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近頃の買い物で削ぎ落としたもの

便利の裏側にある無機質

世の中のキャッシュレス化が進むことによって、より一層商品を購入することが楽になって来ました。

短時間で済むようになることは便利と言えると思いますが、それによってさらに減ったものがあります。

それはコミュニケーションです。

コンビニでの買い物を思い起こしてみますと、

店員さんはマニュアルがありますから

「いらっしゃいませ」

と声を掛けますよね。

対する客は、「無視」かあるいはやったとしても「会釈」程度で、声を出して「こんにちは」とか「どうも」と応える人は極少数だと思います。

「袋はお持ちですか?」

これもレジ袋が有料化となり、必ず訊ねられますね。

対して客は、「持ってます (持ってません)」と声を出す方は案外多い気もしますが、既に手元にエコバッグを持っていれば、それを見せておしまいとなりますし、そうであればそもそも訊ねられることもないかもしれません。

困ってしまうのは、手を振るジェスチャーだと思います。

なぜならそのジェスチャーが

「レジ袋いりません」

なのか

「エコバッグを持っていません (レジ袋を下さい)」

と全く真逆の意味のどちらにも取られてしまうからです。

この状況はコンビニに限らず、スーパーもさほど変わらないでしょう。

スーパーといえば、最近ではスマホに予め登録しておくと、店内で商品のバーコードを自分のスマホのカメラで読み取り、会計が出来るサービスもありますね。

こちらですと終始誰とも話すことはまずありません。勝手知ったるお店で手早くお買物を済ませたいならとても便利なシステムです。

ECサイトで購入すると、その商品を届けにいらした配達員さんは必ず声を発するはずですが、受取手側は受取りの捺印あるいはサインを無言で行うことも可能ではあります。

労いの言葉一つも掛けないのは私にとっては大変心苦しいので、挨拶や感謝の言葉は伝えるように致しております。

しかしここで置き配を依頼していれば、他者との接触を完全に避けられる、文字通り「非接触型」の売買が成立します。

感染防止という観点からは優れたシステムでありますが、そこにはやはり体温を感じるようなコミュニケーションは存在せず、そして、それを誰しもが歓迎してばかりではないようです。


完全に捨てきれないもの

下記の2つの記事は奇しくもいずれも青森県(十和田市とむつ市)のスーパーの話です。

一つの記事は、地元スーパーが店頭に貼り出した張り紙についてです。

パソコンが壊れたのでチラシを作れませんが いつも通りの感じで特売します。

この緩い感じがツイートされ、大反響となったようです。

ここに存在するのは、販売者と消費者の間に存在する暖かさコミュニケーションです。

もう一つの記事では、

一封変わったPOPが注目を集めているらしいのです。

例えば

このコーナーの品はぶっちゃけ高いです でもそれは本物の証です

<「みんなだぁい好き! ちん〇」(※○の中はもちろん「み」です)>

と。なんだか売り手のユーモアとともに体温をも感じられます。

「職場環境を楽しく」という方針が、やがてオリジナリティに繋がっていったようですが、消費者側もそれを求めて通っているようなので、売上実績は好調なようです。

記事には、

昔は当たり前にあった商店街の青果店や鮮魚店。買い物をすると、お店の人が「この部分は〇〇にすると美味しいよ」なんて教えてくれて、何だか得した気分になったことを思い出す。買い物とは本来、こういった楽しさが存在していた

とあります。


おわりに

急激に失われつつある商品購入に伴うコミュニケーション。

それは、商品の持つ価値(価格)に対する対価(お金)を支払うという売買においては、無価値なものかもしれません。既に購入を希望している商品の情報や価値などが既知のものであれば尚更です。

コミュニケーションの減少には、キャッシュレス化とIT化、さらには昨年からの行動変容が拍車を掛けました。

しかしその反動として、人との関わり、交流を求めるというのは、人間としての一種の本能であり、耐えられない孤独感や不透明感から生ずる不安感や鬱屈した思いから、救いを、そして、安らぎを皆が求めているのかもしれません。

そこでハートウォーミングな話題が注目を集めているのだと思います。

今回ご紹介した記事は、声を張り上げることが憚られるなか音声情報が影を潜めても、POPや張り紙というカタチでの文字情報に人の温もりを求める。という点で共通しています。

ここに今の時代にマッチした、売り手も買い手も満たされる方法のヒントがあるような気がします。



おしまい

最後までお読みいただきありがとうございます。 いただいたサポートは麦チョコ研究助成金として大切に使用させて戴きたいと思います。