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東京情報戦争の最前線から(仮)

 今年も大学の授業の季節がやって来た。毎年北朝鮮の報道について1時間話して、30分間学生の質疑応答を受けるのだけど、さすがに6年北朝鮮に行っていないとネタが尽きてきた、鮮度が足りない感がある。

 実はあるグループから依頼を受けて安全教育の準備を進めていた。公安警察の捜査手法と接近方法とその狙いなどなどの体験を軸に、ロシア大使館員との接近遭遇についても話す予定だった。これについては残念ながらコロナで無期延期中である。

  ところでこのニュースが実に面白い。記事の中で内閣情報調査室の職員がロシア大使館員とファーストコンタクトをとった場所は、虎ノ門の中国関係のセミナーと書かれているが、このセミナーにぼくも何度か出たことがある。

 厳密にいうと、中国だけではなく北朝鮮のセミナーもある。中国に関してはレベルの高い質問が出るが、北朝鮮関係の質問はちょっと残念なものが多い。例えば「拉致被害者は今どうしていますか?」なんて講師の人が到底答えられない突飛な質問が出る。

 あるいは北朝鮮についてとうとうと自分の意見を述べるだけという、そもそも質疑応答の意味を理解していない困った人も。そこでひとつ、筋の通った質問をして、セミナーの空気をしめるのがぼくのひとつの役割だった。

 ここに確かにロシア大使館の人間がいた。名刺交換もしたことがある。幸いにしてそれ以来何の進展もなかったが、同じく名刺交換をした警察関係者の人は後日、直通電話があったと聞いた。

 質問をした後、講師を務めた先生と話しているとスッとやって来た白人男性。身長は自分よりもやや高い約175センチ。体重は100キロ超。柔道家に特有の餃子耳。金髪の短髪。眉毛が薄く、目は太っていることもあり大きくない。笑顔は愛嬌がある。ハリウッド映画なら名前はボブ。ピザとコカ・コーラをこよなく愛すような顔の男性はウラジミール・コベレフ(仮名)と名乗った。

「センセイのご質問は実に興味深かったです」とコベレフ氏はぼくの顔を見て笑顔を見せた。日本語は余りうまくない。イントネーションがある。そのイントネーションは独特で英語圏のものではない。初めて聞いたものだ。

「どうも恐縮です」と頭を下げる。名刺交換を求められたので名刺を交換し、求められたので握手もした。手の肉が厚い。コベレフ氏の名刺にはロシア大使館の所属であることと、アタッシェというよくわからない肩書があった。携帯電話番号。メールアドレスはなし。

「今度食事でもしましょう」といわれたが愛想笑いで返す。ぼくの著述業という肩書は果たしてコベレフ氏に通じたのだろうか。

 主催の事務方の人に「ロシア大使館の方も来ているのですね」と話したところ「名前は?」と聞かれ名刺を見せたところ人体を聞かれた。

 ぼくが見たコベレフ氏と、事務方の人がいう人体が一致しない。

 つまり、ぼくが見たコベレフ氏は三代目というのである。事務方の人によると同姓同名のウラジミール・コベレフ氏がかつてセミナーに来ていたが、髪は剥げていて貧相な体型だったという。さらにその前も別の認定だが同姓同名のウラジミール・コベレフ氏が来ていたというのだ。

 同じ名前を使って別人物が来ているのか。本名を知られたくないのは理解できるが、同姓同名とは外務省をなめているのか。この仕事をしていると、ロシア関係のひやりとする話、震える話は色々あるのだけど、先ほどのニュース記事のようなことは日常起きているのだろう。

 まだまだ書けない話も話せない話もあるけれど。いずれまた。

 そんな話を大学でします。

■ 北のHow to その144
 日本にはスパイを取り締まる法律がないことはよくいわれますが、北朝鮮本国以外で北朝鮮の情報が集まるのが日本です。在日コリアンも数万人単位でいますし、政治経済軍事の分析、研究レベルは高い。各国の大使館員(という肩書の情報要員)が都内に跋扈しているのです。
 
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サポートいただけたら、また現地に行って面白い小ネタを拾ってこようと思います。よろしくお願いいたします。