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あなたの英語はネイティブ何歳レベル?vol.9 <イギリス秋の季節行事ボンファイヤー・ナイトから学ぶ(小3レベル)>

毎年イギリスでは、11月になるとそちこちで打上げ花火が賑やかに上がります。こちらに来て初めて迎えた秋は、突然の爆音に驚くと同時にワクワクもしましたが、今となっては喜び勇んで窓にかけ寄るのは子供だけ。

私なんかはむしろ「またこのうるさい季節になったか(隣近所レベルですと相当な破裂音)」と、現実的なことを考えてしまう夢のない大人です。初年度は現地の人に「秋になると花火を上げるんだよ。ボンファイヤーの季節だからね」と教えてもらい、「秋に花火⁈それも、自分で上げるの⁈」と衝撃を受けたのですが、そもそもなぜこの時期に花火を打ち上げることになったのでしょうか。

当時はせっかく説明してもらっても、現地の歴史や文化などの知識が皆無だったのでこちらはサッパリわからず。翌年、再びこの季節を迎える頃にようやく頭に入れました。わが子が通うイギリスの現地校では、小1(Year2という名称の学年)から習うことのようで、小3(Year 4)時には読解問題の宿題が出されました。今回はその宿題を通して、この「ボンファイヤー・ナイト(Bonfire Night)」たるものを紐解いていきたいと思います。

インドの祭典「ディワリ」と近い日程

bonfire 大かがり火、たき火

という意味をもつこの「ボンファイヤー・ナイト」は毎年11月5日、つまり今夜行われるのですが、実はこの頃はインドのお正月であるディワリ(Diwali)というお祭りシーズンと近く、私などは今日までずっとこの花火をボンファイヤーのものと混同していました。

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町のイルミネーションや華やかな飾りつけにより、ディワリは別名「光の祭典」とも呼ばれ、毎年新月の日に開催されます。だいたい10月下旬から11月上旬がその日にあたるらしく、昨年2020年は11月14日だったのですが、今年はボンファイヤーの前日11月4日と、無知な私にはますます紛らわしい。

正月というだけあり、5日間と長めのお祝い期間だそうで、この間は平日週末問わずあちこちでボンボン花火や爆竹が鳴らされます。スーパーによってはこの時期、花火を買うための特設カウンターが設けられるほどです。

ご近所同士、花火を同時に上げてしまって音がかぶるのを防ぐためか、ひとつが終わると「待ってました!」とばかりに次の誰かが上げ、それが終わるのを待っていたまた別の一家が今度は打ち上げる・・と、打ち上げの無限ループがしばらく続きます。

これを書いている最中(イギリス時間4日)も、21時から始まったご近所での打ち上げが22時を過ぎても余裕で延々と続き、さすがにその頃には寝付きましたが、子供が始めの頃は見たがり、打ち上がるたびにベッドから抜け出ては観、終わると「もっと観たい〜」と特に下の子が大泣きして、翌日も普通に学校なのに、いつもより半時間も遅くまで起きていて、まったくもって大変な騒ぎでした・・。

別名「ガイ・フォークス・ナイト(Guy Fawkes Night)」

一方、話は戻り400年近い歴史をもつボンファイヤー・ナイトは、またの名を「ガイ・フォークス・ナイト」と言います。ガイ・フォークスとは人の名で、この行事の発端となった伝説的な人物です。その昔、当時の国王暗殺と国会議事堂爆破を計画した犯人として知られていますが、なぜそんな「悪者」がそんなに英雄視されているのか?あるいはその逆で、彼の死でも祝うのか?歴史的背景をまだ知らなかった私には、この人物と祭りの関係性がサッパリわかりませんでした。以下、子供の宿題から学んだことです。

プロテスタントVSカトリックの諍い

16世紀後半、イギリスのイングランドでは

Church of England イングランド国教会

が設立され、それまでのカトリックからプロテスタントへと移行しました。以降カトリック教徒は激しい弾圧に合い、1603年にカトリック教徒の母を持つジェームズ1世が即位するも、依然カトリック排除の方針は変わりませんでした。これに異を唱えた一部のカトリック教徒たちによるものが

The Gunpowder Plot 火薬陰謀

と呼ばれる、ジェームズ1世の殺害と議会の爆破を企てた策略。あたかもガイ・フォークス1人が首謀したかのように書かれることが多いですが、発案者はこれより以前から計画を3年がかりで練っていたRobert Catesby。

1604年の2月、彼がほかのカトリック教徒2人とロンドンで密会を持ったことから計画は進み始めます。首謀者となったひとりThomas Wintourは、外堀を埋めようと海外のカトリック組織の支援を取りつけるため、当時スペインの統治下にあったベルギーに飛びます。

スペインはローマ・カトリック教会が国内で圧倒的に支持を受ける国でイギリスとは長年なにかとライバル関係にあり敵対していましたが、当時はお互い良好な関係を築いている時期でした。

無用な対立を嫌ったスペイン人の指導者に要請を断られたウィンターは、ベルギー滞在中ガイ・フォークスと運命の出逢いを果たします。従軍して爆薬の知識が豊富だったカトリック教徒のフォークスは、計画への協力を快諾しました。

着々と進められる秘密裏の計画

もうひとりの首謀者であるThomas Percyは、

House of Lords 貴族院(上院)

のすぐ近くに家を借り、さらには貴族院の真下にある貯蔵庫まで手配することができました。フォークスはそこで火薬の見張り番として待機することになりました。

匿名の手紙による密告

ところが準備万端、実行の日を今か今かと待ち構えていたフォークスはMonteagle男爵に届けられた「11月5日の議会には行くべからず」との

anonymous 匿名

手紙がきっかけで、あっさり見つけられてしまいました。11月4日夜、国会議事堂の地下が捜索され、36樽もの火薬を発見、陰謀は失敗に終わりフォークスを始めとする計画犯は処刑されました。

と、宿題の内容はここまで。ネット上の、日本語で簡潔にまとめられているものと比べて、短いながらもより細部にわたって記載されていたので臨場感がありました。また、小3レベルなので(それでも十分難しいですが)比較的わかりやすかったのも助かりました。

すっかりイベント化した現在の楽しみ方

この「火薬陰謀事件」が未遂に終わったことから、「国家が無事だったことを祝う日」としてして祝日に設定したことをきっかけに(現在祝日は廃止)、かがり火を焚いて各地で祝うようになりました。イギリスではハロウィンより盛んなお祭りで、家族同士のパーティーから街レベルで開催される花火大会まで、規模はさまざま。

自宅の庭や空き地、共有地、公園などでたき火をたき、 この時にガイ・フォークスに見立てた人形を放り込んで燃やすのが「正式」な?方法なようですが、今どきそこまでやっている家庭は・・あるのだろうか・・あまりないと思います。

公共イベントとして有名なのは、イングランドのイースト・サセックスに位置するルイス(Lewes)という町で行われるボンファイヤー・ナイト(たき火祭り)だそうです。実際に火のついたたいまつや十字架を掲げながら仮装した町人が練り歩き、大砲や爆竹を鳴らしながらガイ・フォークス人形を引きずるそうです。最後には花火が上がって終了。

国際的なアイコンとなったフォークスの仮面

ところで、匿名を意味する「アノニマス」といえば国際的なハッカー集団を思い浮かべるのですが、彼らが公の場に現す時は顔を隠すために皆同じおをかぶっています。白い顔に黒い口ひげとあごひげがついたのついたこのお面は、実はガイ・フォークスを模したものなんです。

この仮面は今や抵抗や匿名を表す国際的シンボルともなっており、世界各地の抗議運動でもよく使われています。また、ガイ・フォークスの名前ですがガイはあの

guy 男、ナイスガイ、ヘイガーイズ♪

ガイです!この英単語は彼の由来した言葉でした。

と、豆知識も得ながら、このお祭りの趣旨や歴史などについてはあらかたわかりましたが、同じ国にいながらカトリックの人に対してここまで憎しみを名実共に燃やすというその感覚が未だによく理解できず・・。まぁ、もちろん現代社会の今となっては宗教的な意味合いはかなり薄れて単なる「花火とたき火のお祭り」と化しているのでしょうが、カトリック信者の人たちはどう思ってるんだろうか。

フォークスの行為を讃えて祝う人も大勢いるとのことなので、そういう人たちがカトリック教徒なのかな?今日、学校のお迎えに来ていたとあるお父さんに、花火は打ち上げるのか、と聞いたら「犬が怖がるからしない」という、イギリスらしいお答えを賜りました。

ちなみに偶然ですが先月訪れた、現役貴族がまだ住んでいる「コートン・コート」という名のお屋敷はなんと、この陰謀事件と大いに関わりがあったようで、驚きました。あまりにもタイムリーなので、今回はかなり気合を入れてこちらのnoteと同時進行でなんとかギリギリ間に合わせました。

同じ行事ごとでありながら、noteではボンファイヤーを、他媒体では陰謀事件に焦点を当て、ふたつの視点からイギリスの今日という11月5日を考察しました。いつもは過去記事しかご紹介しない他媒体での記事を、リアルタイムでお知らせという、レアなケースなので、の角度からこのイベントを読み解きたいという方にはおすすめです。

また、すべてとっさの思いつきですが、これらと同時にインスタグラムでも、上記2媒体では使用していない写真を投稿しました。こちらはサリーメイという名前で、旅先の写真や自作のイラストに、カリグラフィー文字入れしたものを主にアップしている、アート専用のアカウントです。

異例中の異例な、これら3媒体の同日一斉公開、ここにリンクを貼る限り消えてなくなるわけではありませんが、木枯らしが吹き荒み、冷え込んできたいま、ぜひできたてホヤホヤ、あったかいうちにご覧ください☕️


こちらでもフォローして頂ければ大変嬉しいです! 【Instagram】https://www.instagram.com/surreymay_calligraphy/ イギリス生活、旅、カリグラフィー