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現代への変化を描く。-アナ雪からのメッセージ-

つい先日、アナと雪の女王2を観てきました。
個人的にはすごく面白くて高校生の時にアナ雪にどハマりしたことを思い出して、少し幸せな気分です。
今作では2人の成長した姿が描かれていて、その成長について沢山の感じることがありました。

そしてアナ雪の1作目も2作目も物語の中に込められたメッセージがとても素敵だなと思い、その解釈を個人の観点から書いてみようと思います。

※説明の便宜上、各ディズニー作品のネタバレを踏まえて話を進めます。
予めご了承ください。

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1作目がヒットした理由

1作目の公開が2014年。
まずはアナと雪の女王が何故あれほどまでにヒットしたのかから考えてみましょう。
1番の要因はやはり歌なのではないかと思います。
音楽の力は大きく、「生まれてはじめて」、「Let it GO」など数々の名曲が生まれました。

しかし、あえて音楽以外の側面に目を向けてみるとどうでしょう。
そこには時代に合わせて変化していくディズニーの挑戦的なメッセージが散りばめられていたように思います。

①自発的なプリンセス

初期のディズニープリンセス(シンデレラ、白雪姫など)を見るとどれもプリンセスは待ち、王子様が迎えに来るという展開が目立ちます。
しかしながら、アナ雪に登場する2人のプリンセスはどちらもその佇まいとは異なります。
エルサは内に抱えた恐怖から自ら飛び出し解放へと向かい、
アナもまた、姉を救うために自ら馬にまたがり冒険の旅へ出ます。

女性に限らず、あらゆる人の社会進出が叫ばれる現代、
ディズニープリンセスですら自分から目的のために進んでいく姿が描かれていたのはすごく印象的でした。

②逆手に取ったディズニーのお約束

これまた初期のディズニー作品の特徴として、出会ったら王子様と結ばれて幸せに過ごします。
アナ雪ではむしろ出会ってすぐに結婚?!考え直せよと言ったやり取りがあり、後に婚約者に裏切られるという展開が待っています。 

ある意味、これまでのディズニーの否定とも取れる演出ですがこうした細微な変更点こそ時代の流れを取り入れ常にアップデートを繰り返している証とも言えるのではないでしょうか。

③真実の愛の表現

これもディズニーのお約束の要素で、これまでの作品は最後には王子様とのキスで結ばれる様子が描かれてきました。
しかし、アナ雪ではアナとクリストフが結ばれるものの、それが真実の愛と表現はされていません。

凍った心を溶かしたのはお互いに思い合う姉妹の愛情であったことがアナ雪では示されています。
この表現もこれまでの積み上げてきたものをより現代的にアップデートした解釈のように思えます。

真実の愛とは何も男女の間にのみ成立するものではない。
ジェンダーの垣根を越えた本当に親しきもの同士に成立するものであるという解釈ができます。
過去作と比較することで細部に新たな発見ができるのもアナ雪の魅力の1つであるように思います。

④絶対悪の不在

エルサはこれまでの作品で言うヴィランに近い存在でありながら、決して悪の存在ではありません。
アナ雪では特にエルサの心の葛藤が描かれており、その悩みが視聴者の共感を生みました。
見ている誰もが人には言えない悩みや不安を抱えている。
そんな不安を乗り越え、解放へ向かう姿に多くの人が感動したのではないでしょうか。

こうした様々な形で表現された現代版ディズニー精神がアナ雪という作品として完成されたからこそ、あれほどの人気を呼ぶ作品になったのだと僕は考えています。

2作目の個人的ポイント

さてここからが2作目の話題になります。
以下、アナ雪2のネタバレ100%ですのでご注意ください。

上記で説明したようにアナ雪には、
ディズニーから現代に生きる人へのメッセージが込められていたと説明しました。
ならばこそ、何故2をやる必要があるのか。
1作目で表現できたことはたくさんある、安易に続編を出すことで意図していた表現がブレてしまわないか、正直不安でした。

見終わった今、その答えは1作目の段階では描ききれなかったより成熟した女性像の提示やアナとエルサにしか表現できないメッセージがあったからなのではないかと僕は感じています。

①アナの成長

1作目からの成長はアナが1番描かれていたように感じました。
1作目の時点で彼女はエルサのことは気に掛けているものの、積極的な理解を示している訳ではなく、新しい変化に胸を躍らせるまだまだ子供な面を見せていました。
その一方で1人でエルサを救う為に勇気を持って進んでいくことのできるキャラクターでした。
今作でもアナの勇敢さは健在ですが、前作の経験を経てエルサとの対話をより大切にしているようにも感じられました。

序盤のジェスチャーゲームの後にアナがエルサにどうしたの?と声をかけにいくシーンなどは前作に無かったアナの成長から生まれた行動のように思います。

エルサとの間にすれ違いが生じそうになればなるほどアナはエルサとの対話を心がけます。
エルサの想いを理解することに努め、
最大限その想いに寄り添い、共に冒険に出ます。

そして、アナは何度もエルサに伝えます。
"何があってもエルサを離れない"と。
1人で飛び込んで行こうとする姉を支えるのは自分なのだと、前作以上に覚悟決まっているようにも見えます。

その上でエルサに拒絶された時はちゃんと怒っています。アナは湧き上がる怒りの感情を否定しません。
それは対話を求めて理解を心掛けて、相手の言うことを全て肯定するイエスマンではないと言うことの証でもあるのです。
全肯定が対話の理想形ではない、キチンとお互いの意思を伝え合うことこそが対話であり、自分が納得できないものも少なからず存在する。
そういった人間くささもありつつ、理性的に対話し、行動のできる女性。
そんな風にアナの成長は描写されていたように思いました。

余談ですが、ハンスの扱いがあの元カレ最悪!的なノリだったのはディズニーらしくない、現代的な表現で色々攻めてて面白いなぁなんて思いながら見てました。笑

②オラフの物語が示すもの

物語の終盤、エルサが凍ってしまった事でオラフにかかっていた魔法が消え、オラフが溶けてしまいます。
エンドロール後のオラフ自身の言葉を借りれば彼は1度死んだことになります。

しかし、"水には記憶が宿る"と何度も繰り返してきた通り、溶け出した水にはオラフの記憶が残っていて、オラフは元通り復活する。

この一連の流れを見たときに僕はベイマックスのラストを思い出しました。
ベイマックスもラストにヒロと別れ宇宙を彷徨うことになる。
そしてヒロは再びベイマックスを作り上げるというラスト。
ヒロの成長を示す為にもベイマックスを1から作り上げる事は物語のゴールとしてすごくふさわしいけれど、反面今も何処かで彷徨い続けているベイマックスを思うと、僕個人としてはモヤモヤが残るラストでした。

ベイマックスとの別れがヒロの成長へと繋がるように、オラフの死もまたアナが1人で自立するためのターニングポイントであったように思います。

大切な存在の死に向き合い、自立していくアナ。
しかし今回、水に記憶が宿る。
そしてオラフは雪だるま、つまりはオラフそのものは水と同じで、溶けて再び生まれてきたオラフも正真正銘アナとエルサの愛したオラフということになる。
ベイマックスでは古いベイマックスと新しいベイマックスの2体が存在してしまい、片方だけがヒロと共に生きていけることが少し悲しくもありましたが、今作で再び命を宿したオラフは今までのオラフと変わらない、唯一無二の存在。
キャラクターが生まれ変わると言う点において、ディズニーは作品をまたいでより良い方法を提示してくれたのかなと個人的には感じています。

③繰り返し伝えられるメッセージ

随所で言われていた
"今できることをやろう"
というメッセージ。
中でも印象に残ったのはオラフが消え、1人になったアナが自分を鼓舞する為に歌うシーン。 

"明日のことはわからない、でも今やれることをやろう"

アナはあの瞬間、長年愛した存在を無くしています。
それは現実で言えば、両親、兄弟、親しい友人を亡くしたに近い感覚。
当然、他のことなんて出来るわけがない。それでも前に進む為にあの言葉が必要になるのだと思います。
出来ないものは数多くある、だから出来ることを1つずつやる。
この考え方ってあらゆる事に通じるものだと思うのです。
劇中で何度も発せられたこの言葉はディズニーが見る人全てに贈りたかったメッセージの1つなのではないかなと思います。

そして、ラストの決着のシーン。
アナとエルサは別々の場所でそれぞれの力を生かし活躍します。
エルサが時折言っていた、
"あなたにはあなたを守る魔法がない"
と言う言葉。
エルサはエルサなりにアナを守ろうとしていた。
けれど、アナはもう守ってもらうだけの存在ではない。
"魔法がない=力がない"ではないのだと2人が別々の方法で課題をクリアすることで証明されます。

人には生まれ持った特性がある。
それは誰かと同じものではないし、
その特性に優劣はない。
自分を信じて自分で考え抜くことでその人にしか導き出せない答えが生まれる。

こんなメッセージが込められていたのではないでしょうか。

エルサが聖霊たちの架け橋であったとアナが言ったときにエルサもアナに対し、
"橋は足場が2つある、2人あってこそ出来たこと。"
と伝えています。
魔法のあるエルサだけが素晴らしいのではない、魔法のないアナだって素晴らしいのだと。
そうやって相手の存在を肯定できていることがすごく素敵で、僕自身そうでありたいと思えるほどでした。

個人的には印象に残るシーンが多かったアナ雪2。
ここに書いたことは僕自身の色眼鏡と偏見が生み出した僕が勝手に見たいものだったかもしれません。
けれど、そういう解釈もあるかもしれない、そう感じた心に不正解はないと思っています。

何を得て、何を考えるか。
これからも自分なりに答えを探し続けよう、そんなことを思う今日この頃です。

ライ


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