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疲れたら近所のスーパー銭湯に行こう

寒いのは苦手ですが、暑いのはわりと平気なほうで、今まで夏場に体調を崩したことはほとんどなかったのですが、ここのところ、少し崩していました。

といっても、熱が出ないし味覚もあるから例のアレではないし、咳も出ないし喉も痛くない。

ただ、どうしようもなくだるい。

何かしようとする気がしない。食欲もそんなにない。素麺などの流し込むものは食べられるが、丼ものなどは重くてしんどいと感じてしまう。

なんなんだ、この症状は?と考えてみて行き着いたのが、どうやらこの酷暑のせいで、いわゆる夏バテをしたのではないかと。

今まで夏バテというものを聞いたことは数あれど、自分が当事者になったことがなく、一体どんなものだかよくわからないまま、夏バテって大変ですねーなどと真心の欠片もなくテキトーに返事をしていた。

演技をしているんだ。あなただってきっとそうさ、当事者を回避している。というのは東京事変の『群青日和』のサビの歌詞ですが、新宿は知らんが近畿地方では豪雨がほとんど降らず、いつまでも続く今年の群青日和、いいかげんもういらねえ、暑いのもうやめて、と、今年はじめて思いましたね。

例年なら、8月がいつまでも終わらなければいいのに……と星に願っていて、夏が終わるなんて辛い、夏さんと別れたくない、夏さん行かないで、という感じなのですが、どうにもこうにも、今年は夏さんとは上手く行かないみたいで、なんかもうあきまへんわ。

しばらく家の床でヤムチャが死んだ時みたいな格好をしていたところ、これではいかん、と、とりあえず外に出ました。

普段の休日ならもっとガッツがあって、とりあえずビールみたいな感覚でとりあえず梅田に行き、意味もなくグランフロント大阪の屋上階へと昇って無機質なビルを眺めてスマホを弄るなどするのですが、特に用もないのに梅田まで出るのめんどくさい。というか、人が多いところに行くのだるい。

とはいえ、地元でも、駅前の近くは栄えていて、人通りも多く、昼間からカラオケ店の呼び込みなんかも聞こえる。うーん。

喧騒から離れたい。でも遠くに行くのはめんどくさい。5月なんか、完全にその時の思いつきだけで泉佐野のりんくうタウンまで日帰りで飛んでいったものだが、たった数ヶ月前のフットワークの軽さがなくなっている。どうしたものか。

陽射しが照りつける中、できるだけ外には出たくない。かといって、家にいてもなんだか気が滅入ってくる。どこか、できるだけ近場で、寛げそうな場所。あ、そうだ。

温泉に行こう。

まあ、温泉というかスーパー銭湯なのですが、露天風呂にはちゃんと分析表も提示されており、療養温泉を謳っている。地元のベッドタウンの山上に、そのようなガチな温泉が存在することは、以前から知っていた。

駅前から、歩いて行けば30~40分、バスで行けば15分くらいか。

ガッツのある時なら徒歩30分前後の道程くらいなら歩くのですが、今日はおとなしくバスを使うことに。

駅前から5分も走らないうちに、商店街の街並みは閑静な住宅地へと変わり、やがて、それなりに人口の多い我が市にこんなところが存在したのか?というくらい、人の気配がまるでしない山合へと入っていく。

地元の遠足スポットとしてお馴染みの運動公園を抜けると、いよいよ本格的になにもない世界へと突入する。いかにも温泉などがありそうなところである。

地図上では駅前からそんなに離れていないのだが、こんな秘境みたいなところが近所にあったとは。

バスから下りて数分ほど歩くと、温泉は見えてくる。あんまり主張の激しくない、なんとか生活センターみたいなお堅い雰囲気の建物だが、内部は完全に一般的なスーパー銭湯と同じ。

下足箱があり、奥に食事処があり、ラウンジみたいになっているところでは子供が暴れている。

外は昼の3時でも誰もいないのに、この館内は賑やかだ。あんまりうるさいのはちょっとなあ……と思いつつ、2階にある浴場へ。

内湯はごくふつうのスーパー銭湯ですが、かなり上のほうにある露天エリアからは、山々が見えます。柵があってよくは見えないけど、遠くのほうには馴染みのある市街地が。

そして、通常の倍の濃度があるという温泉に浸かってみると、もう二度と出られない。いわゆる不感湯というやつみたいで、人間の体温とそんなに変わらない温度。

銭湯に興味を持ち出してからというものの、40℃未満の湯温なんて甘っちょろいぜてやんでえというエセ江戸っ子マインドが生まれていたのですが、やはり大阪の育ちでは江戸っ子にはなれないのだ、というかぬるま湯でええやん、江戸っ子になる必要あるんかという気分に切り替わる。

正確には大阪と京都の中間点の育ちなので、大阪にも京都にも染まれないんですけどね、わし。

わたしゃどこへ行けばいいのかのう。などとウトウトしているうちに、いや別にここでよくね?という思考に切り替わり、いつしか思考をやめ、ただただ、夕暮れの山合の湯に浸かり、なにもしない時間を漂う。

なにもしない時間。

思えば、自分が最初に銭湯にハマり始めた理由は、外でずーっとボーッとしていても、誰にも何も言われないという解放感ではなかったか。

施設によっては、横になって寝る場所も用意されていて、別に時間制限もないから、よっぽど長時間の独占をしない限りは、スヤスヤと眠りの世界に入ってしまっても文句を言われない。

公園のベンチなんかでも寝転ぶことはできないわけではないが、やはり他人の目が気になるし、中には寝転び禁止のベンチも存在するので、管理人さんに注意されかねない。

ここでは別に良いのだ。堂々と、目を閉じて、あっちの世界へといっちまえる。というわけで、しばらくウトウト。

最近は銭湯に行っても真っ先に気にするのはサウナで、今日は何分の何セットでととのったとかばかり気にしていたが、本来のこういうところの楽しみ方とは、いかに時間を忘れて、自分を解放できるかなのだろう。

サウナがなくても、水風呂がなくても、湯に浸かり、しばらくぼんやりする。それだけで、充分に命の洗濯はできる。

さっぱり生まれ変わって、脱衣場の方まで戻っていくと、……、あれ?ないと思っていたサウナ、入り口の真横にある……?あと、小さいけど横に水風呂も……?

さらなる命の洗濯をすべく、さっそくサウナマットを片手に扉を開けるのであった。さっきまで暑いのイヤとか言っていたくせに。

あ、おかげさまで、夏バテは治りました。疲れたら近所のスーパー銭湯に行こう。スーパーじゃない銭湯の良さもあるんですけどね。それを語れるくらいには復帰してきたので、やはり温泉っていいものですね。

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