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プラプラ堂店主のひとりごと⑨

〜古い道具たちと、ときどきプラスチックのはなし〜

何にもしない日のはなし

 羊ヶ丘展望台に来ている。ここはぼくのお気に入りの場所だ。広くて、なんにもない。いや、ここは観光施設。もちろん、いろいろある。ジンギスカンも食べられるし、雪まつり資料館、お土産屋さん、カフェもある。今もたくさんの観光客がうれしそうにクラークさんと写真を撮っていたり、白い恋人ソフトクリームを食べたりしている。何にもないといったのは、ぼくはここでは何もしないから。羊ヶ丘のぼくの定義は(なんにもない広い場所)。ただ、のんびりと歩く。羊のいる広い牧草地から札幌の街を眺めている。昔から仕事のない日は、ときどきここに来るんだ。何も考えずに、ぼんやりとここから見る広い広い空が好きだ。

そうやって空を眺めていたら、先日行ったうめさんの家が浮かんできた。

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 うめさんの家には新しいものはほとんどなかった。厳選された(ようにぼくには見える)使い心地の良さそうなものだけ。今どきのオシャレなものはない。でも、不思議とデザインが美しく感じたりして。

あ、もしかして。

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 民藝の原点は、こういう暮らしの中のささやかな物なんだろうな。使いやすいシンプルな物を選んで、長く大事に使って生活している。うめさんには(使い捨て)という概念は、ないんだろうなぁ。

プラスチックのことから始まって、エコとか地球のためのとか、大げさなことを考えていたけどーー

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 もしかしたら、ほんの少し昔の暮らし方をするだけで良いのかもしれない。たくさんの物に囲まれて、(もっともっと)と買っても、まだ満足できないぼくらより、うめさんの方がよっぽど満ち足りている感じがする。

でもなぁ。

 少し前の暮らしといっても、難しいんだろうな。便利さを追求してきた僕らには、ほんのひと手間が面倒に思えたりする。現代の便利さにすっかり慣れてしまったから。そう、(めんどくさい)は生活のあちこちに顔を出してくるもんなぁ。ハァ〜。

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ぽかりと、白い雲が浮かんでいる。

あーいい天気…

 ああ、思考停止状態だ。いつもの(めんどくさい)が顔を出す。自分の無力感を感じて投げ出すところ。だけど、まあ、とりあえず大丈夫と感じるぼくがいた。できることをマイペースでやろう。そう決めたじゃないか。プラプラ堂を始めて、ぼくの中で何かが変わり始めている。人から見れば大したことのない、小さな変化だと思う。でも、ぼくにとっては大きな変化だ。

ぼくは、また空をみてゆっくり深呼吸した。やっぱり、ここに来てよかったな。

さて、どこかで珈琲でも飲んで帰ろう。

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