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助産

助産士は、時に思いもしない所から、拠り所を産んで呉れる。
それは素晴らしい子供を取り上げて下さるかもしれないけれど、出てきたものは腐った嬰児かもしれない。

しかし誰かがこう、口を広げる役割を担わなければならない。
そうでもしないと、大きく成り過ぎた塊は皮膚を搔っ捌いて、血まみれにして了う。

塊は気づかぬうちに、否、気付かない素振りを続ける限り、どんどんと大きく成る。どんな形で、姿で、中身なのか。外からでは絶対に分からない。

ダイアモンドでさえ、尿道に入って仕舞えば只の苦痛で或る。

塊を取り除けるのは、近くに今いる人かもしれない。縁もゆかりもない他人かもしれない。縋れるよすがは、笑える藁は、存外、自生していたりする。

助産の人を援助するのも、へそを曲げて体裁上は嫌いと言うのも、それぞれ。共に堕ちて行く人もある。

援助だとか互助だの謳う人にだって、出来ない手術はある。
国際テロ組織にだって、出来る手術はある。

たらい廻しにされて、果てに堕ちた先がユートピア、なんてこともある。
天地を逆転して仕舞えば、あら不思議、弱点属性の攻撃が、ふと平気に、却って得意になることさえしばしば。

逆も然り、ではあるけれど。

すべての、誰かの助産士に捧ぐ。

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