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「COP28で決まったこと、決まらなかったこと?!!」わかりやすく解説!世界は気候変動にどう立ち向かっているのか?!

こんにちは。
今回は世界環境ネタです。

先日11月30日から12月13日まで、UAEのドバイで
「第28回国連気候変動枠組み条約締結国会議(通称COP28)」
が開催されていたことをご存知でしょうか。

このCOP会議は人類にとって非常に重要な会議です。なぜなら、現在、我々が住む地球は「地球温暖化による大幅な気候変動」に見舞われているからです。
その原因は我々が日々排出する温暖化ガスです。

実際、今年2023年は地球の各地で観測史上最も暑い年となりました。2023年の世界の気温は着実に1850-1900年の平均より1.43度高くなっています
南極の氷の面積は現在、過去最小となっています。

また、ニュースでよく見るように、世界各地で干ばつや熱波、そして逆に豪雨、洪水が猛威をふるっています。特に被害が深刻なのはアフリカや南アジア、太平洋の国々のようです。

さて、この重要なCOP28が12月13日に閉会して、「何が決まって、何が決まらなかったのか」を整理してお伝えします。

COP28に入る前に、私のブログで毎回ご紹介しているCOP26とCOP27の合意内容をおさらいしてみましょう。

<COP26で決まったこと>
1. 最終ゴールである「世界の気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃より抑えること」の再確認
2. 石炭火力発電を段階的に削減する
3. 先進国から途上国への温暖化対策資金支援については年1000億ドルを超えて大きく増やし、2025年まで続ける

<COP27で決まったこと>
1. 温暖化による発展途上国の「損失と損害」に対して、資金支援ファンドを立ち上げることに合意
2. パリ協定で合意した1.5℃目標達成のためには、2030年までにCO2排出量を2010年比で4.5%減らす必要がある。各国はこの削減に向けて、2023年末までに目標を再検討して強化する

このように、パリ協定以降直前のCOP26、COP27で皆が合意できていて、引き続きCOP28共通目標となっていることは以下の2点となります。

「地球の気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃以下に抑えること」(パリ協定)
「2030年までにCO2排出量を2010年比で4.5%削減すること」

今回のCOP28の議論で、それがどのように進展したのでしょうか。代表的なポイントを説明します。

1. 化石燃料からの脱却
まず、COP28では、以下のエポックメイキングな文章が明記されました。
「およそ10年で化石燃料からの脱却を加速する」

この合意成果に対して、欧米のメディアは非常に肯定的な見出しで報じました。
ファイナンシャルタイムズでは「歴史的な合意に到達」
ワシントンポストでは「前例のない合意を締結」などです。

実は、COP26の時に「石炭火力発電の段階的削減」は合意されています。また、それに続くCOP27の時にも欧州諸国などから「石炭などすべての化石燃料の段階的削減」が提案されましたが、サウジアラビアなどの産油国の反対で盛り込まれませんでした。

そんな中、今回、正に産油国が議長国として開かれたCOP28では、この「化石燃料からの脱却」という文言がついに入ったのです。議長国UAEも含めて、石油を含む化石燃料から再生エネへのシフトは、世界の潮流として認めざるを得なかったということかと思います。

ちなみに、COP26の「段階的削減」は英語で「phase down」、それより厳しい表現として「段階的廃止」「phase out」となり、今回はこのどちらの表現になるか注目されましたが、出てきた表現は「脱却」英語で「transition away」でした。

朝日新聞の記事によると、この「脱却」、英語で「transition away」は、「phase down」「phase out」中間くらいの意味ではないかと書かれていました。なるほどですね。産油国議長としては瀬戸際の言葉のせめぎ合いをしていたようです。

ただ「transition away」も「phase out」も、どちらにせよ最終的な方向性については合意できたようなので良かったと思います。このテーマで「決まらなかったこと」、つまり、次回以降への課題は、この脱却の方向性において「いつからどの程度減らすのか」という実行方針および実行計画です。
難しいですね。

2. 再生エネルギーのさらなる拡大
そして、もう一つのポイントである再生エネルギーについては以下のような文言が合意されました。
「再生可能エネルギーを2030年までに現状の3倍に増やし、エネルギー効率の改善率を2倍にする」

これによって、EVに代表される再生エネルギーの普及は加速することと思われます。
これは非常に良い流れですね。

3. 数値目標
また、COP27の時に改めて追従された「2030年までにCO2を4.5%削減」についてはどうなったのでしょうか。
実はすでに実現は難しいと認識されているようです。実際のデータを見てみると、最近は減るどころか増加傾向にあったのです。

2022年の温暖化ガス排出量は前年比1.2%増加2023年の化石燃料由来のCO2排出量は2022年比で1.1%増加しています。さらには、発展途上国のCO2排出量は21世紀に入ってから倍増しています。
世界全体の温暖化ガス排出量は2010年から2021年を比べるとなんと3割も増えているのです。
そして国連試算によると、問題の2030年のCO2排出量は8.8%増える、と予測されています。

パリ協定からCOPを毎年開催して、気候変動への機運は盛り上がってきていますが、まだ温暖化ガス増加傾向には歯止めがかかっていないのが現実のようです。

そのため、今回のCOP28では、新たな目標設定として
1. 2050年までにネットゼロ(温暖化ガス排出実質ゼロ)目標
2. 2035年に2019年比で60%の温暖化ガスを減らす必要性を明記
について合意しました。

また、日本の環境省から数値目標に対して、実際の排出量推計の技術の国際標準化についての表明がありました。具体的には衛星を使った排出量推計のようです。

4. 途上国など気候変動の影響による被害への対応
今回、COP27でも合意された途上国への資金支援も行う方向で話し合われました。COP27にて合意された途上国向けの基金については、COP28でも引き続き「基金の基本文書を含む制度の大枠についての決定」が採択されました。

しかしながら、具体的な基金額やルールなどは決まりませんでした。
英国やドイツなど、いくつかの国では具体的な拠出金額を表明していました。次回COP29以降で詰めていくとのことです。

それ以外に「適応」に関する世界目標の枠組みについて合意できたとのことです。この聞きなれない「適応」という言葉は、「気候変動の影響による被害に備える仕組み」のことだそうです。

例えば、2030年までに水の供給体制強化や健康対策実施などが盛り込まれています。また、全ての締約国に脆弱性の評価や計画作成、モニタリングが今後求められることとなりました。

「適応」で話し合われた内容には、「気候変動の影響で住む土地を追われた難民」の問題も含まれました。例えば、アフリカなどを中心に、30年後には2億人の気候難民が生まれるのではと予測されています。2021年時点で、すでにこの気候難民はアフリカを中心に世界で2230万人以上いると言われています。

また、太平洋に浮かぶツバルは温暖化による海水面の上昇で沈没の危機にありますが、2023年11月にオーストラリアと移住協定を結んだそうです。

更には「気候変動の影響で紛争の発生増加」も議論されたようです。実際に、2023年にはアフリカのガボン、ニジェールでのクーデター発生、マリ、ブルキナファソ、ギニアでも紛争が相次ぎました。こうした紛争は異常気象で起こる食料不安や飢餓が一因であると分析されています。

米スタンフォード大学の研究では、世界の気温が産業革命以前から4℃上がった場合、紛争が起きる確率は現在の5倍にあたる26%に跳ね上がると発表しています。

最後に、今回合意された文書、UAEコンセンサスの要約を整理しておきます。

1. グローバル・ストックテイク(GST)
パリ協定の実施状況を検討し、長期目標の達成に向けた全体としての進捗評価の仕組みであるグローバル・ストックテイクについて、初めての決定が採択されました。

2. ロス&ダメージに対応するための基金を含む新たな資金措置の大枠の決定
COP27で設置が決定されたロス&ダメージに対応するための新たな資金措置(基金)に関して、基金の基本文書を含む制度の大枠について決定が採択されました。

3. ロス&ダメージ
ロス&ダメージに関する技術支援を促進するサンティアゴネットワーク(SN)について、事務局ホスト機関として国際防災機関(UNDRR)と国連プロジェクトサービス(UNOPS)を選定しました。

4. 緩和
COP27で決定された「緩和作業計画」について、公正なエネルギー移行と交通システムの脱炭素化についての対話の報告や、閣僚級会合に留意しつつ、補助機関会合で進捗評価を行うことが決定されました。

5. 適応
パリ協定に定められている適応に関する世界全体の目標(GGA)に関する議論の成果として、GGAの達成に向けたフレームワークが採択されました。

6. 気候資金
長期気候資金および2025年以降の新規気候資金合同数値目標については、COP29の決定に向けて対話継続、オブザーバー参加の場を設定することが決定されました。

7. 公正な移行
COP27で決定された「公正な移行に関する作業計画」について、作業を2026年まで継続し、その時点で効果や効率性について評価を行い、継続検討することが決定されました。

8. 市場メカニズム、クリーン開発メカニズム
市場メカニズム、クリーン開発メカニズムについては詳細事項について、見解の一致に至らず、引き続き議論されることとなりました。

9. その他
技術開発、移転、キャパシティビルディング、農業、研究と組織的観測、対応措置の実施の影響、気候変動とジェンダー、気候エンパワーメント行動など、幅広い交渉議題についても議論いたしました。
次回COP29をアゼルバイジャンで、次々回のCOP30をブラジルで開催することが決定されました。

以上のように、COP28は今回、日本では大きくは話題になりませんでしたが、「化石燃料の脱却」「再生エネの3倍増し」など、画期的な合意がされていたことがわかりました。

人類は果たして温暖化を止めることは難しくともなんとか遅らせることができるのか、今後のCOPの成り行きに期待したいと思います。

それでは。

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