【金持ちと愛の裏切り】 #986

あるお金持ちの話なのだが
お金持ちが全てこんな人だとは思っていません
おおらかでとても思いやりのある人も沢山居てます
と
前置きしてからのお話です

要するにその人は人生の一番中心にお金がある人なんですね
感情がお金と申しましょうか
良いこと悪いことで判断するのでは無く
儲かるか損をするかで判断する

だからと言って儲かるからと言って違法行為などは恐らくしていないだろうが
そーだなぁ
あまりお友達は居なさそうですね

表面上の付き合いは沢山ある
でも気の置けない友なんて絶対に居ない気がする
そんな話は聞いた事無いし
本人から友達との話も一度も聞いた事が無い

寂しく無いのだろうか？

でも全然寂しそうにしていない
そうかやっぱり心が無いんだろうな
でもこれは残酷と言っているんじゃ無い
本当に人間らしさを感じないんだ
だから喋ってても全然魅力を感じない

むしろ彼がやって来ると
何か厄介なのが現れた
そう思うんだ

基本的には延々と自慢話を聞かされる程度
でも登場人物がほぼ出てこない
よくそれで話が成立するものだ

例えばだ
「イタリアに行った時にね
泊まったホテルが良かったんだよ
料理も良くてね
レストランから海が一望できるんだよ
そこで飲んだワインは格別だったよ」

誰と行ったん？
仕事で行ったん？
それともプライベート？
いつの話？

ロケーションも良いけどとにかく人が出てこない

とても疲れる


同じ町内に愛のみで出来ているのでは無いだろうか
という程の人も住んでいる

その人は先程の彼とは全く対照的で先ずとにかく優先すべきは人間で
しかもその人間の愛

誰か困っている人が居たら寄り添ってやる
助けるなんて大それた事は言わないしやらない
彼は寄り添ってくれるのだ
似ているようで大きく違う

困っている人の話を存分に聞いてくれる
無駄なアドバイスなどはしない
その代わりにその困った人のストレスを体全体で吸収してくれる
具体的に何をしてくれる
というのじゃ無いんだけど
彼と話しているととても心が軽くなり前向きになり
帰る頃には笑顔になっている

そんな訳だから彼の周りにはいつも人が居る
笑顔に溢れている

沢山の友が居た



こんな対照的な2人が2人揃って偶然にも同じ日に亡くなり
同じ日にお通夜がありお葬式もあった

お通夜には付き合い上
近隣の者は金持ちの方にも顔を出したがそそくさと立ち去り
皆彼の元へと駆けつけた
お通夜には沢山の人で溢れ返り
まるでディズニーのアトラクションを待っているかの如く長蛇の列が出来ていた
違うのは並んでいる皆んなが黒い喪服を着ているくらいのものだ

そんな訳でお葬式も人でパンパンだった

もう一人の彼の方はお葬式は人はまばらだったようだ


二人の葬儀が終わり
近親者が荷物の整理をしていたら
互いにある物が出てきた

お金持ちの彼の家からは遺言書が出てきた
それによると自分の財産を三分割し
ひとつは自治体に寄付
もうひとつは東北の震災で困っている人はまだ沢山おりそれらの人々を支援する為に使って下さい
最後はこの町にある児童福祉施設への寄付だった

自分は生きている間はお金が無いと困るので貯め込んでいたが
死んでしまったらもう自分は困る事は無い
だから多くの困っている人に使って欲しい
そう括られていた


そしてもう一人の彼の家からは
沢山の児童ポルノの写真や映像が見つかった
中には本人と行為をしている動画さえもあった
この後
本人は亡くなっていたが起訴された


町の皆んなは何とも複雑な気持ちになった
やはり最後は金のチカラなのか？
終わり良ければ全て良しなのか？

罪を犯すと全てが悪く作用するのか？
善人が悪人に変わってしまったのか？



金持ちの彼の話は長年受け継がれた
愛の彼の話は皆忘れようと
無かった事にしようとした



ほな！