北岡 裕

著述業。東京在住。著書に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」(角川書店・共著)。200…

北岡 裕

著述業。東京在住。著書に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」(角川書店・共著)。2003年から5回訪朝。一般社団法人内外情勢調査会での講師。週刊金曜日、週刊SPA!朝鮮新報など日本、在日メディアで数多く執筆。現地での実体験をもとに、新たな日朝関係の可能性について発信しています。

最近の記事

金ジュエちゃんは、金主愛ちゃんなのだろうか。

 金正恩総書記の娘である金ジュエ氏の露出が増している。「尊敬するお子様」という尊称もついて。二番目の娘とされているが、長女と弟である長男の存在が気になる。なぜ、次女であるジュエ氏なのか。  金正恩氏が表舞台に出始めた時も金正雲、金正運、金正銀という漢字名が推測され、のちに北側から金正恩ですという回答があった。朝鮮語でややこしいのはウンがふたつあること。운と은で微妙に発音が違う。  ジュエという名前を聞いた時に自分の脳内で浮かんだ漢字は「主愛」だった。母親の李雪主氏の主に愛

    • 恩人Lさんの死

       いわゆる良心的な市民たちというのがぼくは大の苦手で、市民運動的なものに対しては「運動は苦手でして。身体を動かすのも思想の方も大嫌いでして」と言ってのけ相手を絶句させ、いわゆる理想的な訪朝記「北朝鮮に行ってみたら怖くなかった。思った以上に自由だった。思った以上に発展していた。子どもたちの目が輝いていた。また行きたい。これからも日朝交流の草の根運動に尽力したい」という、まんま北のスポークスマンじゃないかこれではと言いたくもなる典型的理想的な訪朝記を読むと今も虫唾が走る。  あ

      • 三河島Deep!華花

         朝鮮舞踊をやっていた女性は年齢関係なく凛としている。芸能人でいうなら女優の菜々緒さんや天海祐希さんのような。年齢がわからない。そして本当にきれいなのだ。  中島らもの「今夜すべてのバーで」に、バーテンダーがすっと足を引いた構えからボクシング歴を見破った一節があるがこれと同じだ。見てすぐにわかる。    背筋と存在感がスッとしているのだ。そして年齢関係なく痩身。太っちょの安禄山は踊りがうまかったというがそれとは違う。   三河島の華花のママさんも朝鮮舞踊歴を感じさせる雰囲

        • 大塚「だいじゅ」の冷麺

          「大塚のありがたさは、大人になってからわかる」というコピーを読んだのは果たして実話誌か、それともタブロイド紙か。  そのありがたさも以前ほどではないが、なるほどその残照を駅前にぽつりぽつりと見ることが出来る。行かないけど。  個人的には山下書店によくお世話になる。24時間営業の書店。店内は入り組んでいて、何だかヴィレッジヴァンガードのような雰囲気もある。ここで思わぬ本との出会いを何度かしたことがある。  実は大塚。ホルモン屋と焼肉屋が多い。美味しいホルモン屋と焼肉屋を見

        金ジュエちゃんは、金主愛ちゃんなのだろうか。

          月刊イオに記事が掲載されました。2022年の総括

              今年最後のお仕事は月刊イオ(朝鮮新報社)。アントニオ猪木さんの追悼記事を書きました。  猪木さんをどう評価するか。北朝鮮の感覚、勘所をつかんでいる唯一の日本人であったといえます。北朝鮮を怒らせるのはたやすい。何なら今からでもヘイトスピーチのひとつでもやってみれば、数倍の罵詈雑言が返ってきます。  しかし何をしたら喜ぶか。どうやって懐に入り込むか。これは難しい。それを知り尽くしていたのが猪木さん。何かに学んだのか。ブレーンがいたのか。元気ですかー!というひとことで

          月刊イオに記事が掲載されました。2022年の総括

          相次ぐ北朝鮮のミサイル発射について

          「北朝鮮がミサイルを撃ち続けている!なぜ?」とLINEのメッセージが朝から何本も来ていて困っている。  そもそも北朝鮮は航空兵力が非常に弱い。第4世代戦闘機としてMig-29を持ってはいるがその数は少なく機体の状態が不明。ちゃんと整備できているかが不安(これは自衛隊も同様に深刻で、機体から部品を外して使いまわす、いわゆるカニバリゼーションの状態になっているという)。これをもってF-35などをはじめとする最新鋭のステルス機と対峙するのは難しい。  さらに訓練。太平洋戦争の敗

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          ずっと防衛白書を読んでいました

           ぼくは昼間はサラリーマンをしてまして、某自治体のあるシステムのサポート窓口の立ち上げと運用に追われていました。  4月半ばに入社して翌月には出張サポートもこなし、7月にサポート窓口を立ち上げて、その運用をようやく軌道に乗せたのは先週のこと。クライアントからは「3か月でここまでやってくれるとは!パーフェクト!」といわれたので、明日は有給です。  しばらく書くこと話すことから遠ざかってました。  その間何を読んでいたかというと防衛白書。いやこれが面白い。結構学生時代の早い

          ずっと防衛白書を読んでいました

          ミスター・イングランド氏の憂鬱

           エリザベス女王が亡くなった。そしてイギリス留学経験のある知り合いのことを思い出した。彼のことを仮にミスター・イングランド氏と呼ぼうか。  一度酒席でイギリスが話題に上り「イギリスの~」「イギリスがさぁ~」と誰かが口にするたびに「イングランド」「イングランドな」とミスター・イングランド氏が言い直すのでひどく興ざめした覚えがある。  この点ぼくはファジーである。日本人相手なら講演や授業、酒席では「北朝鮮」というし、在日朝鮮人が相手なら「共和国」という。あるいは「北の」「南の

          ミスター・イングランド氏の憂鬱

          あす発売の週刊金曜日に記事が掲載されます。あと、誕生日です。

           あす発売の週刊金曜日に記事が載ります。「おうちが見つからない 特別永住者という隣人たちの苦悩」。在日韓国人の友人から「名前を貸してください!」といわれたのはもう1年以上前。何でも日本人の知り合いの名前と連絡先を書かないと家が借りれないというのだ。  いやいや、よーく考えようぜ。「いやいや日本人代表でオレってのはないだろうよ?」というと「大真面目な話です。笑い事じゃないんです!」と危機を訴える友人。「ぼくは判子も押さないし、保証人はやらないよ!相手が日本人でも誰でも」という

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          日朝水面下の交渉、もとい交流

           在日の友人Kくんから、都内において北朝鮮の音楽公演があるという情報が飛び込んできた。会社を1時間早く早退する必要があるが、今の職場なら大丈夫。かつその日は人手が厚いことも確認し参加を決めた。  ところでぼくのWalkmanには北朝鮮音楽が500ファイル近く入っているが、Kくんは在日朝鮮人世界の音楽も網羅しているので1000ファイルを超す。しかし使っているのはiPhone。米国製やないかい!そこはええんかい!と毎回突っ込みたくなる。在日コリアン最高峰の愛好家といっていいだろ

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          オールインとダブスタ

           統一教会が予想以上に自民党に食い込んでいることが明らかになって、慌てて内閣改造をしたもののそこにもまた、という岸田内閣。  そもそも統一教会は勝共をスローガンとしていて、それで手を握ったのではなかったか?だまされた!と思うかもしれないが、それは明らかな誤謬である。北朝鮮に関していうならダブスタは当たり前なのだ。  北朝鮮の国産自動車メーカー「平和自動車」は統一教会がからんでいた。ぼくの平壌の定宿「普通江ホテル」も統一教会がからんでいた。当然北側も統一教会と「勝共」という

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          奈良出張記(5)

           かつて浅草橋にサンムーンという冷麺の美味しい店があった。平壌の高麗ホテル直伝の味といわれていて、実際に食べると確かに平壌の記憶が蘇った。  申し訳ないことにこの店は焼肉メインの店だったのだが、焼肉は高いので冷麺ばかり頼んでいた。肉を食べたことはほとんどなかった。  そんなある日のこと。朝鮮新報の仲のいい記者から「サンムーン潰れたかも!」と連絡があった。食べログを慌てて見たら閉店の文字。にっくきコロナは、冷麺の名店をも奪ったのだ。    西の横綱は神戸にいる。新長田にある「

          奈良出張記(5)

          奈良出張記(4)

           奈良から京都に向かう。タクシーの窓越しに鹿を一瞬見ただけで、すぐに近鉄に乗る。奈良を出た電車はジャンクションである大和西大寺駅に停車する。ポイントを経て列車は北上する。  数週間後に安倍元総理が殺害された現場を奇しくも通過した。その時はその後のことも、今のことも想像すらしていなかった。  京都では府庁を訪れてクライアントの議員さんにあいさつ。2016年の訪朝の時にアテンドをした。この議員さんも豪胆な方で、見学地の交渉は全部ぼくに任せてくれた。北側が提案してきた、朝鮮総連

          奈良出張記(4)

          奈良出張記(3)

           昔、金屏風の前で離婚会見をしたおめでたい女性がいて、それを見てぼくは「バカだなー」と笑っていたのだけど、よくよく考えたら金屏風なんてそもそも結婚式くらいしか縁がない。あとは大関や横綱に昇進するか。  年一回呼ばれていた新年会で、毎年見事な金屏風をバックに会長がスピーチをしていた。時間も内容もぽつぽつと雨が降り始めたように始まり、最後はざんざか雨が降るような拍手で終わる。やんごとなきご身分の方がやんごとなき挨拶をすると、ビシーッと金屏風がハマるのだ。ピカーッと輝く気がする。

          奈良出張記(3)

          奈良出張記(2)

           中高生のころからひとり旅が好きでカプセルホテルが定宿だった。一度だけユースホステルに泊まった。  新年を大阪のカプセルホテルで迎えたこともある。  ソウルもことばが出来るようになるとソウル駅裏のサウナが定宿になった。二段ベッドが並ぶ。1泊16,000ウォン(1600円)は破格だった。  一方で北朝鮮に行くと特級ホテルに泊まる。平壌なら高麗ホテル、羊角島国際ホテル、普通江ホテル。特級である理由は、外国人と市民を隔離するところに目的があるとはいえ、その国の首都の最高級ホテ

          奈良出張記(2)

          奈良出張記(1)

           生まれが三重県だから何度か経由しかすったことはある。けれどしっかり奈良をちゃんと目的地として訪問するのは実は小学校の遠足以来で35年ぶりのこと。  内外情勢調査会講師として「遠くて近い国から 近くて遥かな国へ 世界から離隔する北朝鮮」というテーマで講演をして来ました。  講師の出張は朝早いのが特徴。7時代の新幹線で東京駅発。いつも会社行くより早いよ~とあくびを噛み殺しつつ新幹線に乗りこむ。新幹線のデッキは少し暗い。この瞬間がいい。トイレに行ってスーツケースを網棚に乗っけ

          奈良出張記(1)