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#読書の秋2020

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑰

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑰

 目を冷ますと、職場にあるベットで寝ていた。いつ、ここに来たのかも分からなかった。
 職場は真っ暗で時計の針は3を指していた。やっと、ここがどこかを把握する事ができた。

 勤めていた介護事業所はマンションの一室を借りていた。10人くらいの職場においては、わりと広い部屋なのだろう。
 パソコンが5台。コピー機があり、トイレ、小さいキッチンがあり部屋は机で囲まれている。
 そして、奥に仮眠用のベット

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑯

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑯

 自分が今過去に戻りたいと思った事はないし、戻った所で良い大学に行って有名になりたいとも思わない。
 映画では過去に戻ったり未来へといくSF映画が流行っているが、僕には理解できなかった。

 この介護の仕事をして、未来には行きたいがこの人が認知症になる前はどんな人だったのかと気になる事がある。

 昔を知っているのは、その人の友人や家族などだけだからである。
 職業、性格や趣味などはアセスメントを

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑮

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑮

 初任者研修が終わり社長が、
「どうだった?」と聞かれたので
「とても勉強になりました」というと
「良かった。これで、介護士として一歩全身ね」と笑顔で言ってくれた。

 確かに初任者研修に行くだけで、自分の中で”何故”という疑問が頭の中で産まれるようになった。
 この言葉を発するのはなんでなのか?
 トイレが近いのか?お腹が減っているのか?水が面白いのか?

 まるで、赤ちゃんの鳴き声に何かしら意

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑭

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑭

 初任者研修は午前中に終了し、平田さんが僕たちを最終日に、自分のマンションで打ち上げをしないかと、1週間前から声をかけてくれた。

 平田さんは、普段からこういった飲み会などをしていると、研修の休憩時間に話していた。
 僕自身はお酒も飲まないし、タバコも吸わないので飲み会とかはコンビニのバイトで少しいったくらいだった。場所も大衆居酒屋で自分はソフトドリンクを飲みながら空気みたいな存在で、たまに愚痴

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑬

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑬

 初任者研修もいつの間にか最終日を迎えた。
 現場で働きながら通えたおかげで、とても為になった。最初は知らない人ばかりだったが、良い先生のおかげもあり有意義な時間を過ごせた。

 何気なく人と付き合ってきたデジタル化した僕の生活だったが、アナログ的な生活は産まれ変わったみたいに新鮮だった。

 最終日にはテストがあった。難しいかなと思い解いてみたが授業とレポートをこなしていたので合格する事ができた

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑫

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑫

 初任者研修に通いながら、訪問介護(以下ヘルパー)で実践する事は凄く為になった。コンビニという仕事はコンビニの上司に習うだけだが、介護という仕事は、介護を熟知した先生に習うので面白かった。

 勿論、井上さんに聴くとがあったが、自分自身が何が不得意なのかもわからなかった。学校の試験でも何が不得意という分析など自分自身に何が必要という事を考えなかったからかもしれない。

 授業を受けた事で、井上さん

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑪

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑪

 介護の実習でベットメイキングの仕方など、今迄にやった事が無い事を教わった。シーツはシワがないように伸ばす。これは床ずれ(以下、褥瘡(じょくそう)を防ぐ為でもある。
 褥瘡と聴いて、仕事でもお尻に褥瘡が出来ている人がいて、アズノールという薬を塗る事がある。

 その経験もあり、最初は小さな傷がお尻に出来るだけだと思っていたが、写真を見せられてグロテスクな後に少々ひいてしまった。
 重傷の褥瘡の人は

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑩

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑩

 初任者研修当日、僕を含め受講者は7名だった。介護士として現場に居る人は3名で他は介護士ではなく。福祉に携わる人だったり、介護を経営したい人など一人一人目的が違っていた。

 初日は自己紹介が始まり、授業にはいった。
僕は自己紹介では「訪問介護をやっています」くらいしか覚えていない。他にも何かを話していたのは確かだが。
 隣の僕より少し歳上の人では、
「介護施設を経営したい」
 と自己紹介をしてい

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑨

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑨

 利用者さんによっては、オムツ介助やご飯や買い物の援助など様々だったが。
 利用者さんと一緒に住んでいるご家族さんの中には、ビデオやテープレコーダーを設置している所もあり、利用者さんにしっかりとサービスをしているかなど見ているご家族さんもいた。

 これは、高齢者が虐待されているのが、ニュースで流れていたりするからでもあるらしい。防止をする事だろうか?
 
 産まれてきた中で1番、集中して物をこな

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑥

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑥

 年齢は大正14年生まれで、90になるかならないかだった。
 高級住宅なので、内装はとても綺麗だったが、使われていない部屋は散乱していて、昔描いたような絵画が沢山あった。

 こんなに大きな家に一人暮らしなのかと、僕は印象を受けた感じだった。 
 逆に大きな部屋が孤独なのかなと感じる程であった。
 朝の食事を社長が作り、女性に提供した。
 「ありがとう」
 と、言って黙々と女性は食事をしていた。

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑤

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑤

 その日夜に、電話がかかって来た。
 着信を見ると、昼に面接にいった介護の所だった。
「どう、働いてみない?」
「いえ、僕には向いてないと思うんですよね?」
「最初から、向いている人はいないわよ」
「でも…」
「ベテランの人と一緒に最初は行くから大丈夫よ」
「そうですか…」

 半分、僕は上の空で聞いている感じだった。
 やっぱり、僕にはコンビニ店員がいいのだと思った。今から新しい事をするのは、実

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》④

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》④

実家に住んでいると、何も得ないでこの世を去ってしまうと思ったのだろう。
 一個人としては、別に楽しい刺激も欲しくはないし、可愛い女性を見ても付き合いたいとか、一晩を共にしたいなんて思わない。

 草食系と言うよりも、無気力系な男なのだろう。
 就職未経験で大丈夫なのは、清掃員や警備員やマンション管理者、工場の軽作業しかないのだ。他は介護の仕事くらいだった。
 この中でも僕が出来るのは清掃員、警備員

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介護小説 《アリセプト〜失われる記憶》 ③

介護小説 《アリセプト〜失われる記憶》 ③

 自分自身が就職して、バリバリ仕事をこなす星の下で生まれて来なかっただけなのだと心得ているのかもしれない。
 大学も卒業していない。高校の成績もよくなくさらに、コンビニのアルバイトした事がない僕に今後、何が出来るというのだ…。
 そんな事を考えながら、就職を探す。

 普段は使わないパソコンで《就職 都内》で検索すると、沢山出てきて、全く訳の分からない世界に飛び込んだみたいになり、コンピュータより

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