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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》④


実家に住んでいると、何も得ないでこの世を去ってしまうと思ったのだろう。
 一個人としては、別に楽しい刺激も欲しくはないし、可愛い女性を見ても付き合いたいとか、一晩を共にしたいなんて思わない。

 草食系と言うよりも、無気力系な男なのだろう。
 就職未経験で大丈夫なのは、清掃員や警備員やマンション管理者、工場の軽作業しかないのだ。他は介護の仕事くらいだった。
 この中でも僕が出来るのは清掃員、警備員、工場の軽作業が頭に浮かんだ。

 なるべく僕の中ではコミュニケーションを取らないようにしたかった。
 アルバイトでも極力、人との関わりは避けていたプライベートの付き合いもなく、時間がくれば、トラブル等が無い限りすぐに家に帰宅していた。
 とりあえず、エントリーシートを書いて、清掃員等の面接に行った。

 いくつかは、契約社員として合格は得たもののアルバイトと変わらないし、給料もそこまで変わらな変わらず、どれも公務員みたいに年齢を重ねても給料はあがりそうになかった。

 自分の父親は医学部を出ていて、大学病院の教授をしている訳だが、よく「勉強できる奴が金を貰える社会だからな」と、何度も言っていたのを覚えている。
 僕はその事は分かっていながらも、その教えに逆らって生きてきた。
 姉はその教えに順じたのか幸せになった訳だ。まあ、世間一般でいう幸せなのだろう。

 「幸せ」という事を真面目に考えた事がそれまでは無かった。というより、哲学というものが結滞で仕方なかった。
 【存在】とは何かとか、ニーチェの何とか主義とか、本当にどうでもいいと高校の授業中に思っていた。
 知ったところで、自分の行動も生き方も変わらない。

 ただ、アフリカとかに住む難民の人は生きるのが大変だなと、テレビ越しで見ても、いたたまれない気持ちにはなっていた。
 ここ日本では明日生きれるかも分からない人は少ないと思うので、そういった人々から比べたら幸せなのだろう。

 お金が幸せなのか?
可愛い女性と付き合う事が幸せなのか?
趣味に打ち込めるのが幸せ?
そんな事を考えていたら途方にくれるし、どうしよもない。
 全くやる気のない就職だったが、介護職の仕事の面接に行ったら、女社長に是非来てほしいと言われたのだ。

 そんな就職の帰り道、初の正社員のチャンスは到来したものの介護という仕事は、僕の中では、力がいる仕事だし辛そうな仕事なので無理だと思った。3日も続かないと僕の中では感じた。テレビで見ても大変な仕事だと知っていたので…。

介護を本気で変えたいので、色々な人や施設にインタビューをしていきたいので宜しくお願いします。