが、種はいかが。」 しかし主人は明日の食うにも困っているのであったから、とうぜん断った。 「せっかく来てもらって申し訳ないが、うちは見ての通り貧乏、すかんぴんなのだ。帰ってくれ。」 種売りは、慈悲にあふれた皺を額に寄せ、 「それならば、お
バリヤード。私はポケモンのバリヤードになりたい。 決してふざけているのでなく、尊敬しているからだ。 1、他人を羨まない バリヤードはポケモン赤・緑、所謂初代から登場したモンスターである。 タイプはエスパー。エスパータイプは強い、というのが常識だった当時において、恵まれたタイプを得ていた。 が、しかし。エスパーの攻撃力を左右する「とくしゅ」というステータスにおいて、ユンゲラーという、別のポケモンに大差をつけられて負けてしまっているのだ。 これは人に置き換えると、同級
ぐるぐると思考をめぐらせてしまう。 頭の中の環状線に乗ったが最後、降り時をついつい、見失う。 とある人の本を読んだ。 感想をべら、べらと話したいけれど、作者に直接感想を投げることができない。矢文の矢の鋭利さが、自分には分かりかねる。 目に触れるかもしれぬ、というのは慎ましさか、只の自意識過剰か。 書き損じはがきが又、メモ帳とノートに溜まっていく。 言ってはいけない、書いてもいけない主張が、ぐるぐる廻る。 眠っても眠っても、環状線はルート通りで、どこかしらの路線のように、
「人は、女ごきぶりの悲しみなんて、ついぞ知ることがないまま生きるのですよ。」 やわらかに髪を乱す、明朝の清潔な風に、その声を聴く。 地面が歪むけがらしい暑さに、涼しく凛とした風が疲れることもなく寄り添う。 その人は、私の、ごきぶりの世界の中でもっとも美しく、徳のたかい者であった。 人などの持つ、通俗の汚さとは無縁であった。 今日のような日には、など陳腐な枕詞で、あの人の影と、その陽光をも制するほどにまぶしい、明かるさが思い返される。 どこかで最高気温が出
ある日の丑の刻のことである。 私が酒の酔いも少し醒めた心地で、退屈の煙によごされ乍ら、煙草屋の店先でぼうっ、として居ると、後ろから、 「兄さん、退屈しのぎのカフェインはいかが。いかが。」 と、声がする。振り返ると、疲れ切った様な、如何にものん兵衛らしい背広の小男 が、立っている。ほとんどきちがいのように、いかが、いかがとうるさい。 「しつこいな、」 とぴし、と言うと、とたんに涙をうかべて、 「買ってくだせええ。おいらはクビになってしまって、今日のツケさ
ほとほと、厭になる。 文字は、書いた瞬間から腐っていく。図書館の本が読まるる度に汚れていくように。 青魚の如く疾く劣化す。 少し格好を付けて言って了えば、文字とは「花」である。 誰にも名を知られず、勝手都合に人様のベランダへ種を飛ばし、芽を出す無名の草。 図鑑にも載せる価値の無い花。 咲くには長けるけれども、結実することは稀で或る。徒花。 此の考えを延ばすと、図書館とは森、森で或る。 其の森には、様々、方々の草、果実、花どもが生い茂って居る。 艶やかな
至高の肴を見つけた。 方々の食物をつまみ乍ら吞んできたが、遂に一つの答えに辿り着いた。 能書きが長い性分もここらにして置いて、結論に入ろう。 「失敗」で或る。 具体例を挙げやう。 己の失敗、たとえば番組の途中で寝て了った、寝坊で約束を破った、等。 とくに、人間関係での失敗は最上品で或る。 其の時は腹を掻っ捌いて詫びたく成るやうな事でさへ、終わって家に着くと、 机の上に既に用意された夕食の如く、大変な美味に変はる。 失敗を赦せるほど傲慢には成れない私が見つけ出
零 電話 石川県七尾市で、娘が居なくなった、という旨の電話が事務所に掛かってきた。 同じ子を持つものとして、また探偵として。必ずや見つけ出す、と決めた。 美濃の事務所から約三時間ほど車で北上した所に、伝え聞いた屋敷が或った。 時刻は夜の六時。 大邸宅である。窓にはステンドグラス、瀟洒な邸宅だ。 ノックをすると、嗄れ声が応えた。 「お電話いただいた、大塚探偵事務所の大塚です。」 と云ふと、ドアが開いた。 出迎へたのは、白髪の紳士で在った。紳士は深々と頭を下げ、
キャラクター紹介 たばこ税が上がらないワケググ子「旦那のたばこが臭くて、子どもにも害あるし、いっそたばこ税が10万%にならないかな~、東大クン。」 東大クン「なぜそうならないのか知っているかい?」 ググ子「えっ!?」 東大クン「まずこれには日本の歴史から説明する必要があるね。たばこ産業というのはもともと、日本政府のもとで行われてきた。日本たばこ産業という名前が知られているね。しかし、郵政民営化などの流れの中で、たばこ産業も『民営化』する、つまり一般企業にやらせよう、と
藝術、物種と云うものは、吐瀉物であると思ふ。 口に入れて、嚥下する。消化されてゆくものは自らの身体から抜け落ち、散っていく。 消化しきれない脂もの、味の濃いもの、ヒト科ヒト族以外には毒にさえなるもの、 手違いで通ってしまったアレルゲン、方々の寄生虫なぞ、肚の中に這入るるが消化され得ぬもの。 そんなものが溢れて、口から手から脳から足から、じわり、と分泌される液、それこそ藝術の真髄で或る。 藝術とは、血生臭いもので或る。背目せざるを得ぬような、汚物である。 何か異物が
助産士は、時に思いもしない所から、拠り所を産んで呉れる。 それは素晴らしい子供を取り上げて下さるかもしれないけれど、出てきたものは腐った嬰児かもしれない。 しかし誰かがこう、口を広げる役割を担わなければならない。 そうでもしないと、大きく成り過ぎた塊は皮膚を搔っ捌いて、血まみれにして了う。 塊は気づかぬうちに、否、気付かない素振りを続ける限り、どんどんと大きく成る。どんな形で、姿で、中身なのか。外からでは絶対に分からない。 ダイアモンドでさえ、尿道に入って仕舞えば只の苦
AM1:00。 「122番、ひと箱」 ふ、と手がとまる。はてな、と客が小首をかしげる。 「560円です。」 そう言って、バーコードをスキャンした。 客は自動レジで会計を済ませ、帰っていった。 高くなったなあ、と思う。ひと箱で560円もするのか。 あれ、なんで自分は、吸ってもないものの値段なんて覚えているんだろう。 振り返って「122番」と称されたものを見た。 ああ、そういうことか。 と内心でつぶやいて、合点がいった。 長方形の箱に、山を模したーいや、たし
「夕子さんって、小説を書いているんですね。」 「龍」と名乗る柄シャツの男は言った。 「読みましたよ、精神、腦外科医批判、巨大敵を相手にして、人気がない。 夕子は「ははは、、」とマニュアル通りに気が違った癈人の相手をした。 一見、八九三のクランケかと思わるるた。 ハイビスカスのシャツに、東洋由来の網目の細かい着物を着て居る。 ただ。一軸に「小説」と云っても。一様ではない。 異なる世界で奮闘するもの、異なる正義と対峙するもの。列挙に暇が無い。 夕子は所謂。貧しい出
ある国に、3人のきょうだいがいました。 いちばん上のお兄さんは、じぶんの国の海を守ろうとかんがえて、海兵隊になりました。 次のお兄さんは、いちばん上のお兄さんを見て、じぶんは国の空を守ろう、と考えて、空兵隊になりました。 ふたりを見ていたいちばん下の弟は、体がよわく、いつも病院に通っていました。 「お兄さんたちみたいに、元気にはたらかなきゃ。」 が、口ぐせでした。 やがて、となりの国とのせんそうが起きました。 3人のきょうだいは、1人をのこしてあとは死んでしまいました。
つまみ、というのは元来、アルコールの空腹のために、何か食べてしまう つまみ食いしてしまう、という物であった気がする。 しかし、この頃は強い酒を飲むために、半ば惰性で食べている。 もはや、腐れ縁の友人のように、切っても切れない関係になってしまった。 色々なおつまみを試してきた。 まえがきが長すぎる。吞兵衛の悪いところだ。紹介しよう。 エントリーナンバー1、しめじとほうれん草のヤーツ。 どうも私のような酒飲みともなると、油ものや肉ばかりで、胃腸が弱ってきてしまう。そんなとき