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余談的小売文化論

「知性ある消費」をテーマに、現代の消費行動や理想論と現実的な問題のギャップについて考え、言語化しています。「正解」を語るのではなく、読み手が自分なりの正解を見出すための一助になる… もっと読む
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2018年12月の記事一覧

美は、私たちの生を肯定する

美は、私たちの生を肯定する

温かみのあるテーブルにパリッとしたクロス、磨き上げられたお皿。風に揺れる真っ白なカーテンと、控えめに飾られた一輪挿し。

そして身につけるだけでテンションが上がるお気に入りの一着と、口にするだけで笑みがこぼれる大好きな一皿。

美しく幸福な一瞬は、私たちが『生きること』を肯定してくれる。

ただ、高いものと美しいものは似て非なるものだ。

たしかに美しいものは往々にして値段も高いことが多いけれど、

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孤独感と仮想敵

孤独感と仮想敵

ずっと見よう見ようと思っていたドラマ『フェイクニュース』をやっと全部見終わったのだけど、個人的に今年マイベストドラマといっても過言ではないくらい面白かった。

フェイクニュースは誰か1人の悪者が作り出しているわけではなく、無責任で利己的な私たち1人1人がそこに加担していること。

現実世界で証拠とされるようなものも、いくらでも捏造が可能だということ。

そして何より、『普通の人』がちょっとした出来

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「病名」をつけられたい私たち

「病名」をつけられたい私たち

冬に高熱を出したとき、真っ先に浮かぶのは『もしやインフルでは』という恐怖である。

待合室で結果を待つ間、『万が一インフルだったらあれもこれもリスケだ…!いやでもあれとこれは日程変えられないし、インフルだけはどうしても困る…!』とまとまらない頭でぐるぐる考えていた。

結果としてインフルどころか感染性の類でもなかったので一安心したのだけど、ふと『病名をつけられる安心感』ってあるよな、と思った。

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真に「教養がある」とは何か

真に「教養がある」とは何か

最近ずっと考え続けていたことのひとつに、『アート礼賛主義への違和感』がある。

これからはロジックではなくアートの時代であり、名経営者はみなアートに関心を持っている、だからビジネスパーソンはアートを学ぶべきだ!という論調への、なんとも形容しがたいうっすらとした違和感。

振り返ってみれば、ここ2、3ヶ月の間に私が書いたnoteのほとんどは、根底にその課題意識があったような気がしている(これとかこれ

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「感覚」についての覚書

「感覚」についての覚書

週末、ずっと行きたかった「江戸絵画の文雅」展に行ってきた。

展覧会の構成や出光美術館の設えも素晴らしく、すべてが調和した『美の空間』といった趣で、久しぶりに何も考えず目の前のものに没頭した時間だったなと思う。

いい展覧会に行くといい作品に出会い、世界を見るための『新たな視点』を得ることができる。

今回はその中でも、尾形乾山の「梅・撫子・萩・雪図」を見て、最近ずっと考えてきた『感覚』と『意味』

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インスタントに消費されていく世界の中で

インスタントに消費されていく世界の中で

私が『知性ある消費』に興味を持ち始めたのは、いつの頃からだったのだろう。

百貨店に入ったときだろうか。それともロードサイドな文化に飽き飽きしていた高校時代だろうか。

いや、遡ればもっともっと前から、『消費』について考えていたような気がする。

まるでそれが、自分の使命かのように。

私が『消費』という言葉にこだわる理由『消費する』という単語は、ネガティブな意味合いで使われることも多い。

ニュ

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「日本的なる」戦い方

「日本的なる」戦い方

日々海外ニュースを追っている中で感じるのが、『米中と正面から戦っても仕方ないよな』ということです。

アメリカならGAFA、中国ならアリババとテンセント。

彼らの動きはとてもスピーディーで、無人店舗やニューリテール、キャッシュレスなどちょっと目を離しただけで新しい技術や店舗が次々と生まれ、そのダイナミックなスピード感に、記事を読むたび驚かされます。

さらにそうしたプラットフォームを活用した新し

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私は「伝えるためにつくる」人。

私は「伝えるためにつくる」人。

よく受ける質問のひとつに『書くモチベーションは何ですか』がある。

今でこそnoteを毎日は書かなくなったけれど、書きたいことはたくさんあって、時間さえあれば今でも本当は毎日書きたいと思っている。

でもそれは私にとって『表現』という感覚ではないし、文才があると思ったこともない。

自分が作ったものを『作品』だと思ったことは、一度もない。

じゃあ何のために書いているのかというと、私はとにかく自分

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