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この世界の美しさ『よあけ』ユリー・シュルヴィッツ
この世界で美しい瞬間はいつだろうか。雨上がりに虹がかかるときか、澄んだ空に星が光るときか。こんなとき、生きることへの無条件の讃歌と思ってしまうことがある。
この『よあけ』(ユリー・シュルヴィッツ,福音館書店,1977)は、タイトルの通り、夜が明けるまでを描いた絵本だ。
絵は四隅の余白を大きく残して描かれており、添えられている言葉もとても少ない。しんと静まり返った夜明け前をゆっくり描き出していく。
大人の思春期とE.L.カニグズバーグ『ぼくと〈ジョージ〉』
〝大人〟と〝思春期〟はいわば対義語で、大人の思春期という言葉は矛盾している。
けれど、わたしとわたしのまわりの悩める友が今向き合っているこの困難は、思春期という名前が一番しっくりくる。その現実がある。
仕事もそれなりにできるようになり、経済的にも安定し、社会を知った30歳ごろ。自分はこれでいいのか?本当に豊かなことはなんだったっけ?と迷い出す。迷いなんてどの年齢でも起こるじゃないかという声が聞こえ
つまらない高校生活、昭和への憧れ
高校生のころ、テスト期間なんかで昼に帰れると、わたしは嬉々としてテレビを観ていた。同級生たちがおそらく笑っていいとも!を観ている時間帯に、わたしが観ていたのは小津安二郎の映画。なぜだかそのころ、真っ昼間のBSでひたすら小津安二郎をやっていた。
ただ、どの作品を観たかと聞かれても、作品名は覚えていない。あらすじも覚えていない。というのも、わたしが観ていたのは、昭和の暮らしだったのだ。(偉大な映画監督
アンデルセン『絵のない絵本』
アンデルセン。人魚姫やマッチ売りの少女を代表作にもつ、デンマークの作家である。誰もがアンデルセンの作品のいくつかについてあらすじを知っているだろう。童話作家として、いまも人気が高い。
有名な作品がいくつもあるにも関わらず、わたしが一番好きなのはそれらではなく、『絵のない絵本』。
絵のない絵本って、なぞなぞみたいな不思議なタイトルだ。わたしが手に取ったのも、絵のない絵本ってどういうことなのか、知りた