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東京日朝焼肉大戦争血風録(2)

 少しでもグルメな人ならK原Y山という不遜な男の存在はよく知っているだろう。「この◯◯を作った奴は誰だぁ!」という怒鳴り声と共に厨房に押し入って来る長髪姿のムカつく野郎である。

 この男、いつも怒鳴っているだけではない。時々哲学的なことをいう。「ところで焼肉とは何か」。こんな感じでど真ん中に棒球をぶち込んでくる。ここで「いいだろう!おまえにホントの焼肉とは何か見せてやるよ!」とY岡S郎のように挑発に乗るまでが様式美である。

 さて。異端児がやって来たという話で前回は終わったが、その異端児はぼくに言ったのだ。「なぜ貴様はなぜ屋根の下で焼肉を食うのだ?」。まんま、K原Y山である。意味が分からない。なぜ店で食うのか?と問うならまだわかる。家で焼き肉を食うこともあるじゃないか。家でモランボンの焼肉のたれで食べる焼肉より、焼肉屋の焼肉の方が普通にうまいじゃないか。「あ、あんだってー?」。志村けんを真似したぼくの渾身のボケを異端児は受け流し「答えを知りたいか?だったらここに来い」

 またメモである。なぜ在日コリアンはメモが好きなんだろう。そこにはひとつの住所が書かれていた。「東京都小平市小川町1丁目700」とそこには書かれていた。そして「ふっふっふ。俺は待ってるぜ」と笑いながら異端児は去って行った。ちなみに長髪でも着物姿でもなかった。「OK Google!ここはどこだい?」とぼくがスマホに向かってメモに書かれた住所を叫ぶとGoogle先生はディスプレイにその場所を映し出した。

 場所は東京都小平市。最寄り駅は鷹の台。降りて15分くらい歩く。なお池袋から西武池袋線で行くと、乗り換えで必ず迷う。所沢駅で一回、小川駅で一回のはずなのだが、だいたい気が付くと電車は川越に向かっている。小江戸になど用はない!と思った時にはもう遅い。南下するつもりが北上していると気づいた時にはもう遅い。何だかぼくの人生みたいだな。まぁいい。過去はふり返らない方がいい。ところで鷹の台。恋ヶ窪。小平。この地名にドキッと来た人はいないだろうか。話はここで少し脱線する。

 そうなのである。三億円事件の舞台となったのがちょうどここいらなのである。昭和の未解決事件大好きなぼくにはたまらない一角である。普通免許は持っているので、スーパーカブを白バイ風に塗装し、荷台にクッキー缶を白塗りしたものを括り付け、雨の日に黒いレインコートを着て「この車に爆弾が仕掛けられているぅ!」と発煙筒を車の下に放り込みながらその住所にスーパーカブで乗り付けるまでを想像したが、そんなことをしていたら現場にたどり着く前に、府中刑務所に放り込まれることになることが濃厚なので自重した。

 さて、無駄に北上し、三億円事件の舞台を追憶しながら川べりの道を歩くと大学の正門の前に出た。警官がバスに乗って警備している。こ、ここはどこだ?どんちゃかどんちゃか騒がしい。「朝鮮大学校へようこそ」。そこにはK原Y山、じゃなかった異端児が正門前で不敵な笑みと共に腕組みをして待っていた。

 ところで、鷹の台駅から朝鮮大学校への道は基本一直線だが、中央線国分寺駅から西武バスに乗って行っても朝鮮大学校に着く。その方が無駄に川越に行ったりしないし確実である。

                             つづく 

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