伝説の匿名ネット将棋棋士dcsyhi
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ネット将棋で、伝説のネット棋士dcsyhiがいたと語り継がれている。
将棋倶楽部24に突然登場し、アマチュア名人クラスを相手に、圧倒的な強さで爆勝した。
その強さを見た人は、またプロ棋士とか、奨励会とか、奨励会からプロになれなかった、ハチワンダイバーの主人公の菅田健太郎みたいな人が来たんだと思った。
しかしこのレベルだとレーティングは2300とかになるわけだが、彼はそんなレベルではなかった。
プロ棋士も驚く一手を指しながら、あっという間に前人未到の3000を超えてしまった。
ネット棋士dcsyhiの正体は誰か?
将棋雑誌でも特集が組まれる。
ネット民は特定へと動き出す。
ネット棋士dcsyhiがネットで将棋を指す時は、その棋士は暇ということだ。
逆にネット棋士dcsyhiがネットで将棋を指さない時、彼は仕事をしているということだ。
調査の結果、極めてdcsyhiである可能性のある人物は、当時最強の棋士羽生善治以外は考えられなかった。
この噂が流れるとdcsyhiはネットを去る。
さてこの時と同じくして、トロント大学で研究職に就いていた保木邦仁は、将棋を指すAIの研究を始める。
Bonanzaの開発である。
局面の計算を評価関数で評価。
これまで次の一手の可能性をAIは、人間にとってダメな手は考慮にいれなかったのに対し、BONANZAは全幅探索を行う。
ネットにこのAIが登場すると、奨励会員やプロ棋士達は続々と敗北した。
彼が倒したかったのは、伝説のネット棋士dcsyhiだったはずである。
2005年10月14日、将棋連盟はプロ棋士、女流棋士のAIとの対戦を禁止する。
逆にBonanzaは世界コンピュター選手権に優勝する。
出場者が狙うのは史上最強の将棋棋士であろう伝説のネット棋士dcsyhiだ。
コンピュータ将棋協会は、日本将棋連盟にプロ棋士に挑戦を表明する。
2007年、日本将棋連盟は時の竜王渡辺明に一千万円の対局料を支払い、大和証券杯ネット将棋・最強戦にて、Bonanzaにぶつける。
渡辺明は中盤で負け筋に入るが、なんとかBonanzaに勝利。
インタビューで実力は奨励会並みと認める。
そして電王戦がスタートする。
最初の敗北者は元名人、将棋連盟会長の米長邦雄だ。
しかし何年も羽生がAIと戦う機会はなかった。
プロ棋士は次々と毎年ルールを変更したが敗北した。
電王戦は最終局、挑戦者トーナメントに羽生善治も出場する。
しかし名人戦で彼を倒した時の名人、佐藤天彦に敗れ、佐藤天彦名人が挑戦者となる。
対戦するAIはBonanzaシステムを参考にしたPonanza。
Ponanza is not Bonanza.
江戸時代から続いた将棋名人は、平成の世にAIに敗北する。
私は羽生善治がなんで、dcsyhiという匿名棋士として、ネットで将棋を指したのか考えることがある。
自分が所属する将棋棋士以外に、ネットの世界に強い差し手に期待したのではないだろうか?
将棋の神はネットワークの世界に、人間の遥か上をいく人外との将棋に期待したのではないだろうか?
もしdcsyhiという匿名棋士の匿名性が守られたら、彼はBonanzaとも、Ponanzaとも、ネットの中で存分に戦えたのではないだろうか?
しかし羽生善治は将棋界の至宝である。
長い年月をかけて行われた電王戦で、最終局まで対戦は許されなかった。
無粋なファンが匿名の邪魔をして、羽生善治とAIの対戦の機会を奪った。
彼が匿名で将棋を指すことが許されていたら、彼は人外との戦いを今も楽しめていると思う。
社会的な地位の高い人は、普通のことを普通にできない。
日本にいる多くの将棋を指す人間が、プロより強いAIと将棋を楽しめた。
しかし残念ながら、羽生善治だけは指すことが許されなかった。
有名人にSNSにおいて実名で活動することはデメリットもある。
有名人がネットを自由に楽しむのに、匿名性を批難することは正義だろうか?
私は、佐藤天彦がボコボコでPonanzaに敗れた瞬間、羽生善治に匿名でAIと戦って欲しかったと思った。
国民栄誉賞を受賞してしまった羽生善治は、SNSを一切やっていない。
彼が匿名で、一般人と同じようにSNSを使う権利はないのだろうか?
彼が匿名で将棋を指したことにより、将棋は新しい世界を切り開いた。
将棋の普及に大きく貢献した。
私は匿名にメリットはあると考える。
匿名は時に人類を進歩させる。
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